もやし革命
もやしを無制限で作れる装置を作った。
製造から管理・再利用まですべてを行ってくれる装置だ。その一部は丁寧に育てられ、また種を得る。動力源は超効率光発電を元にしている。
これがあれば世界から貧困を根絶できる。
僕は期待で胸がいっぱいだった。この装置を発表したのはもう半年前だ。そろそろなにかが生じていても不思議ではない。
「発明の成果はいかがだったでしょうか!」
「それがなぁ」
所長が口ごもる。
「使用者曰く、あまりに生産されすぎて、もやしは廃棄しているそうなのだ」
「なんと!」
聞いたことはある。あまりに豊作だった年の多くの植物は廃棄されると。まさかもやしがそうなってしまうとは。
「それでは、もやしは0円で構いません。それを必要な人々に配ってもらいましょう」
「1円の特にもならないものに、市場が動くと思うかね」
「うぐ」
経済とはそういうものかもしれない。やはりダメなのか。僕はかぶりを振り、別の提案をする。
「では、食料の貧しい国に譲渡しましょう」
「それはもうすでにしたのだ」
「さすが所長。結果はいかがでしたか」
「それがだね、聞いてくれたまえ。彼らは、無制限にもやしを作れる装置をお金儲けに使い出したのだ。我々にとってもやしは高級品ではないが、貧しい人々にとっては貴重なものだからな。もやしに法外な値段をつけ、大金をを集めているらしい。もちろん、貧しい人などそっちのけさ」
僕は嘆息しながらも、なぜ貧困がなくならないのかわかった気がした。人が貧しさを作っているのだ。