絵描きがVTuberになった結果
絵描きの中にはVTuberになる方が少なくありません。VTuberとして活躍しているアーティストを見ていると自分もなってみたいと思う方もいるでしょう。実際にVTuberになった経験を踏まえて、この記事で絵描きがVTuberになるとはどういうことなのか、記したいと思います。
VTuberになる、ということは曖昧
VTuberになるということはすごく曖昧です。どこからがVTuberと言えるのか、いつからVTuberを名乗れるのか、そういった決まりはないからです。いわゆる初配信というものを経てそうなるのか、アバターが出来たらそう言えるのか、自己紹介のプロフィールに書いたらそうなるのか、誰も決めてくれません。
つまりVTuberは自分で名乗るものです。名乗った時点でVTuberです。私の場合はLive2Dで作った自分のアバターを動かしつつ、ゲーム実況ができる環境が整った時点でVTuberになったとツイートしました。
あくまで私の場合ですが、VTuberになってもその実感はありません。絵を描き始めた人に自分が絵描きだという実感がないのと同じです。実感もないままVTuberを名乗り、活動を続けるうちに、いつのまにかすっかりVTuberになっている、そういうものなのでしょう。
VTuber活動は特別なものではない
VTuberはまだ新しい分野でVTuberになること自体に何か特別感を抱いているかもしれませんが、VTuberとして活動すること自体は特別なものではないです。
例えるなら、絵描きの主な武器はペンですが、それにトークが加わるようなイメージでしょうか。たぶん絵描きの皆さんは一人で絵を描く時期があり、SNSなどを始めて活動を広げました。
SNSを始めることは大きな変化ですが、それ自体は特別なものではないのと同じように、VTuberを始めることもやはり特別なものではないです。そういう意味ではVTuberになるとは管理するアカウントが一つ増えただけとも言えるかもしれません。
Live2Dを用意することは難所ではない
VTuberになりたい方が一番の難所に思えるのが、自分のアバターをLive2Dなどで用意することかもしれません。しかし、VTuberとして活動するための準備を総合してみると、絵描きにとってLive2Dを用意することはそれほど大変なことではありません。
それはLive2Dの製作は楽だということではありません。Live2Dを用意する以上に大変なことが他にあるということです。私の場合、Live2Dの素材を作るのに50時間ほどかかり、それを動かせるようになるまでさらに数日かかりました。
それでも絵描きはアバターを作る点で有利ですし、ソフトもよく出来ているので、きっちりレイヤー分けさえできていれば、ある程度動くモデルを比較的短時間で作ることができます。
0から配信環境を構築すると費用がやばい
もし今まで声を出して配信したことがなくて、そして今現在それができる環境にないとしたら、配信環境を構築しようとすると相当な費用と労力がかかることを覚悟してください。
例えばあまり大きな音を出せないアパートに住んでいながら賑やかな配信をしたい場合は、まずしっかりとした防音設備を用意する必要があります。もし配信のためのパソコンを持っていなければ、それを用意しなければなりません。お金がどんどん出て行きます。
どのくらい費用がかかるかは、それぞれの状況に応じて変わるので普遍的な数字は出せません。しかし、少なくともパソコンを1台を買うような費用では済まないです。私は少し泣きそうです。
絵描きはVTuberとして多少有利
正直に言うと絵描きはSNSでフォロワーを獲得したり拡散されたりする点で、すでに有利な立場にいます。イラストは他のメディアに比べても見てもらいやすい媒体なのです。
VTuberの活動、つまり動画や配信はイラストに比べると見てもらうまでのハードルが高いです。一見華やかに見える配信活動は、普段のイラスト投稿する以上に地道にファンを増やしていかなければいけません。
それでも、絵描きであることは有利になり得ます。VTuberの個人勢はファンの獲得に大変苦労します。それでも絵描きは自分のイラストを使ってPRすることができます。はっきり言いますが、新曲を発表するより、一枚のイラストを投稿する方が見てもらいやすいです。
絵描きがVTuberになるのは一つの戦略
絵描きはそもそも見てもらいやすいイラストを描けるという点、そしてVTuberになるのに相当な費用や労力があることを踏まえると、何の理由もなくVTuberになってしまうのはデメリットの方が大きくなってしまいます。
VTuberになることに戦略的に特別なものを見出しているのでない限り、VTuberになる必要はないとも言えるでしょう。しかし、本当にただ純粋に配信活動が好きだったり、VTuberが大好きでデビューしたくてした場合は例外です。
この記事の初めの方にVTuberになるのは管理するアカウントが増えるようなものと書きましたが、戦略という点でもそれに似ています。Twitterやインスタグラム、Discord、個人のウェブサイトは全ての絵描きが持っている訳ではありませんが、持っていることに何らかの理由を見いだす人は少なくありません。
VTuber活動もそれと同じです。例えばTwitterはやっていて全てが楽しいわけでも、負担が全然ないわけでもありませんが、多くの絵描きはTwitterに可能性を見出しています。そして、絵描きはVTuberとして活動することに前例のない可能性を見出している、そう言えるのかもしれません。
リスクも費用も考慮に入れた上でのチャレンジなのです。
絵描きが配信すると経験する圧倒的トーク力不足
VTuberでも他の配信者でもいいので、比較的有名な方の配信を開いてみてください。当たり前ですが、配信者は何かしらを喋っています。当たり前ですよね、配信者なのですから。しかし、ごく普通の絵描きにはそれが難しいのです。
意識して頑張ってトークしてもなお、まだ一般的な配信者のトーク量の半分にも満たないです。話と話の合間が不自然に開いてしまうのです。この点は私自身が本当に痛感しています。
それを改善するには訓練と準備がどうしても必要です。全く準備しないとトークテーマが枯渇するのはほとんどの配信者が経験することです。絵描きは話すのが苦手な人が少なくありませんから、より多くの準備が必要になることでしょう。それをどのように実行するかは、まだ模索中です。
ボイチェンにするも地声でいくも覚悟
配信者の中には声質を変えることができるボイスチェンジャーを使っている方が少なくありません。もしかするとボイチェンで活動するか、地声でいくか迷っている方がいるかもしれません。
私がボイチェンを触ってみた感触では、次の2点に「はい」と言える方はボイチェンを使うのが良いかもしれません。
・雑音の少ない環境で配信できる(ボイチェンは雑音が入ると音が劣化する) ・ボイチェンで活動したい、活動し続ける続ける意思がある
私は結果的に地声での活動を選びましたが、私が地声であることに対して不自然に感じるとのコメントは今のところありません。ボイチェンでも地声でも、聞く人はそれほど気にしないように感じます。
率直に言えばボイチェンの音声も地声も苦手な方は一定数おり、そして当然平気な方もいます。結論は、人の反応はほとんど気にしなくていいということです。必要なのはただ、地声でやっていく、あるいはボイチェンでやっていく覚悟だけです。
聞き取りやすい話し方をする
配信をするようになって気づきやすくなったのがノイズと聞き取りやすさです。マイクは何も対策しないと声だけでなく周りの雑音や息などのノイズを拾ってしまいます。ノイズは聞き取りの妨げになるので、できるだけ抑える工夫が必要です。
また話し方も聞き取りやすいものにするよう気付かされます。私を含め絵描きの多くはどちらかというと寡黙で、ハキハキと喋る習慣がありません。そのためもごもごとした聞き取りにくい配信になってしまいがちです。
これを改善するにはとにかく練習するしかありません。本格的な発声練習までをする必要はありませんが、正確な発音、流暢さ、滑舌、抑揚といった聞き取りやすい話し方の基本的な要素を繰り返し練習することはとても大切です。身に沁みています。
こんな人はVTuberになろう or ならない方がいい
どんな人はVTuberになった方が良いでしょうか。次の3つの条件を満たす人はVTuberをやってみると良いと思います。きっと良い経験になるでしょう。
・配信の経験がある ・配信できる環境が既にある ・配信する戦略的な意図を持っている
もし条件を満たしていない場合は、いきなりVTuberになることはおすすめしません。理由はVTuberになることは金銭的、精神的負担が大きいからです。
最初は配信をするかは関係なしにLive2Dのアバターを作ってみるとか、声なしのお絵描き配信をしてみるとか、歌の練習のために簡単な録音機材を買ってみるなど、簡単なところから始めてみることをおすすめします。
お絵描き雑談配信は難易度が高い
人は集中すると無言になります。絵描きが絵を描いているときは特にそうなります。ペン入れなど集中力を要するときは喋ることはおろか何かを聞くことも難しくなるでしょう。
生粋の絵描きであればあるほどお絵描き雑談配信は難しいです。とにかく集中してしまって、話が途切れてしまうからです。私も喋るように意識はしていますが、やはり避けられません。配信歴が長い方でも、お絵描きしながらの雑談は難しいようなので、やはり難易度が高いのでしょう。
個人的な感想ですが、無理して喋るより無言のままの方が良いと思います。独り言は配信には向かないように感じるので、最低限、何らかの話題に沿ってトークをするようにします。可能ならば、二人以上でポツポツと会話しながら描くのが良いでしょう。
VTuberになるとマネジメントの大切さが身に沁みる
よく絵描きに対して自己PRや戦略やマネジメントの重要性を説かれることがあります。とはいえ普通に絵描きをやっていてそういったことを意識することは少ないでしょう。それが本当に大切なのか自覚することも稀かもしれません。
それがVTuberになってしまうと半ば強制的にセルフマネジメントの大切さに気付かされます。どういうことかというと、VTuberという漠然とした存在が活動していくのに、活動の指針や方向性といったものがどうしても必要になってくるからです。
また絵描きは先人がたくさんいますが、それと比べるとVTuberはまだまだ歴史の浅いジャンルです。VTuberの皆が模索しています。多くの場面で未知の状況に直面します。未開の地をコンパスを頼りに開拓していくように、VTuberには自分自身をマネジメントする必要をひしひしと感じます。
配信を見返すと反省しか見つからない
セルフマネジメントの一環として、配信を見返してみることがあります。これは絵描きのころはあまり意識しなかったことです。すでに描き終えたイラストのことよりも次のイラストのことを考えるわけです。
絵描きとしてはそれで良かったのですが、VTuberになると見返さないわけにもいかなくなってきます。そうしないと自分がどんな配信をしているのかわからないままになってしまうからです。
当然のように、配信を見返すと反省点が山のように出てきます。いわば配信という新しいジャンルにおいては赤ちゃんなので、ひたすら失敗を繰り返します。それを見返すのは恥ずかしく、気が進まないことも多々あります。
とはいえ、すぐに閉じてしまうとしても、たとえ数分でも数秒でも、見返せばと改善点が見つかるので、成長の余地を感じることができます。これを頑張りがいがある、と考えられる人は成長する人だと思います。
機材やアプリのトラブルは数え切れないほど遭遇する
私はパソコン歴も長く、音楽をやってきたのでマイクなどの機材にも多少は慣れているつもりでした。しかし、それでも多くの配信トラブルに遭遇しました。初歩的なミスが原因だったこともあれば、機材の仕様で仕方がないこともあります。
同様にミスも当然のように連発します。配信していると、いつもは絶対にしないような簡単なところで躓くことすらあります。よく配信者が「配信外ではうまくできていた」と言っているのは、あながち嘘ではないと思います。
機材に詳しい人も疎い人も、VTuberとして配信する点では同じスタートラインに立っています。慢心はよくないと思い知りました。また最初から万全の状態でスタートするのは不可能です。小さなミスを重ねながら少しずつうまくなっていきましょう。
再生数や登録者数を気にする以前の問題
VTuberになることの不安の中に、再生されるだろうかとか、登録者は増えるだろうかといったものがあるかもしれません。しかし、実際になってみて直面するのはそれ以前の問題です。
まず配信そのものにこぎつけるのが大変であり、その配信を無事にやり遂げることがまた大変です。配信をするにしても、面白いものにしようと思ったら準備に手間がかかります。
もし本当にVTuberになりたいとしたら、そのときに感じる不安は実際には起こらないことの方が多いと考えたほうが良いかもしれません。悩むだけ時間の無駄です。
ゲーム実況は結局マイクラ・テトリスがやりやすい
VTuberのゲーム実況を見ているとなぜかみんな似たような作品をプレイしているように感じたことはありませんか。日本ではマイクラやApexや任天堂作品などです。その理由はVTuberになってみてはっきりわかりました。
第一に配信の許諾が関係しています。基本的にゲームは配信が禁じられています。そんななかで例外的なのが任天堂作品です。また海外のゲームも配信に対して寛容である場合が少なくありません。
VTuberはもちろん許諾に則って配信します。どの作品が配信できるかチェックする必要があり、調べていくうちに自ずとみんな似通った作品をプレイすることになってしまうというわけです。
第二に配信者に人気の作品が基本的に長く遊べるゲームだということです。マイクラやテトリスは世界中で愛されているゲームですし、Apexやフォールガイズのように練習すれば誰にでも勝てるチャンスがあるバトロワも長く遊べます。
ゲームを配信のたびに購入していたのでは資金が底を尽きてしまいます。しかもそれが許諾の関係をクリアしている必要があります。そうなるとどうしても、結局は他の配信者と似たようなゲームになってしまうわけです。
配信のビッグスリーは歌・雑談・ゲーム実況
VTuberになるとして、どんな配信をするのか迷っている方がいるかもしれません。現在の配信は基本的の歌枠、雑談配信、ゲーム実況の3つで成り立っています。絵描きはそれにお絵描き配信を加えることができます。これを週に1つでもやれば立派な配信者です。
有名な配信者にも配信内容の得手不得手があります。まして私たちは絵描きなのですから、歌や雑談やゲーム実況が苦手でもなんら不思議ではありません。お絵描き配信ができる時点で、すでにアドバンテージを持っているのです。それを活かしましょう。
サムネイルを毎回作るのは意外と大変
今のところ私はサムネイルを使い回していますが、多くの配信者はサムネイルを毎回作っています。これは見過ごされがちですがサムネイルを作るのは意外と大変です。
絵描きはイラストを描くことには慣れているとは言え、サムネイル作りは勝手が違います。イラストと同程度の完成度が求められているわけでもありません。目を引く、わかりやすい、ピンポイントな画像が必要なのです。
さらに絵描きなのでサムネイルに使用するイラストも自作しようと考えてしまうかもしれません。そうするとさらに時間がかかります。創作と配信の頻度を保ちつつ、サムネイルも作るには相応の慣れが必要になってくるのでしょう。
機材沼にご注意を
配信機材はお手頃なものからとんでもなく高額なものまで多岐にわたります。私ははっきりと言いますがすべてにおいて最高の機材はありません。
配信用のパソコンをモンスタースペックにする必要もなければ、機材をプロ用の機材にする必要もありません。むしろ配信初心者に適しているのは、電力をそんなに使わない平凡なパソコンと、場所を取らない小型の機材です。
配信に慣れていくにつれて機材にも詳しくなってくると思いますし、良いものにグレードアップしていきたいと思うのも当然です。しかし、機材沼に終わりはないので、金銭的に破滅してしまわないように、十分ご注意ください。
VTuber活動を続けることを迷うことがある
これまで描いてきた通りVTuber活動にはそれなりの苦労と費用がかけられています。それが自分の本当にやりたいこととの関係が曖昧に感じてしまう時、ふとVtuber活動をしている自分に疑問に思ってしまう瞬間があります。
VTuberをやめたいとか、つらいとか、そういった感情ではなく、絵に専念したほうがいいのではないかとか、時間の無駄になっていないだろうかといったことに対する漠然とした不安です。
たぶんこういった感情は今後も続くと思いますし、多くのVTuberたちも同じように感じることがあるのではないかと思います。
類は友を呼ぶ。VtuberはVtuberを呼ぶ
VTuberのアバターを使って活動していると、同じようにアバターを使っているアーティストとの交流が多くなったように感じます。
VTuberは今話題になっているとはいえ、総合的な人口は他の分野と比べるとまだまだ少ないです。仲間の少ない界隈を存続させるには力を合わせるしかありません。
VTuberは基本的に孤独なのだと思います。
自分のアバターを作って動かすのは楽しい
VTuber活動のことになると、まだ始めたばかりということもあり、大変なことがたくさん思い浮かんでしまいます。
とはいえ、VTuberになるかどうかはともかく、自分のアバターを作って動かしてみるのはとても楽しいのでおすすめします。自分のオリジナルキャラクターが動くのを見てきっと感動することでしょう。
こういったいわば単純な原動力は大切にしていきたいですね。
まとめ
この記事ではVTuberになって日が浅い私個人の感想を記事にしました。
VTuber活動は思ったよりも大変で、費用も時間も労力もかかっています。それでも前々から言っていた『VTuberになる』という目標を達成できたことを嬉しく思っています。また、新しい分野にチャレンジできたおかげで、改善点や今後の課題がたくさん見つかり、やりがいを感じています。
絵描きがVTuberとしてうまくやっていく方法や秘訣はこれから模索していくことになると思います。皆さんの応援が力になっています。
それでは良い創作を。