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みがちゃんが笑わなくなった理由

なぜあなたの描く女の子は無表情なのですか、と尋ねられたことがあります。この記事では私の描く少女が笑わなくなった理由について説明します。

笑わない少女『みが』

みがらいあプロジェクトの主要な人物である『みが』は基本的に無表情です。いつもこんな顔をしています。

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みがの目は真っ黒に塗りつぶされ、まるで虚無を見つめるかのような表情をしています。ここまで無表情なのは珍しいかもしれませんね。

少女が笑わない3つの理由

これほど笑わないので『この少女には何か壮絶な過去があるのでは』と考えるかもしれませんが、実はそうではありません。もっと単純な理由です。少女が笑わない理由は、次の3つです。

  • 笑わせる必要がなくなったから
  • 笑わない方が日常的だから
  • 笑わない性格だから

1つずつ説明しますね。

笑わせる必要がなくなったから

第一の理由は『笑わせる理由がなくなったから』というものです。今でも、誰かのために描くときは笑顔で描くと思います。

でも、みがらいあは誰に見せるでもない、自分が楽しむための作品として誕生したものです。自分自身にために笑顔のキャラクターを作る必要はありませんでした。

みがらいあのスタンスは変わっていません。たくさんの人に見てもらえるようになりましたが、基本的に自分が描いていて、かつ見ていてリラックスできるイラストとして描いています。

笑わせる理由がなくなったから、みがは笑わないのです。

笑わない方が日常的だから

私は雑誌やドラマなどで見る方たちの笑顔が少しだけ苦手です。どうしても不自然に感じてしまうからです。もしかしたら銀行の窓口やレジ打ちの店員さんが、忙しくて大変なはずなのに、いつもニコニコとしているのを不自然に思ったことがあるかもしれません。

実はこれは科学的に当然のことです。脳科学者の池谷裕二先生は著書の中で、『ヒトが作り笑いできるのは、表情を作る筋肉を意図的に動かすことができるからです』また『目の周りの筋肉は意図的に制御できません』と述べています。表情は意図的に動かせるので頑張れば最高の笑顔にできますが、目だけは意図的に動かせないので『目が笑っていない』という状況になってしまうのです。

私たちは日常でどれほどの時間、笑顔でいるでしょうか。いつも笑顔でいられれば最高なのですが、現実にはほとんどの時間を笑わないでいることでしょう。

笑わない少女絵を描くイラストレーターの宇野亞喜良先生のインタビュー記事ではもっと強い言葉で表現しています。すばらしい記事なのでぜひご一読ください。一部を引用させていただきます。「笑っている少女像を描かないのは何故でしょう?」というインタビュアーの質問に対して先生はこう答えました。

「“笑っている女の子”という形が、僕はどうも好きになれないからです。例えば、雑誌やブックマークの表紙を飾る女性というのは、店頭にいる客を見据えた上で“あなたに私の微笑みをお見せします”というような、不自然な笑顔に見えてしまう。」

(引用)

「もちろん街中で少女に微笑まれたら、僕だって嬉しいですけれど、それすらも“なぜ笑っているのだろう”と一種の気味の悪さを感じてしまうんですよね。誰しもこの世の中に対して、多少なりとも不信感や疑問を抱いているはずなのに……。まるでそんなものが存在しないかのように、にっこり微笑む姿が、僕の目には不気味に映ってしまうようです。」

(引用)

そしてこう続けました。

「少女がこの世の中に対して抱くかすかな批評性とか、そういうリアルなものを描くほうが僕にはしっくりくる。“あなたに話しても、私のこと分かってくれないでしょう”という眼差しで見つめる少女とかね。そこでにっこりと笑ってしまうと僕の描きたい少女像とは異なるものになるのだと思います。理屈で言うとそんなところでしょうか。」

(引用)

私は宇野先生ほど強い意見を述べることはできませんが、概ね似たような考えを持っています。眠たい目、退屈な目、ぼんやりとした目。そういった目の方が、より現実味を感じるのではないでしょうか。

もちろん私も笑顔は大好きです。それが自然に溢れた微笑みならば、本当に素敵なものだと思います。そういう世界になったら、なんと素晴らしいことでしょう。

考えをまとめるとこうなります。

笑わない方が日常的だと思うから、みがは笑わないのです。

笑わない性格だから

みがは笑わない性格だから笑わない。これが一番単純でわかりやすい理由ですね。

日本のオタクカルチャーで『ツンデレ』というものがとても流行しました。その派生形に『クーデレ』というものがあります。ネットの情報によればクーデレは『クールデレデレ』の略だそうです。

クーデレは基本的にクールなキャラクターなのですが、デレる(好意を表出するという意味)と好意がダダ漏れになり、そのギャップに萌える(愛着を感じるという意味)というわけです。クーデレは毒舌だったりジト目だったりすることがあります。ジト目とは、「じと〜」というオノマトペに由来すると考えられる、負の感情を表すものです。

みがの原型になったキャラクターは『鋼殻のレギオス』というライトノベル作品の『フェリ・ロス』を参考にしています。Wikipediaの説明を引用するとフェリは『無口で表情の変化に乏しく感情表現が苦手』な少女です。

フェリがクーデレか否かは私には判断しかねますが、クーデレ的な要素が含まれているとは思います。そしてそのクーデレ的な要素を含めたフェリの特徴の一部が、みがの原型に組み込まれています。ちなみに「です・ます」口調もフェリ由来です。

余談ですが、らいあの口調は、阿部共実先生の漫画『月曜日の友達』に登場する火木香(ひき・かおり)の影響を強く受けています。

そういった性格から『美少女』や『デレ』といった要素を削ぎ落として、ファッションなどの『一般的な可愛らしいアクセント』をなくして残ったのが、みがの原型となったキャラクターです。

他にもみがの原型に取り込んだ既存のキャラクターはいますが、長くなってしまいそうなので、この記事では割愛させていただきます。

最終的にみがは、無表情がお似合いの『笑わない性格』という設定になりました。服装に無頓着で掴み所のない、無表情がぴったりのキャラクターです。

笑わない性格だから、みがは笑わないのです。

いつかは笑顔になるのだろうか

少女が笑わなくなった3つの理由はいかがだったでしょうか。意外だったでしょうか。予想通りだったでしょうか。拍子抜けだったでしょうか。

『辛い過去があって少女は笑えなくなった』というようなドラマはありませんでした。『笑わなくてもいいんだよ』というメッセージ性もありませんでした。

そんな笑わない少女もいつかは笑顔になる日が来るのでしょうか。それは私にもわかりません。これからも笑わない少女『みが』を見守ってくださると嬉しいです。

あれこれと少女が笑わなくなった理由を書きましたが、これはあくまで裏話というものです。わからなくても何も問題ありません。経緯はどうあれ、みがは無表情で笑わない女の子であり、それだけで十分です。