イラストを描こう

イラストを描こう #

イラストが上達する人の特徴 #

どうしたらイラストが上達するのでしょうか。イラストが上達する人にはどんな特徴が見られますか。この記事ではそれらの点について考察します。

上達を模索し続ける

「どうしたらイラストが上手に描けますか」と尋ねても、「むしろ私が知りたい」と答える絵描きは少なくありません。そのように答えるのには理由があります。

それは、絵描きは常に上手に描ける方法を模索しているからです。

どの分野でも言えるように、イラストの世界にも上には上がいます。とても上手に見える絵描きでさえ、その絵描きからすれば自分はまだまだ拙く、さらに上手な絵描きを見上げているのです。

そして、ふと振り返ったときに、自分はいつのまにか絵が以前より上手になっていることに気づくことでしょう。

上達を模索し続ける人が上達する人です。

報われない可能性があっても努力をする

どうしたらイラストが上達するかという疑問に対して、一つの現実を述べなければなりません。

必ず報われるイラスト上達法は存在しないということです。それは努力が無駄だとか様々なイラスト技法が間違っているというわけではありません。

未来は予測不能です。予期せぬ事故や災害であらゆる努力が水の泡になってしまうことがあります。報われない可能性をゼロにはできないのです。

そしてここが重要な点です。

報われない可能性があっても、諦めない人、ひたむきに努力できる人こそが上達する人です。

イラストのために他を犠牲にする

才能とは犠牲の上に成り立っています。あり得たかもしれない未来を切り捨てることも含まれます。普通を捨てることも含まれます。

極めて冷静に計算してみましょう。ほとんどの日本人は学校に通います。平日の朝9時から午後5時まで学校で勉強です。部活がある場合はもっと遅いでしょう。それに加えて、塾や宿題や自主学習が必要です。受験生は受験勉強が待っています。毎日くたくたです。

では、いつイラストを練習するのでしょうか。寝る時間を削りますか。そんなことをすれば体を壊してしまいます。極論を言ってしまうと、日本人が考える模範的な生き方をしている人に、イラストを描く時間はないのです。

それでもイラストを描きたいのであれば犠牲が必要になります。部活を辞めたり、志望校のレベルを下げたり、友だち付き合いを減らしたりするのです。

趣味のイラストと部活動はどちらが大切でしょうか。模範的な日本人であれば部活動と答えるでしょう。しかし、はっきりと言います。

それでもイラストを選べる人が上達します。

言い訳せずに実行する

多くの人はアドバイスを聞きますが、それを実行しません。実際に行動するのは100人に1人とまで言われています。継続できるのはさらに100人に1人くらいでしょう。

なぜ実行しないのでしょうか。実行しない理由は無限に思いつきます。忙しい、疲れている、余裕がない、将来性がない、生産性がない、つまらない、やる気が出ない、まだまだあります。

やらない理由の中には真っ当に思えるものも含まれます。不実な心はありとあらゆる言い訳を考え出します。しかし、本当にイラストを上達したいのであれば、言い訳を全て切り捨てなければなりません。

言い訳をせずに実行する人だけが上達します。

イラストの占める位置を心得ている

どのくらい上達したいでしょうか。素直な気持ちで自問してみましょう。

プロのイラストレーターになりたいのでしょうか。世界一を目指しているのでしょうか。歴史に名を残すくらいでしょうか。それとも友だちや家族に喜ばれるようなイラストを描きたいのでしょうか。余暇を有意義にする趣味として楽しみたいのでしょうか。

同じイラストでも趣味と仕事では全く性質が異なります。趣味は楽しむことが大切であり、仕事では顧客を満足させることが大切です。そして上達するべき内容も異なってきます。

イラストの占める位置を心得ているなら、上達の方向をしっかりと据えることができるようになります。

イラストを描く動機を思い出す

イラストを描く動機をないがしろにしてはいけません。動機は自分を突き動かす燃料になるからです。

なぜイラストを描いているのでしょうか。その根幹にあるのは何でしょうか。もしそれが『周りの人がそうしているから自分も同じようにそうしよう』といった考えであれば、長続きしないかもしれません。動機が他人任せになってしまっているからです。

とはいえ、絵を描く動機は人それぞれです。「そんな動機ではダメだ」とか「こういう動機こそ素晴らしい」などと言うものではありません。『ちやほやされたい』とか『推しが尊いので描くしかない!』とかで良いのです。

動機を知っていることは、動機を失ったときにも力を発揮します。動機がなくても絵を描き続ける自分がいることに気づき、絵を描くことが自分の生き方に組み込まれていることに気づくからです。

ぜひイラストを描く動機をときどき思い出しましょう。

才能に気づく

多くの人は努力する人を好みます。自分も努力の人でありたいと思うことでしょう。しかし、そのために自分にある天賦の才に気づけないことが少なくありません。

絵の才能のある人は『気づいたら描いていた』とか『たくさん描いていたら上手くなった』と言います。でも、普通は気づかないと描けないし、たくさん描くだけでは上達できないのです。

描いてるだけで上達できるのは才能の領域です。

努力だけで培ってきたと思ってきたものが、実は才能のおかげだったと認めるのは苦しいかもしれません。でもそれを自覚するのは大切です。イラストにおける天才の分野は一つではないからです。

キャラクターデザインの天才がいれば、色彩の天才がいます。構図の天才、可愛さや格好よさを描く天才、緻密さの天才と色々です。自分がどの分野の才能があって伸びやすいのか、どの分野が才能がなくて伸びにくいのか知ると、イラストの方向性を決める助けになります。

才能に気づきましょう。それがあってもなくても、自覚していることは強みになります。

科学的な根拠に基づいて練習する

イラストは芸術の分野なので、科学的に語られることは少ないです。

とはいえ、科学を味方にすることは上達の助けになります。科学的根拠のある練習法であれば信頼できるからです。

物事を考えたり覚えたりするのは脳の働きです。脳は考えるだけでなく、筋肉などに指示を送って体を動かす司令塔の役割も果たします。脳は驚異的な器官ですが、それだけでは世界を知覚できませんし、行動をすることもできません。

脳に情報を与えることが必要です。情報は五感すなわち視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚から得られます。脳は得た情報を記憶し整理します。

記憶は草原に例えられます。草原も人がよく通るならばいつしか道になるように、何度も繰り返し取り入れたり、表現したりすると記憶が強化されます。記憶はまたS字フックに例えられます。フックをどんどんつなげていけるように、脳は関連した物事を事実上無限に記憶していくことができます。

イラストが上達するとは、脳や体がイラストを描ける状態にするということです。頭だけでわかっていてもダメですし、体だけが覚えてもダメなのです。よく訓練された演奏家のように、心身ともに成長させることが不可欠です。

科学的な根拠に基づいた練習をすると効率的に上達できます。

小さな成長を喜ぶ

イラストが上達するということは特別なことではありません。

学校の勉強をすれば成績が上がります。それと同じです。ところで勉強はお好きでしょうか。好きであるなら、それはとても素晴らしいことです。とはいえ実際には勉強や宿題はあまり好きではないという人がほとんどでしょう。

同じようにイラストの上達テクニックと呼ばれるものは、はっきり言ってしまうと退屈で単調であまり面白くないものがほとんどです。そして人は興味のないことに対して労力を割くことが苦手です。

練習のその先にあるものを見つめることができるでしょうか。自分の小さな成長に気づき、それに喜ぶことができるでしょうか。喜びは現在に縛られません。過去や未来のことを喜ぶことができます。

イラストはいつでも楽しいわけではありません。それでも喜びはどこかに隠されています。

イラストに喜びを見つけられる人は上達します。

画力を保つ

見逃されがちですが、イラストが上達すると同じくらい大変なのが、現在の画力を保つことです。

使わなければ筋力は衰え、思い出さなければ記憶は薄れていきます。同じようにイラストも描かなければ、画力は下がってしまいます。もちろん体に覚え込ませた技能はそうそう下がりません。それでも画力や感覚を一定に保つには、それなりの労力が必要になります。

イラストが上達するとは、画力を保つ努力をした上で、さらにそれに加えて一歩進むことに他なりません。なるほど、上達が難しいわけです。二重の努力が必要になるのですから。

画力を保つことを習慣にしているなら、上達は用意になります。

ゆっくりと丁寧に描く

字の上手な人に共通していることがあります。また字の下手な人に共通していることがあります。

字の上手な人はゆっくりと丁寧に書きます。字の下手な人はさっと早く書きます。ですから、字を上手に書くために教えられる最初の課題は『ゆっくりと丁寧に書きましょう』ということです。

上手なイラストレーターが線を一本一本丁寧に描いているところを動画サイトなどで見たことがあるかもしれません。なぜこんなに描き直すのだろうと思うくらい、何度も何度も線を描き直します。

上手に早く描けるようになるには『ゆっくりと丁寧に描く』という基礎ができている必要があります。そこから少しずつ速度を上げていくのです。

ゆっくりと丁寧に描くことを心がけましょう。

笑われても気にしない

どんな分野でも共通して直面する壁があります。それはおかしな間違いをして笑われてしまうということです。

間違うことは仕方のないことです。幼い子供は言語を覚えようとする過程で間違った言葉を使います。イラストを勉強中の人も皆、赤ちゃんのようなものです。言い間違いをするかのようにイラストの単純な間違いを何度もします。

間違いがあれば笑われてしまうものです。大抵は侮辱されているわけではなく、単純におかしくて笑ってしまうのです。笑われても気分を害さずにユーモアで切り抜けることができるでしょうか。そこを乗り越えられるかどうかがイラストを上達できるかの転換点です。

笑われても気にしないようにしましょう。

絵の上達する環境に身を置く

何かを毎日続けること自体は難しいことではありません。毎日ご飯を食べること、毎日寝ること、毎日シャワーを浴びることなど、毎日の日課として行っていることがたくさんあります。

日本人であれば意識しなくても、同じ日本人と会話をする機会がたくさんあります。自然と様々な話題について話し、考え、伝え合うことができます。日本人としての常識や振る舞いについて何か特別な努力をしなくても、ある程度までは上達させることができます。

外国に行けば言語を覚えられるのではないかと考える人がいます。でも実際にはそうではありません。何年も現地に住みながらもその言葉を覚えることができないという人は少なくないのです。何故でしょうか。その言語を話す環境に自分を置いていないからです。

同じことがイラストについてもいえます。部屋の壁一面をきれいなイラストで埋め尽くしたとしても、イラストを描くための最高の道具を買い集めても、それはイラストを描く環境に自分を置いているとは言えません。

自分が当然のようにイラストを描くという環境に身を置く必要があります。そのために有効な二つの手段があります。仲間を見つけることと、師匠を見つけることです。

仲間を見つける

仲間を見つけることは、イラストを描くという環境に身を置くことにつながります。

イラストを見せ合える仲間を作る事は重要です。最高の画材を揃えることや技法を覚えることよりも重要です。人間はスポンジのように周りの人の影響を受けるからです。悪い人たちと一緒にいれば自分も悪くなってしまいますが、良い人と一緒にいれば自分もおのずと向上していきます。

本当に良い影響を与えてくれる仲間は、すぐには見つからないものです。焦らないようにしましょう。たくさん探す必要はありません。一人で十分です。仲間を探すという姿勢を貫きましょう。

どうしても仲間が見つからない場合はどうしたらよいでしょうか。心の中で仲間を作ればよいのです。現役の絵描きさんや歴史上の人物でも構いません。心の中でその人は仲間だと考えて、その人の影響を受けるようにするのです。

一緒にイラストを描ける仲間を探しましょう。そして悪い影響を与える人からは離れましょう。

師匠を見つける

仲間を見つけるのと同じくらい大切なのが、イラストの上達を助けてくれる人、師匠を見つけることです。

その人はイラストを見せると、親切にどう改善すると良いのかを指摘してくれる人です。それはイラストを描いたこともないのに批判をズケズケと言う人ではありません。自分の至らないレベルをよく理解を示しつつも、上達を助ける言葉を投げかけてくれる人です。

そのような人を見つけるのは非常に困難だと思います。率直に現実を述べると、そのような恵まれた環境に身をおける人は少ないです。しかし、それが上達の近道であると言うことを念頭に置いておくと良いでしょう。そのチャンスが巡ってきたときに、確実に掴むことができるようにするためです。

とはいえ、師匠を見つけられなくてもがっかりする必要はありません。仲間と同じように心の中に師匠を作ればよいからです。心の師匠は自分で自由に選ぶことができます。好きな画家やイラストレーター、お気に入りの漫画家やアニメーターなどを心の師匠として選んでください。

弟子は師匠のようになるのが目標です。ですから師匠がどのようなことを言ったのか、どのように考えているのか、どのようなイラストを描いているのかを注意深く観察して真似る必要があります。

ぜひ師匠を探しましょう。

イラストを研究する

たくさんのイラストを漫然と見るよりも一枚のイラストをじっくりと研究するほうが自分の糧になります。研究していくとどの技法書にも載っていない技法がふんだんに盛り込まれていることが分かることでしょう。

研究は宝探しに似ています。闇雲に穴を掘ったからといって宝が出てくることはありません。事前に調査する必要があります。そして当たり前の事ですが、宝は掘らなければ出てきません。そしてすぐに見つけられるものでもありません。それでも諦めずに何度も探すのです。研究とはそのようなものです。

研究する過程で得た知識は、表面だけの知識とは異なります。確実に自分の糧になり、イラストの上達に役立ちます。

イラストを研究しましょう。

まとめ

この記事ではイラストが上達するための17項目を考察しました。振り返ってみましょう。

  • 上達を模索し続ける
  • 報われない可能性があっても努力をする
  • イラストのために他を犠牲にする
  • 言い訳せずに実行する
  • イラストの占める位置を心得ている
  • イラストを描く動機を思い出す
  • 才能に気づく
  • 科学的な根拠に基づいて練習する
  • 小さな成長を喜ぶ
  • 画力を保つ
  • ゆっくりと丁寧に描く
  • 笑われても気にしない
  • 絵の上達する環境に身を置く
  • 仲間を見つける
  • 師匠を見つける
  • イラストを研究する

注意すべき点ですが、一度にすべてを実行しようとはしないでください。この中で出来そうなことを1つ選びましょう。

イラストの上達に終わりはありません。プロの絵描きであってもまだまだ目指すべき頂があるのです。その点ではプロもアマチュアも素人も達人もみな全く同じです。

今現在もイラストの練習を頑張っている絵描きたちが世界中に本当にたくさんいます。大切なのは諦めないことです。たとえ挫折してもやめたくなっても行き詰まっても、諦めさえしなければ上達のチャンスはまた巡ってきます。

ぜひイラストを上達させる旅をこれからも続けていきましょう。

イラストを描くときに聴くと良い音楽 #

音楽を聴きながらイラストを描いている絵描きは少なくありません。この記事はイラストを描くときに良い効果が望める音楽について考えます。

音楽と絵画の関係

音楽と絵画が深い関係にあることは古くから考えられていました。例えば西暦前384-322年に生きた古代ギリシャの哲学者アリストテレスが『音楽的調和に関する諸問題』について記し、それが種子となり色彩調和の法則を音楽理論から推測する考え方が育ちました。

イギリスの化学者ジョージ・フィールド(西暦1777ごろ-1854)は「色は赤・黄・青、音楽はド・ミ・ソ-万物は3つの要素とその類似で発展する」と哲学的な色彩調和を論じました。

19世紀後半のフランスで印象派と呼ばれる芸術が発展しました。印象派にはモネやセザンヌやルノワールといった画家がいます。そして印象派は他の芸術分野にも影響を与え、印象主義音楽や印象主義文学が生まれました。印象主義の作曲家にはラヴェルやドビュッシーがいますが、ドビュッシー自身はそれを否定しています。

現代においても音楽と絵は切っても切れない関係にあります。例えば映画の主題歌はその映画を方向付けるものとして力を発揮します。逆に漫画やアニメなどのイラスト表現に合わせて、音楽も変化してきました。

それは絵描きにとっても同じです。音楽は気分を高揚させ、世界をイメージする助けになります。音楽を聴くことによってやる気を向上させられると考える絵描きもいれば、リラックスするのに役立つと考える方もいます。

では、イラストを描くときに聴くと良い音楽はどのようなものでしょうか。調べてみましょう。

一番良いのは音楽を聴かないこと

意外かもしれませんが、イラストを描くときに最も効果があるのは『音楽を聴かないこと』です。

アニメーターのリチャード・ウィリアムズは、著書『アニメーターズサバイバルキット』の最初のレッスンでこう書いています。引用します。

” スイッチオフ!

スイッチオフ! ヘッドフォンを外そう! ラジオを切ろう! CDを止めよう! テープも消そう! そしてドアを閉めよう。 ”

The Atlanticのライターであるオルガ・カーザンは様々な研究を精査した結果『静寂であること以外ではパフォーマンスを損なうことが研究によって示されている』という趣旨のことを記事にしました。

そのことを取り上げたlifehackerは『生産性を最も高めるBGMは…「何も聴かないこと」だった』という記事を掲載しています。

はたらくビビビットのコラム『作業中のBGMはアリ?ナシ?音楽による効果』で、出典が明らかにされていませんが、次のように書きました。引用します。

” よく勉強中にクラシックを流すと集中力が上がるといわれていますが、実際のところ科学的根拠としては、あまり良いことではないとされています。 ”

青木双風さんの個人サイトの『勉強中の音楽は良いのか悪いのか?』という記事では、論文や書籍を調べた上で考察をまとめています。非常によくまとまった記事なので、読んでみることをおすすめします。その記事の中で取り上げられた研究論文や書籍は以下の7つです。

谷口葉月(1998).BGMの効果及び問題点の研究―知的作業時を中心に―(鈴木ゼミ研究紀要,8,61-119) 阿部麻美,新垣紀子(2010).BGMのテンポの違いが作業効率に与える影響(日本認知科学会大会発表論文集,27,3-47) 野村知世(2004).BGM音楽の既知性と音楽的性格が知的作業に及ぼす影響(北海道教育大学卒業論文) 大場義夫,他(1978).騒音とB.G.M.が知的作業に及ぼす影響に関する実験的研究(東京大学教育学部紀要,30,371-380) 大場義夫,他(1979).騒音とB.G.M.が知的作業に及ぼす影響に関する実験的研究(第2報)(東京大学教育学部紀要,31,125-133) 菅千索,岩本陽介(2003).計算課題の遂行に及ぼすBGMの影響について(教育実習総合センター紀要,13,27-36) 谷口高士(1998).音楽と感情(北大路書房) 同記事ではこれらを要約した上で、こう結論しています。引用します。

” これらを読む限りでは,やはり勉強中の音楽は良い結果をもたらさないようです.それぞれの論文の結論をまとめてみると,「知的作業中の音楽は,判断や理解を必要としない低レベルの知的作業(簡単な計算や暗記など)を促進も阻害もしないが,高レベルの知的作業は阻害してしまう.」といった感じのようです. ”

絵描きは単調な作業ばかりではないので『高レベルの知的作業』と言ってよいでしょう。これまでの引用を要約して絵描きに当てはめると、結論は『最も効果があるのは音楽を聴かないこと』となります。

多くの絵描きは作業中に音楽を聴いている

それでも多くの絵描きは作業中に音楽を聴いているのは紛れもない事実です。

統計的なデータではありませんが、私が絵描きさんたちに「作業中に音楽を聴いていますか」と質問したときも、大半の方が「聴いている」と答えました。

あなたも作業中に音楽を聴いておられるかもしれません。また、イラストレーターやアニメーターのインタビュー記事やドキュメンタリー番組などを通して、多くの絵描きが音楽を聴きながら作業していることをご存知かもしれません。

私にとって特に印象的だったのは、アニメ制作のドキュメンタリー番組で、あるアニメーターさんが耳が蒸れないようにタオルを当て、その上からヘッドフォンをして作業をしていたことです。

なぜ絵描きたちは作業中に音楽を聴くのかでしょうか。そのいくつかの理由について見ていきましょう。

やる気を出すため

脳科学者の池谷祐二先生の語ったやる気に関する言葉は『ほぼ日手帳』の定番になっています。引用します。

” 「やりはじめないと、やる気は出ません。 脳の側坐核が活動すると やる気が出るのですが、側坐核は、 何かをやりはじめないと活動しないので。」 ”

やりはじめないとやる気が出ないのであれば、何かをやり始める、つまりやる気を出すための決まったルーチンを作るのは有益です。それを習慣にするのは、『やりはじめる』ことが億劫にならないというメリットがあります。

あるイラストレーターさんはこれと決めた音楽を聴くことで『スイッチ』を入れると表現しました。絵を描くためのやる気を出すということです。これは音楽を聴くことを習慣として組み込む巧みな方法です。

音楽には気分を高揚させたり、逆に落ち着かせたりする作用がありますから、決まった音楽を聴いて『やりはじめる』ことは脳科学的にも精神的にも、良い方法と言えるでしょう。

やる気のスイッチを入れる方法は音楽を聴く他にも色々あります。ラジオ体操をする、顔を洗う、軽く散歩やジョギングをする、掛け声をかけるなどです。すでに実践しておられる方もいることでしょう。

このように音楽は『お絵かきのやる気を発動させるスイッチ』のような役割を担うことができるのです。

モチベーションを維持するため

先日の記事『心が繊細な絵描きの生き残り戦術』でも書きましたが、お絵かきにはどうしても退屈な作業が伴います。

退屈を紛らわすのに音楽は有効です。音楽鑑賞を趣味にしておられる方もいることでしょう。音楽を聴くのは楽しいもので、退屈な作業をいくらか和らげてくれます。

お絵かきに限らず、家での仕事や勉強をするときに音楽を聴くこともあるでしょう。それはどちらかというと『音楽を聴くと捗る』というよりは『退屈を紛らわせる』という理由で聴いていたのではないでしょうか。

また音楽は退屈を和らげるだけでなく、気分を上げる効果もあります。作業前や作業中に気分が下がってしまうこともありますが、音楽を聴くことによって気分を上げ、その結果としてモチベーションが維持されます。

音楽は気分を上げ、モチベーションの維持する効果があります。

騒音に対処するため

騒音が気なるとき、どのように対処していますか。騒音そのものを消せない場合、イヤホンやヘッドフォンを装着して、音楽を聴くことで対処しようとするかもしれません。

お絵かきするときに騒音があるのは集中する妨げになります。それでは騒音と音楽、どちらが煩わしいでしょうか。断然、騒音の方が煩わしいはずです。

いくら証拠を提示されて『音楽を聴かない方が集中力が上がる』と言われても、騒音が気になるなら、音楽を聴いたり耳栓をしたりして対処しなければなりません。

騒音に対処するだけなら、耳栓をしたりイヤーマンをしたり、騒音をかき消せる別の音、例えば扇風機などを使うこともできます。とはいえ、少なくとも現代では、音楽を聴くことの方が日常的です。

音楽を聴くことそれ自体に集中力を上げる力はなくとも、周りの音によって集中を妨げられないために、いわば音の壁を作って、相対的に集中力を上げているのです。

音楽は騒音に対処する一つの盾となっています。

音楽”も”聴きたいため

静かなのは寂しいからという理由でテレビをつけっぱなしにする人は珍しくありません。またテレビも見たいけれど、勉強もしなくてはいけないときには、渋々テレビの音声だけを聞いて勉強するかもしれません。

非常に忙しい現代人は何をするにも時間が足りません。学校や仕事でクタクタになって帰ってきて、それから集中して宿題をし、絵を描き、リラックスして音楽を聴く、そんな時間がどこにあるのでしょうか。

時間は誰でも1日24時間なので、何に時間を使うかを決めなければなりません。でもどれを削ればいいのでしょう。宿題はしなければいけませんし、絵は描きたいですし、音楽を聴く時間も欲しいのです。

そうなると必然的に宿題をしたり絵を描いたりしながら、同時に音楽”も”楽しむという選択肢が浮かんできます。音楽は他の作業と同時に楽しめる不思議なものです。

もちろん、理想を言えば、時間をとって音楽だけをじっくりゆったり聴くことができれば最高でしょう。でも、それができないので、音楽を聞きながら作業をするのです。

時間的な理由で、お絵かきと音楽を楽しむことがあります。

雰囲気を引き出すため

音楽は雰囲気を作り、記憶を呼び起こします。のどかな春の陽気を連想させる曲もあれば、冬の寒さを思わせる曲もあります。

音楽には雰囲気を作る力があるので、映画やアニメやゲームでとても重要な役割を担っています。緊迫感も爽快感も音楽がなければ半減してしまうことでしょう。

そして音楽は記憶を呼び起す力があります。子供の頃に聴いた音楽を聴くと、子供の頃の情景が思い浮かびます。映画音楽を聴けば映画のワンシーンを、ゲーム音楽を聴けばそのシーンを思い出します。

絵描きなどのクリエイターにとって、音楽によって情景を思い浮かべられることには大きな意味があります。

例えばファンタジーの世界は実在しないので、実物の写真資料は存在しません。しかし、ファンタジー音楽を聴くと、そのような情景が思い浮かぶので、創作にとても役立ちます。

絵描きにとって、時宜にかなったイラストを発表するのは基本的な戦略の一つです。しかし、創作する時と発表する時では時間的な差が発生します。

例えば、梅雨の時期に梅雨の絵を描いたとしても、完成するころには梅雨が明けているかもしれません。季節にぴったり合ったイラストを発表したいなら、絵描きは少しだけ先を見越して絵を描く必要があります。

しかし、梅雨の時期に夏のイラストを描くのは、どうにも気分が乗らないものです。それでも描かなければならない場合、どうしたら良いでしょうか。音楽の力が役立ちます。

音楽が雰囲気を作り出してくれるので、絵描きはそれに合わせて描くことができます。雰囲気を作り出す音楽の力は、絵描きにとって助けになります。

雰囲気を引き出すために、音楽は役立ちます。

どのような音楽をいつ聴くか

ここまで絵描きが音楽を聴く理由をいくつか見てきましたが、どれも『気分を高める』ことや『モチベーションを維持するため』ことなど、気持ちのコントロールが主な理由でした。

最初に述べた通り、音楽それ自体に生産性を高めたり、絵の品質を向上させるような効果はないと思われます。しかし、状況に応じて音楽を聴くことは絵描きにとってプラスになり得ることもわかりました。

このように考えると、どのような音楽を聴くかだけでなく、どのような状況で聴くかが重要になってきそうです。その答えはすでに見てきた通り、次のような状況のときです。

・やる気を出したいとき ・モチベーションを維持したいとき ・騒音に対処したいとき ・音楽も楽しみたいとき ・雰囲気を引き出したいとき

それぞれの状況でどのような音楽が適切でしょうか。

状況に応じたおすすめの音楽

音楽の趣味は多岐にわたるので、一概には言えませんが、作業中は集中力を削がない程度の音楽がおすすめです。歌が入っていると歌詞に思考が引っ張られてしまうことがあるので、歌詞の入っていない音楽が良いでしょう。

やる気を出したいときには、気分が高揚する音楽をおすすめします。感受性の豊かな子供時代に聴いた音楽は心に残ります。大人になっても好きなものはそうそう変わりません。子供の頃に大好きだった曲を聴いてみるのはいかがでしょうか。

モチベーションを維持したいときには、気分をリフレッシュできる音楽をおすすめします。休憩を入れ、少し歩くなど体をほぐすのも大切です。もし作業中にずっと音楽を聴いていたのであれば、逆にヘッドフォンを外し、耳を休ませるのがよいかもしれません。

騒音に対処したいときには、騒音を相殺しようと大きな音を出して耳を傷つけないように気を付けましょう。密閉度の高いヘッドフォンやカナル型のイヤホンは周りの音を適度に遮音してくれます。またノイズキャンセリング機能の付いたヘッドフォンやイヤホンを使うこともできます。

音楽も楽しみたいときは、お気に入りの曲と作業用BGMを分けるようにするのはいかがでしょうか。休日などにいざ好きな曲を聴こうとしたとき、不意に作業のことを連想してしまわないようにするためです。作業中には静かめにして、休憩中に好きな音楽を聴くというのもおすすめです。

雰囲気を引き出したいときには、音楽のストリーミングサービスなどを利用して、雰囲気に合った曲をよく探すことをおすすめします。流行りの音楽に限らず、クラシックからエレクトロニカまで分け隔てなく聴いてみるのはいかがでしょうか。

自然音が良い場合もある

小鳥のさえずりや打ち寄せる波の音など、作られた音楽よりも自然の音のほうが集中しやすい場合もあります。自然の中で作業できれば一番良いのかもしれませんが、ほとんどの人はそうはできないでしょう。

自然音を再生してくれるスマートフォンのアプリがいくつかありますので、それを利用するのも一つの手です。また自然音を収集した作品を購入したりストリーミングしたりすることもできます。

自然音はどれも心地よいものですが、雨音がリラックスできると感じる人は少なくないようです。私も個人的に雨音はおすすめです。

また、自然音ではありませんがノイズが良いという方もおられます。ノイズにはホワイトノイズ、ブラウンノイズ、ピンクノイズなどがあります。私のおすすめはブラウンノイズです。

ほかにも、扇風機やエアコンの音、日本庭園で「かぽーん」となる『ししおどし』の音など、音楽ではない人工的な音が良い場合もあります。もし気がまぎれる音を出せるものがあるなら、それを積極的に使ってみましょう。

まとめ

最初に述べた通り、イラストを描くときの最も理想的なBGMは『音楽を聴かないこと』です。そのため音楽を聴かなくても集中できる人は、これからも音楽を聴かずに作業するのがよいでしょう。

とはいえ、これまで考えてきたように、状況によっては音楽を聴いた方が良い場面もあります。気分を高揚させたり、リフレッシュさせたり、騒音を軽減したり、雰囲気を想像させたりしたい場面です。

そのようなとき、自然音や歌のない音楽も考慮に入れつつ、集中力を削がない状況にあった音楽を賢く選ぶなら、モチベーションをコントロールする助けになるはずです。

・ ・ ・ ・ ・ ・

いつの時代も音楽は私たちの心を鼓舞してきました。

絵と音楽は仲の良い友だちのように、互いに良い影響を与え合い、それぞれの文化を発展させてきました。そして、これからも音楽は絵描きにとって良い影響を与えることでしょう。

それでは、私たちも音楽を味方にして、引き続きお絵かきを楽しみましょう!

ではまた!

キャラデザで悩まないための3つの方法 #

多くの技法書はキャラクターデザインを足し算で説明しています。それは間違ったやり方ではありません。しかし、さらにもう一手間加えるだけでデザインは劇的に良くなります。この記事ではその方法について記します。

■ キャラデザが止まらない裏技

キャラデザがなかなか進まない、そんなお悩みはありませんか。どこから手をつけて良いのかわからない。どんな服装を着せればいいのかわからない。そう感じたことは絵描きなら誰でも一度はあると思います。

そんな悩みを一気に解決できる方法があったらいいと思いませんか。実はあります。意外にもすごく身近にあるもの、ウェブでもそれなりの頻度で見かけるものです。それはお題です。

お題を決めることはキャラデザの第一歩です。お題のことをテーマとも言います。何かを作るときは決まってテーマを考えましょうと言われるものです。そうです。お題つまりテーマさえ考えてしまえば、キャラデザは順調に滑り出します。

でも「お題を考えるの苦手なんだよなー」と思ってしまいますか。大丈夫です。何も自分で考える必要はないからです。誰かに決めてもらってもいいですし、辞書で適当に見つけた単語をテーマにしてもいいのです。お題を決めてくれるウェブサービスもあります。

例えばランダム単語ガチャというウェブサイトは、サイト名の通りランダムに日本語の単語を生成してくれるサービスです。私が開いたところ、次のような単語が選出されました。

(ランダム単語ガチャのキャプチャ画像)

ここでは『ガラスのハート』という言葉が選ばれましたね。はい、もう迷う必要はありません。ガラスのハートというお題でキャラデザを始めましょう。いい加減な方法だと思いますか。そうかもしれません。それでも、迷って一歩も踏み出さないよりは、一歩でも二歩でも踏み出したほうが良いと思いませんか。

ちなみにお題をランダムに作ってくれるサービスは他にもたくさんあります。一例をあげますね。

・ランダム単語ガチャ ・ランダムお題 ・ランダムテーマジェネレータ

■ キャラデザは連想ゲーム

お題だけでキャラデザできる人も中にはいるかもしれませんが、多くの方は悩むことでしょう。そこで一般によく見聞きするキャラデザ法が登場します。それは一言で言うと、複数の要素を組み合わせるという方法です。

例:ガラスのハート + 少年 + ハト + ・・・

どうでしょう。心の繊細な少年がハトの翼が舞い降りる中にひっそりとたたずむ姿が想像できるのではないでしょうか。どんどん要素を足していく、これが足し算方式のキャラデザです。

つまずきやすいところは、そもそも足す要素が思い浮かばないということではないでしょうか。何かコツはあるのでしょうか。あります。それは連想ゲームをすることです。最初のお題から枝分かれするように、連なって思い浮かんだものを要素として取り込めばよいのです。

自力で連想する必要はありません。友だちなどと一緒に連想ゲームをしてもよいですし、類語辞典などを使って近い意味合いを持つ言葉を探してもよいのです。単語を連想してくれるウェブサービスを利用する方法も良いでしょう。

例えば、連想類語辞典というウェブサービスでは、一つの単語から連想される単語をたくさん検索してくれます。『ガラス』という単語を入れた場合は『透明感のある』といったものから『繊細』といったものまで列挙されます。

(連想類語辞典のキャプチャ画像)

表示された単語を選んで、さらに連想検索を続けることも可能です。どんどん要素を追加していきましょう。迷う必要はありません。結果から選ぶだけです。

例:ガラスのハート:ガラス + ステルス + 隠蔽 + 猫かぶり + ・・・

これだけで一人のキャラクターができてしまいますね!

ポイントは要素をできるだけ詰め込むことです。なぜでしょうか。買い物で洋服を選ぶときのことを想像してみてください。選ぶのにとても時間がかかるのではないでしょうか。取捨選択は時間とエネルギーを使います。洋服の場合はお金がかかるのでセーブする必要がありますが、キャラデザの場合は無料です。迷うくらいなら、どんどん要素を組み込んでしまいましょう。

〜〜〜 コラム 〜〜〜

ここまで読んで「そもそも要素をイラストにすることができない」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。もっともな意見です。そこが一番難しいと言っても過言ではありません。残念ながら、この記事では、そこを解決する方法を提示することはありません。

自信満々に説明しているのを聞くと、そうなのかと思ってしまうかもしれませんが、実のところ説明不備は多々あります。そうなる原因は時間的な制約だったり、調査不足であったりといろいろです。

私はこうも思います。何か伝えたいことがたくさんあって、大切なことが山ほどあるとしても、本当に伝えるべきことはせいぜい1つか2つであり、筆者がするべきことは、ただ読者を元気づけることなのではないか、と。

勇気を出して一歩踏み出すと、意外にできてしまうものです。そうであれば、私ができるのは、そしてするべきなのは『できる!』と思わせることなのかもしれませんね。という長めの言い訳でした。

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■ キャラデザの根幹だけを残して削る

最後にするべき工程は、余分な要素を削ることです。どのくらい削るべきでしょうか。可能な限り、全力で削ります。『これを削ったら、このキャラじゃなくなる』という段階に至るまで削ります。これが引き算方式のキャラデザ法です。

例えば、とても有名なキャラクターを思い描いてみてください。夢の国のねずみさんでも良いですし、世界一有名な配管工でも、リボンをつけた猫のキャラクターでも構いません。そのキャラクターから、1つの要素を外してみたとしましょう。手袋を外すとか、ひげを取るとか、リボンを外すとかしてみるのです。すると、不思議なことが起こります。そのキャラクターではなくなくなってしまうです。

逆もまた然りです。キャラクターの根幹となるデザインさえ分かれば、そこにどんな要素を足してもキャラクターは維持されます。キャラクターの一番シンプルでミニマルな状態になるまで要素を削りましょう。

■ まとめ

これまでの内容は3つに要約できます。

  1. お題を決める
  2. 要素を足す
  3. 要素を削る

これだけです。この工程をこなすだけでキャラクターをデザインすることができます。そいてその工程をこなすのに、ウェブサービスなどを利用する方法についても記しました。

本当のところを言えば、キャラクターデザインは難しいです。難しいと100回は言ったうえで、一度くらいはこう思ってみるのはいかがでしょうか。『キャラクターデザインなんて楽勝だ』と。

やってみましょう。踏み出してみましょう。当然のように失敗するでしょう。しかし、得るものは確かにあります。大切なのはチャレンジすることです。

さあ、キャラクターデザインをしてみましょう。そのとき、この記事で読んだ3つの秘訣が役に立ったら幸いです。

ではまた!

アイデアを生むための4つの方法 #

この記事ではアイデアを生むための4つの方法について考えます。

アイデアの生まれる3つの場所

およそ1000年前、中国の欧陽脩という人が文章を練るのに最適な場所として、三つの場所を挙げました。

  • 馬に乗っているとき
  • 寝床に入っているとき
  • トイレに行っているとき

これらは馬上、枕上、厠上と呼ばれ、三上として知られています。興味深いことに、机の前や書斎などは含まれていません。もし現代版の三上を作るとしたら次のようなものになるかもしれません。

電車に揺られているとき ベッドに入っているとき シャワーを浴びているとき このようにアイデアを出そうと必死になっているときよりも、ぼーっとしているときの方が良いアイデアが浮かんだりするものです。

これらから得られる教訓はなんでしょうか。アイデアは思いもよらないときに降ってくるので、いつでも記録できるようにしておくべきということです。

メモ帳をどこでも使えるようにしておこう

メモ帳を携帯しておくなら、浮かんだアイデアをすかさず記録することができます。良いアイデアを忘れる前に備忘録に残しておくことができます。

いつメモできるでしょうか。いつでもです。アイデアが思いついたなら、その場でさっとメモしてしまいましょう。アイデアが生まれやすい場所にメモ帳を用意しておくのは良い方法です。例えば、枕元にメモ用紙とペンを用意しておけるかもしれません。

どのようなメモ帳が良いでしょうか。携帯できるものなら、どんなメモ帳でも構いません。ぜひ文具コーナーで使いやすいメモ帳を探してみてください。また、スマホやICレコーダーを活用するのも良い方法です。

大切なのはメモ帳をいつも携帯しておき、アイデアが浮かんだらすかさずメモすることです。

カメラを活用する

メモ帳のほかに、スマホやICレコーダー、カメラといった道具を使って効率よく”メモ”することができます。特にスマホ・カメラは情報をアイデアを手っ取り早く記録しておくのに便利です。

もしかするとある人は、スマホやカメラを使うのに少し抵抗があるかもしれません。何かずるいように感じるからでしょう。でも、人間の記憶力には限りがありますし、使える道具は使っておくに越したことはありません。

そうやって道具を上手に使って情報をストックしておくなら、参考資料になるだけでなく、アイデアの素になって役立てることができるようになります。

アイデアとは良い考えのこと

ここで改めてアイデアという言葉について調べてみましょう。大辞林ではアイディアという言葉について次のように説明されています。

思いつき。着想。 《哲》観念。理念。 この中で一番わかりやすいのは『思いつき』という言葉です。ではさらに、思いつきという単語についても調べてみます。

ふと心に浮かんだこと。 よい考え。よい工夫。着想。 あるものに心を寄せること。ひいきすること。 この中では1か2が該当しそうです。次のように要約できます。

アイデアとはふと心に浮かんだ、あるいは良い考えのことである。

考えを得るには考えるしかない

もし良い考えを求めているなら、よく考えるしかありません。なぜなら、考えとは考えた結果として得るものだからです。考えずに考えを得ることはできません。

考えることと悩むことは違います。悩むとは結論が出せなくて苦しむことであるのに対して、考えるとは論理的に筋道立てて答えを出そうとすることだからです。

では具体的にどうやって考えることができるでしょうか。その前に自分の思考のタイプについて知っておくと便利です。

三つの思考タイプ

テンプル・グランディン氏が著わした『自閉症の脳を読み解く』という本には思考のタイプを三つの分類しています。

  • 画像で考える人
  • 言語・事実で考える人
  • パターンで考える人

この三つのうちどれに当てはまるでしょうか。次の質問に答えてみましょう。

「自分は作品を作るとき、どうやって作り始めるだろうか」

完成形がぼんやりとでも頭の中に浮かぶ人は画像で考える人でしょう。5W1Hを書き出して考えを練る人は言語・事実で考える人でしょう。思いつくまま連想で作り始める人はパターンで考える人でしょう。

思考タイプによって得意な考え方が違うので、誰もが使えるアイデアの思考法を教えることはできません。でも、この分野での研究が進むのを待つ必要はありません。アイデアを生む方法を自分で探すことができます。

アイデアを生み出す42の方法

読書猿氏の著書『アイデア大全』には42通りの発想法が紹介されています。

この本は二部構成になっていて、前半では『0から1へ』つまりアイデアやテーマが0の状態から使える発想法を、後半では『1から複数へ』つまりアイデアやテーマが1つ以上はある状態で用いる発想法について教えています。

全部で11章あり、例えば『第1章 自分に尋ねる』や『第3章 問題を察知する』、『第6章 違う視点で見る』や『第8章 矛盾から考える』といった視点でまとめられています。それらの発想法すべてに熟達するのは無理かもしれませんが、自分に役立つ方法が見つかるかもしれません。

昔から今に至るまで人々はアイデアの発想法について考えてきました。その中で多くの方法が生まれました。すでに確立された発想法を使うのは良いアイデアを生む近道です。

向上心とアイデアの関係

イラストを描くのに良いアイデアが必要だと感じることはよくあります。描く題材がなかなか決まらないときなどは特にそうです。コンテストに応募したいときもそう思うかもしれません。

でも、落書きをするときにはアイデアについてあまり考えません。コンテストのイラストと普段の落書きでは、どこに違いがあるのでしょうか。

コンテストのイラストも落書きも、どちらも同じキャンバスに絵を描きます。でも、コンテストに出す絵は丁寧に時間をかけて描きます。より良い絵を描こうとします。絵に対する意識に違いがあります。

ここから分かるのは、アイデアを得るには、良い作品を作ろうとする向上心が不可欠であるということです。向上心を得るには、成し遂げることの意義をはっきりさせておくことが必要です。目標を持つこと、一緒に問題に取り組める仲間がいることも助けになります。

アイデアの素になる情報をインプットする

アイデアを生み出すには考えることが不可欠ですが、全くの空っぽの状態から考えることはできません。考えるにはある程度の材料が必要です。

考える材料はどうやって手に入れることができるでしょうか。私たちは情報のほとんどを聞くことから得ています。また見ることは情報を得る主要な手段です。ですから、目と耳を上手に活用して情報を集めることができます。

散歩をしましょう。自然界にはアイデアの種になる情報であふれています。可愛い動物や綺麗な花、美しい景色から多くを学ぶことができます。水のせせらぎや小鳥のさえずりからたくさんの発想を得ることができます。

本を読みましょう。本は良い情報を効率よく得る手段になります。多くの場合、ネットよりも情報が整頓されており正確なので、安心して学ぶことができます。作品集などを読むのもおすすめです。

調査しましょう。今ではインターネットで多くの物事を簡単に調べられるようになっています。分からないことはそのままにせず、辞書や本あるいはネットを活用して調べましょう。

そうやって得た情報はアイデアの素になって、アイデアを生み出す助けになります。例えば、「あのとき見た表現方法をこの作品に活かせるかもしれない」などと考えることができます。

ツールを上手に活用する

よい道具があるならば、難しい問題を切り抜ける助けになります。アイデアを得るためのツールについても同様です。先ほど紹介したアイデアの発想法もツールの一つです。

配色で悩んでいるとしましょう。そんなときに役立つどんなツールがあるでしょうか。色色は入力した言葉のイメージカラーを生成してくれる便利なウェブサイトです。HUE/360というウェブサイトを活用してマッチする色を探すこともできます。

色色 HUE/360 たくさんのツールがあるので探し出すのが大変に思えるかもしれません。例えばデザイン関連ならcolissやPhotoshopVIPといったウェブサイトで有用な情報を得ることができます。イラストならPixiVisionやいちあっぷ、イラスト・マンガ描き方ナビといったサイトをチェックしておくと良いかもしれません。

  • coliss
  • PhotoshopVIP
  • PixiVision
  • いちあっぷ
  • イラスト・マンガ描き方ナビ

ぜひ便利なツールはどんどん活用しましょう。

惜しまずに、しかし次のプロジェクトで使おう

アイデアを使うことについて、二つの注意点を述べたいと思います。

  • アイデアを惜しまずに使おう
  • 良いアイデアは次のプロジェクトで活かそう

アイデアを使うことを惜しまないようにしましょう。アイデアを使える場面が訪れたら、すかさず使ってみることをおすすめします。使うことによって技術が上達し、アイデアを生み出した目的を果たすことができるからです。

とはいえ、良いアイデアは当面のプロジェクトを壊してしまう恐れがあります。スケジュールが決まっているのに良いアイデアを詰め込もうとするなら、プロジェクトは破綻してしまうでしょう。

ですから、良いアイデアは惜しまず使うべきですが、当面のプロジェクトではなく次のプロジェクトで使うようにしましょう。

まとめ|アイデアを生むための4つの方法

これまで書いてきたことをまとめると、次のようになります。

  • メモしよう
  • 思考タイプに合った発想法を試そう
  • 情報をインプットしよう
  • 道具を活用しよう

メモをすることで浮かんだアイデアを逃さず記録しておくことができます。思考タイプに合った発想法を試すことで、スムーズにアイデアを生み出す方法を探せます。情報をインプットしてアイデアの種をたくさん植えることができます。道具を活用して効率よくアイデアを得る助けが得られます。

そして、アイデアを活用する機会が訪れたのなら、躊躇することなく使ってみましょう。

アイデアを生む努力を続けていくなら、目的を達成するための手段を見つけやすくなり、作品をよりよいものにしていく助けになることでしょう。

絵のスランプについて知って欲しいこと #

理由もないのに絵が描けなくなってしまうときがあります。どんなに頑張っても筆が進みません。私たちはそのような状態のことをスランプと呼びます。

この記事ではスランプを脱出するためにできることを説明します。

スランプ|とても厄介な問題

作家の夢野久作は、手紙の中でスランプの辛さについて切々と述べました。

私たちもスランプに陥ることがあります。これまで順調に絵が描けていたのに、なぜか全然描けなくなってしまうことがあります。練習しているのに上達するどころか、下手になっているような気がすることさえあります。

スランプになってしまうと、私たちは自信を奪われ、絵を描き続ける意欲を失ってしまうかもしれません。スランプはとても厄介な問題です。

ではスランプとは具体的にはどんな状態のことでしょうか。一緒に調べてみましょう。

スランプとは不調のこと

大辞林にはスランプについて『気力や体調が一時的に衰え気味で、仕事の能率や成績が落ちる状態』とあります。

一言でいうと『不調』です。

不調にはさまざまな種類があります。なんとなく調子が振るわない、いまいち上手くいかないという曖昧なものから、技量の上達が停滞している状態や技量が低下しているように感じる状態など多岐に渡ります。

スランプはそれらを含めた広い意味での『不調』ということができるでしょう。とはいえ、スランプを他と区別する考え方もあるので紹介したいと思います。

スランプの分類|低下するスランプと停滞するプラトー

岡本浩一著『スランプ克服の法則』には『鍛錬の量は十分に維持しているのに、技量が伸び悩むどころか低下していく。これがスランプである』と書いてあります。

このように技量の低下と停滞を区別する見方があります。その場合、技量が低下していく方を『スランプ』、停滞する方を『プラトー』と呼びます。

プラトーは上達していく中で経験する停滞期のことです。停滞期が訪れるのは自然なことです。例えば同じ内容の練習をしていても上達する時期と停滞している時期があります。鍛錬を続けていれば、いずれ成長する時期に移り変わるので心配はいりません。

ところで、この記事ではスランプとプラトーを区別していません。スランプという言葉が一般的にも広い意味で使われているからです。プラトーもスランプの一種であると考えて論じていきます。

スランプの分類|アスリートが陥るスランプ

スランプという言葉はスポーツ界でよく用いられます。野球選手が球が投げられなくなってしまったなどという話を聞いたことがあるかもしれません。アスリートはそのようなスランプを経験することがあります。

アスリートが陥るスランプは脱出が困難なものがあり、それについてはまだ十分に解明されていないようです。身体と心の不一致が原因だという見方もあれば、メンタルが関係しているという見方もあります。

そのため一般的なスランプとアスリートが陥るスランプを同じものと見るかどうかに関して慎重になる必要があります。

他に羽生善治著の『迷いながら、強くなる』では『スランプ』と『どつぼ』という語を区別して用いています。その中で、スランプとどつぼの関係を風邪と肺炎の例で説明しています。風邪つまりスランプの時に基本的なケアをするのが大切であり、それを怠ると自分の力ではどうしようもできない肺炎つまりどつぼになってしまうというわけです。

スランプの分類|まとめ

ここまで出てきたスランプについてまとめると、次のようになります。

  • 不調
  • 鍛錬しているのに技量が低下すること
  • アスリートが陥るスランプ
  • 自分の力ではどうしようもなくなる前

スランプという言葉は多くの意味で使われているため、スランプを克服するには自分が陥っているスランプがどのようなものなのかを分析してみることが大切です。

とはいえ、その前に最も大切なことをお伝えしたいと思います。

積極的な見方を保とう

スランプは必ず克服することができます。どんな種類のスランプであってもです。「このスランプは絶対によくならない」とは考えないでください。スランプは克服できます。

暗い洞窟の中にいるとしましょう。洞窟は深く、どこまでも続いているように感じます。でも、洞窟は水の侵食によって作られたものです。ですから、上に上に登っていけば必ず出口にたどり着きます。

スランプも同じです。どこまでもスランプが続くように感じます。一筋の光すら見えないかもしれません。しかし、スランプを脱出することは可能です。出口がどこかにあるからです。必ず脱出できると信じましょう。

必ずしも望んだ結果を得られるわけではないかもしれません。洞窟に行き止まりがあるのと同じです。時には引き返すことも必要です。道は曲がりくねっており、登ることもあれば、降りることもあります。

また自分ではどうしようもないこともあるでしょう。助けを待つしか方法はないこともあります。どこかに出口はあります。出口を誰かがこじ開けてくれることもあります。解決策は確かにあるのです。

ですから、積極的な見方を保ちましょう。スランプは必ず克服できると信じるのです。これがスランプを克服する上での第一歩であり、そして一番大切なことです。

心身のケアをしよう|風邪かもしれない

機械が起動しなくなったらどうしますか。詳しい人なら、機械を分解して中をいろいろ探るかもしれません。しかし、問題のある箇所は見当たりません。そこであることに気づきます。電源コードがコンセントにつながっていなかったのです。

スランプだと感じた時は、まず電源を疑ってみましょう。つまり、絵がうまく描けないのは風邪で熱を出しているだけかもしれない、ということです。そんなことはわかりきっていると思うかもしれません。でも、まずはそこを疑うようにしましょう。

手をぎゅっと握ってみましょう。ぐっと力が入れば恐らく大丈夫です。もし、いつもより力が出ない気がしたら、体温計で熱を測りましょう。平熱かもしれません。でも、元気だとわかって損なことは一つもありません。まずは電源を疑いましょう。

心身のケアをしよう|外的要因を突き止める

自転車に乗っている時、ガタガタ、ギイギイと音がしたらどうしますか。乗っているうちに治るだろうと考えて構わず乗り続けますか。そんなことはしないでしょう。そのような音は故障のサインかもしれないからです。

スランプも同じです。スランプには不調が含まれます。それは心身の不調のサインかもしれません。風邪かどうかをまず疑うべきなのは、こういった理由があるからです。

それで、ただ絵が描けないだけなのか、生活全体でなんらかの不調を感じているのかを見極めましょう。

ぼーっとしていたり、気分がすぐれなかったりするなら、それは心身の不調かもしれません。それにはどんな要因があるでしょうか。いくつか例をあげてみます。

  • 精神的な病気(うつなど)
  • 気象の変化・潮の満ち引き
  • 体のリズムによる変化
  • ストレス・働きすぎ
  • 睡眠不足・運動不足
  • 栄養失調・脱水症状

もしどれかに当てはまるとしても過度に落ち込まないでください。原因を無くすことはできないとしても改善することはできます。また、症状が長く続く場合は医者に診てもらうようにしましょう。

絵を描く人は繊細な方が少なくないので、心身をケアするのはとても大切なことです。

理性的に行動しよう

緊張して手と足が同じく動いてしまったことはありませんか。右手と右足が同時に出てしまい、歩き方がぎこちなくなってしまいます。いつもは無意識にできていることが、緊張のあまりできなくなってしまっているのです。

もし、そのような緊張している人がいたら、どのようなアドバイスをしてあげられるでしょうか。「そんなに緊張しなくてもいいんだよ」と言ってあげられるかもしれません。でも、それでも緊張している様子なら、どう助言できますか。

きっとこのように言うでしょう。「右足を出すときには左手を出すんだよ。左足を出すときは右手を出すんだ。落ち着いて意識的に行動すれば、いつもの感覚で歩けるようになるよ」。

絵のスランプの場合も同じです。絵に熟達していくと手が自然に動くようになります。しかし、緊張で手と足が同じく動いてしまうように、なにかの原因で手が自然に動かなくなってしまうかもしれません。そのような時は、意識して理性を働かせることが大切です。

信頼できる人に相談しよう

スランプは自分で解決できるものもあれば、そうでないものもあります。精神的な病気など自分ではどうしようもない状況からくるスランプであれば特にそう言えます。

ですから、スランプからどうしても抜け出せないときは、信頼できる家族や友人に相談するのは賢明な判断です。その人はいわば、深い穴に落ちた私たちを引き上げる手伝いをしてくれるでしょう。

どの段階で描けなくなるのか特定しよう

手足が同じに動いてしまう人は、手と足を出すタイミングに問題がありました。そしてそのずれを意識的に修正することで正しく歩けるようになりました。

絵も場合も、どの段階で描けなくなるかが分かれば、対処することが容易になります。そこを避けたり、あるいは集中的に練習したりすることができます。

どんな場面が考えられますか。いくつか挙げてみます。

  • 紙を用意することもできない
  • 集中できない
  • 絵のアイデアが出ない
  • 描き始められない
  • 線がきちんと弾けない
  • 物や人の形が分からない
  • 色が決まらない
  • 完成できない
  • 完成した絵に満足できない

どの段階であっても、理性を働かせるなら状況を改善していくことができます。一つずつ具体的な例を見ていきましょう。

紙を用意することもできない|ハードルを下げよう

夏休みの予定をしっかりと立てたのに、予定通りにできなかった経験はありませんか。予定をこなせたのは最初の数日だけで、溜まりに溜まった宿題はいつも最終日にやる羽目になります。適切なスケジュールを立てるのはとても難しいものです。

同じように、絵を描くのもハードルを高く設定しすぎることがあり得ます。例えば『プロような絵を描こう』という目標のせいで、気負いすぎて絵が描けなくなってしまうかもしれません。紙を用意するのも嫌になってしまうでしょう。

ハードルを下げましょう。どのくらいハードルを下げるべきですか。目安となるのが『75%ルール』と呼ばれる方法です。これは75%できると思うことを行うということです。この75%は人によって大きくことなります。

目標を立てることは学校で学びますが、ハードルを立てる方法は恐らく学びません。それで、どのようにハードルを下げるのか例を見てみたいと思います。

どのようにハードルを下げるか

最初の目標が『プロのような絵を描く』だとしましょう。このハードルをどのように下げることができますか。「いきなりプロのようには描けない」と考えて次のようにハードルを下げるかもしれません。

プロのような絵を描く→上手な絵を描く

これでハードルは十分に下がりましたか。いいえ。まだ気負いがあるようです。もっと思い切ってハードルを下げてみましょう。こんな風にするかもしれません。

上手な絵を描く→そこそこの絵を描く

よい感じにハードルが下がりました。ですが、まだそれでもまだ下げる必要があるかもしれません。ハードルを下げるのに慣れていきましょう。このようにできるかもしれません。

そこそこの絵を描く→ふつうの絵を描く

もうこれ以上は下げられないと思うかもしれません。しかし、まだまだ序の口です。ハードルを下げるのはこれからが本番なのです。もっとハードルを下げてみましょう。

ふつうの絵を描く→どうでもいい絵を描く

素晴らしくハードルが下がりました。でも、あえて言いましょう。まだです。どうでもいい絵すら描くのはハードルが高いのです。絵を描くというのはそれだけで、ハードルが高いのです。ですから、こうしましょう。

どうでもいい絵を描く→立方体を描く

立方体なら5分もあれば描けそうですね。これならきっと心の負担も減るでしょう。ですが、これもまだハードルが高い絵です。立体を描くのはそれだけで絵を描く力を求められるからです。こうすることを提案します。

立方体を描く→円を描く

円を描くのは良いことです。なぜなら、円を描くだけで滑らかな筆の動かし方を練習できるからです。しかし、それは高度なことでもあります。円を描こうと思ってもなかなか始められないかもしれません。このようにするのはいかがでしょうか。

円を描く→線を描く

線は絵の大事な構成要素の一つです。これを描けるというのは素晴らしいことです。線が書ければ絵も描けます。すばらしいことです。そして、そんなことを自分に要求してしまって負担になりませんか。こうしましょう。

線を描く→一本だけ線を引く

エレガントな目標です。紙に一本だけ線を引くだけです。なんと素晴らしいアートなのでしょう。一本の線が芸術を紡ぎ出すのです。そう思うと、これはなかなかハードルが高いように感じませんか。こう変更しましょう。

一本だけ線を引く→画用紙と鉛筆を机の上に用意する

ここまでハードルを下げられたら、ハードルを下げるのにかなり熟達しています。自信を持って挑むことができるでしょう。しかし、上には上がいることも忘れてはなりません。こんな方法があります。

画用紙と鉛筆を机の上に用意する→画用紙を机の上に用意する

なんということでしょう。絵を描くための鉛筆すら登場しなくなってしまいました。絵を描くには筆が必要という固定観念を覆した、なんと素晴らしい答えなのでしょう。しかし、まだハードルを下げる余地があります。こんな風にできます。

画用紙を机の上に用意する→紙を用意する

紙を用意することは誰にでもできます。絵を描くための専用紙でなくてもよいのです。コピー用紙でもチラシの裏でもなんでも構いません。この目標は誰にでも達成できます。

・・・・・・

気づきましたか?

この段階で、すでに『紙を用意することもできない』というスランプを克服しています!

紙を用意するのもできないような、とても大きく見えるスランプだとしても、こうやってハードルを下げて下げて下げることによって、最初の一歩を踏み出すことができるのです。

ですから、ハードルを下げましょう。それが秘訣です。

集中できない|聴くもの・見るもの・時間帯を変えてみよう

ハードルを下げることに熟達した方なら、この段階もあっという間に克服することができます。なぜでしょうか。集中するというハードルを下げることができるからです。

たしかに1時間集中するのは難しいかもしれません。でも30分ならどうでしょうか。10分なら、いえ5分ならどうでしょうか。

きっとあなたは、もっと上手にハードルを下げることができるでしょう。挑戦のハードルを限りなく低くして、最終的に「5秒」集中すれば良いと判断するかもしれません。そこからスタートすれば良いのです。

では、具体的な集中法について調べてみましょう。

どのように集中するか

どのように集中するかについては、すでに多くの方法が溢れています。個人の経験則から広く知られたメソッドに至るまで数多くの集中法が存在しています。

ここでは、聴くもの・見るもの・時間の3つの観点から効率的に集中する方法を考えたいと思います。

最初は聴くものです。音楽を聴くのが集中につながるという人もいれば、何も聞かないほうが集中できるという人もいます。雨音や川のせせらぎ、ホワイトノイズなどが良いという人もいます。うるさいと集中できるという方は滅多にいないと思いますが、ある程度生活音があった方が落ち着くという方もいます。

聴くものについて、色々試してみましょう。

  • クラシック音楽・好きな音楽を聴く
  • 雨音・川のせせらぎを聴く
  • ホワイトノイズ・ブラウンノイズを聴く
  • 自宅・カフェ・図書館に行く
  • 耳栓などで音を遮断する

次は見るものです。視界に入るものとも言えるかもしれません。集中するのに役立つとされる色があります。集中しやすい照明は人それぞれです。整理整頓している方が集中できる人もいれば、ある程度散らかっている方が落ち着く人もいます。使う画材によっても集中の度合いが変わります。

見るものについて、色々試してみましょう。

  • 紙の色を変えてみる(青・緑・ベージュなど)
  • 照明を変えてみる(蛍光灯・白熱球・LED球など)
  • 机の上や部屋を自分好みにする
  • 画面の色や明るさを変えてみる

最後に時間についてです。集中力は人それぞれ違います。15分を境に集中力が低下するという見解があります。25分間集中して5分休憩するのを繰り返すポモドーロ・テクニックという方法があります。朝の時間帯が集中しやすいという人もいれば、夜の時間帯の方が集中できるという人もいます。

時間について、自分に合ったものを探してみましょう。

  • 集中できる時間を探ってみる
  • 15分、20分、あるいは25分ごとに休憩を入れる
  • 朝、昼、夜とさまざまな時間帯を試してみる

集中する方法についてはすでに多くの方法が溢れています。色々な方法を試してみて、自分に合ったものを使うようにしましょう。

絵のアイデアが出ない|アイデアに頼らないで描こう

優れた芸術家でさえ自分の創造力が枯渇してしまったと感じることがあります。アイデアが出ないのは絵描きにとってとても辛いことです。これから絵を描いていけるかどうか不安になるかもしれません。

でも安心してください。アイデアを出す方法はすでに数多くあります。具体的な方法については以前に書いたアイデアを生むための4つの方法という記事で紹介しているので、詳細についてはそちらをご覧ください。

その記事の要点をまとめると、次のようになります。

  • メモを取ることを習慣にする
  • すでにあるアイデア発想法を試す
  • 情報を上手にインプットする
  • カメラなどの道具を活用する

アイデアに頼らずに描ける方法を用意しておくこともおすすめです。例えば、自分が持っているものを一つずつ描く、散歩して気になったものを思い出して描く、百科事典に載っているものを順番に描くなどです。

以上のような方法を上手に活用するなら、アイデアが枯渇しないように十分に貯めるができるでしょう。

描き始められない|よい習慣を身につけよう

描き始めはとても勇気がいります。真っ白な紙に筆を運ぶのを躊躇してしまいます。絵の具を使っている方なら、絵の具をチューブから絞り出し、筆に絵の具をつけてキャンバスに触れるのをためらうかもしれません。

スランプでなくても勇気がいるのですから、スランプに陥ってしまったらなおさら勇気が求められます。どうすれば描き始められないという葛藤を克服できるでしょうか。

基本的には先に挙げた『ハードルを下げる』方法が役に立ちます。上手な絵を描こうとはせず、とりあえず一本だけ線を引いてみようとか、絵の具をペタッと塗ってみようという風にハードルを上手に下げましょう。

そして、自分が描き始められる方法を習慣にするするのはよい方法です。習慣にすれば、スランプに陥る可能性を低めることができるからです。

最初に描くものを決めておきましょう。線を引く、箱を描く、青色の絵の具で塗るなど、簡単なものがよいです。迷わないように、何を・どこに・どのように・どのくらい描くのか具体的に決めて決めておきましょう。例えば次のようにします。

  • 絵を描くときは最初に四角形を描く
  • 四角形の大きさは縦横3センチ
  • 紙の左上から描き始める
  • 横に3つずつ、縦に4つ、合計12の四角形を描く
  • 四角形はそれぞれ5秒程度で描く
  • 時間は合計で1分で描く
  • 1枚の紙を使い切る

もちろん、もっと簡単でも構いません。もう少し複雑にしても大丈夫です。大切なのは、最初に何を描くかを習慣化することです。そして習慣通り描いてしまえば『描き始められない』という葛藤を乗り越えたことになり、他の絵を描くのがもっと容易になります。

もしかすると描き始められない原因は画材にあるかもしれません。白紙に描くのが緊張する場合は、色のついた紙を使うと改善できるかもしれません。また、横罫の入ったノートや方眼紙を使うのも選択肢に入れてみましょう。

線がきちんと弾けない|ネガティブ思考の悪循環を断とう

疲れている時やアルコールを摂取したときは、綺麗な線が描けません。そういう時に絵を描いても上手に描くことはできず、結局投げ出してしまうでしょう。疲れはじきに癒えますし、アルコールも次第に抜けていきます。

しかし、スランプに陥ってしまい、どうしても気に入った線が描けないときはどうしたらよいでしょうか。何度描いてもうまくいきません。これまで考えてきたようにハードルを下げることや習慣の力を活用することは強力な武器になります。

では、他によい方法はありますか。あります。ネガティブ思考の悪循環に陥らないようにすることが大切です。

感情は身体や考えと結びついています。例えば、不安を感じたとき、冷や汗をかくかもしれません。そして、もう逃げ出したいと考えるかもしれません。これは自然な反応ですが、ある程度コントロールすることができます。

手がこわばっているなら、マッサージをすることができます。逃げ出したいという考えがあっても「きっと大丈夫」と言い聞かせることができます。湧き出る感情はコントロールできなくても、身体や考えをコントロールすることで悪循環を断ち切ることができるのです。

その方法を線を描くことに応用してみましょう。きちんとした線が描けないという自分の思いが湧いてくるのは仕方のないことです。でも、もしそのまま「この線はダメだ」と考え続けては状況は悪くなる一方です。むしろ、こう考えましょう。「この線はよい線だ。今しか描けない特別な線だ。この線があるからこそ次の作品が生まれるんだ」。

ペンの持ち方や姿勢、体のこわばりなどを再確認するのもよい方法です。ストレッチなどをして体をリラックスさせましょう。シャワーを浴びたり湯船に浸かったりするのもよい方法です。休息をとりましょう。

物や人の形が分からない|理論を学ぼう

ある漢字が急に正しいか分からなくなったことはありませんか。覚えているし書けるのですが、見れば見るほどこれで正しいのかが不安になってきます。このような現象のことをゲシュタルト崩壊といいます。

そのように漢字が分からなくなったときはどうしますか。きっと漢和辞典を開いて調べることでしょう。どのような編やつくりで構成されているのか、改めて学びなおすことによって、たとえその漢字が正しいのか分からなくなっても、自信を持って正しい漢字を書くことができるようになります。

では、スランプに陥って物や人の形がこれで正しいのか分からなくなったらどうすればよいでしょうか。漢字の場合と同じように、絵の理論や物の形を改めて学び直すことで、自信を取り戻すことができます。

具体的には次のようなことができます。

  • 美術書を読む
  • 美術解剖学を学ぶ
  • ステレオメトリーを学ぶ
  • デザインや構図のルールを学ぶ

理論を知って使うことができれば、スランプに陥った時期にも正しい形を描くことができるので、スランプを脱出するまで絵を描くのをやめることなく継続することが容易になります。

色が決まらない|テーマを決めよう

人間は1000万以上の色を見分けることができると言われています。また人間は色を覚えるのが生来苦手です。ですから、そのような膨大な色の中から一つを選んで、適切に配色するのは至難の技といえます。

スランプになって色を決められなくなってしまったら、どうすればいいでしょうか。やはりこれも、物や人の形を決めるときと同じように、理論を学ぶのが効果的です。感覚で選んでいたところを理論で選べるようになれば、不安を軽減することができます。

色の理論を実践する上で大切なのが、テーマを決めることです。例えば『かわいい女の子らしさ』とか『クールなスポーツカーの色』とかテーマを設定するなら、理論を活用して色を決定することができるようになります。

テーマとは主題のことです。例えばこの記事のテーマは『絵のスランプから抜け出す方法』です。テーマをどのように決定することができますか。まず、目標を決めることが大切です。それから作品を見る人を想定します。自分がその絵で達成したいことを考えるなら、自ずとテーマが決まってきます。

テーマは毎回変える必要はありません。たとえば『制服を着たかわいい女の子』を毎回描いても良いですし、『仲の良い家族』をテーマに描き続けることもできます。

テーマが決まったら、色の理論を用いて使う色を決めてゆきます。この記事では色の理論について詳しくは触れませんが、効果的な配色のルールや色数について学ぶなら、色を選ぶ負担を大きく減らすことができます。

色を決める場面でも、これまで考えたハードルを下げることや、習慣の力を活用すること、ネガティブな悪循環を避けることは役に立ちます。例えば、ハードルを下げて『今日は1色だけ使うようにしよう』とか、『最初は必ず青色を使う』などといった習慣を設けることができるかもしれません。

完成できない|現実的な見方をしよう

やり遂げることの大切さは誰もが認めるでしょう。楽器を学んでも上達する前にやめてしまうかもしれません。外国語の習得はどうでしょうか。また、ダイエットを成し遂げるのはとても困難です。数多くのハウツー本やセミナーがあるにもかかわらず、多くの人は途中で挫折してしまいます。

一枚のイラストについても同様です。これを完成させるのはなんと大変な作業なのでしょう。1枚の絵を描きあげるのに10時間から20時間かけることもあるでしょう。しかも、スランプでなかなか完成までこぎつけられないなら、どれほど焦れったい思いをすることでしょう。

私たちは絵に対して、そして自分自身に対して現実的な見方をする必要があります。急ぐあまり自分にできることを考慮せずに大作に着手しないようにしましょう。そうしてしまうなら、大抵は挫折してしまい、また自信を失ってしまうかもしれないからです。

絵について現実的な見方をしましょう。それなりの絵を描くのは時間がかかります。イラストレーターの描く絵は数時間、10時間、20時間などかなりの時間をかけて描かれています。画家の描く絵は数ヶ月に及ぶことさえあります。それに加え、さまざまな経験や技法を用いて描きます。また多くの場合、描くものについて調査したり、画材を調達したりなど、手間とお金がかかっています。時間と技術とお金が必要なのです。

自分について現実的な見方をしましょう。学校や職場に通っているなら、1日のうちに絵に充てられる時間はそれほど多くないでしょう。絵の技術を習得するのは一朝一夕にはいきません。また絵のためにかけられるお金にも限度があります。それに加え、スランプに陥っているときには、心身に負担をかけないように注意する必要があります。

そのようなことを考慮すると、謙虚な気持ちで絵を描き始めることができます。慣れないうちは大作に挑まないようにするかもしれません。ハードルを下げ、75%ルールを適用して、自分の完成させられる題材を選ぶことができます。

途中でやめるべきときもあるでしょう。あまりに自分に負担になってしまうようなときや、自分にあまり益にならないと分かったときなどです。

また、妥協して完成したことにすることも時には必要です。絵を描く時間を決めるのも良い方法です。たとえば1時間などの時間制限を設けて、描けても描けなくても、その作品は完成したものとみなします。

現実的な見方をして、自分にできることを積み重ねていくなら、いずれ大作を作れるようになってゆくでしょう。スランプから脱出したときにも、そのときの経験がきっと役に立つはずです。

完成した絵に満足できない|失敗を受け入れよう

習字の授業を覚えていますか。書道はわずかな時間で作品が出来上がる珍しい芸術です。優れた書家はわずかな時間で非常に美しい字を紡ぎます。しかし、私たちの多くは自分の書いた字に納得できなかったのではないでしょうか。お手本からは程遠いからです。

完成したイラストについても、同じようなことに感じることがあります。自分の描いた絵にどうにも満足できないのです。描いているときは夢中でも、改めて見返すと至らない点ばかり目に留まります。そんなことが続くと、絵を描くのが嫌になってしまいます。

現代はこれまでにないほど色々な作品を手軽に見れるようになりました。昔なら博物館に行かなければ見れなかったものをネットで手軽に見ることができます。高いお金を出して画集を買わなくても、その人の投稿を見れば最新のイラストを見ることができます。自分の技量よりも目が肥えてしまうのは、今の時代はむしろ当然のことなのです。

自分の目が肥えて、技量が追いついていないとどうなりますか。そうです、習字のときと同じように自分の作品が『お手本』から程遠いのがはっきりわかってしまい、自分の作品に納得がいかなくなってしまうのです。こうなってしまうのは仕方のないことです。

情報を遮断しようと思っても、私たちとネットはあまりにも身近になっているので完全に遮断するのは不可能です。それに、上手なイラストを見ることは成長に役立つことであり、間違ってはいません。

それでは、完成した絵に満足できないとき、どうすればよいでしょうか。

これまで考えてきた方法は、この傾向と闘うのに役立ちます。絵に求めるハードルを下げましょう。自分自身について現実的な見方をします。私たちが目指すのは完璧な絵を描くことではありません。お手本通りに描くことでもありません。

私たちが目指すべきなのはベストを尽くすことです。今できるベストを尽くせばそれで良いのです。肩の力を抜きましょう。世界最高と呼ばれるピアニストでさえミスタッチをします。失敗をしない人間は存在しません。私たちがミスをするのは当たり前なのです。

これまでで、絵が描けなくなる可能性のある段階について、それぞれ対策を考えてきました。それぞれの段階に応じて、できる対策があることがわかりました。もちろん、これらの対策をしてもすぐにスランプから抜けられるわけではないかもしれません。でも、対策ができることが分かると不安が減り、心の負担を減らすことができます。

この記事で考えた5つの点と対応策

スランプに対処するためにできることとして、5つの点を考えました。

  • 積極的な見方を保とう
  • 心身の健康をケアしよう
  • 理性的に行動しよう
  • 描けなくなる段階を特定しよう
  • 信頼できる人に相談しよう

どの段階で描けなくなるとしても、それぞれに対応策があることも考えました。

  • 紙を用意することもできない → ハードルを下げよう
  • 集中できない → 聴くもの・見るもの・時間帯を変えてみよう
  • 絵のアイデアが出ない → アイデアに頼らないで描こう
  • 描き始められない → よい習慣を身につけよう
  • 線がきちんと弾けない → ネガティブ思考の悪循環を断とう
  • 物や人の形が分からない → 理論を学ぼう
  • 色が決まらない → テーマを決めよう
  • 完成できない → 現実的な見方をしよう
  • 完成した絵に満足できない → 失敗を受け入れよう

スランプから得られる益|謙虚さと敬意

スランプは辛いものであり、できれば経験したくないことです。しかし、スランプがもたらすのは辛さだけではありません。スランプから得られる良いことがあります。それは、謙虚さと敬意です。

スランプを経験した人は、自分がスランプに陥るかもしれないことを自覚するようになります。それは自信過剰になるのを防いでくれます。そしてスランプに上手に対処するなら、バランスのとれた自信を得ることができます。

また他の人のスランプにも感情移入できるようになります。他の絵描きも自分と同じようにスランプを経験しているかもしれないと考えられるようになり、それにも負けずに創作を続けている姿に敬意を抱けるようになります。

スランプは決して楽しいものではありませんが、それを経験し上手に対処することによって、より成長した絵描きになることができるのです。

この記事では絵のスランプについて、じっくりと考えてきました。そしてスランプの対処法についても考えました。

スランプから抜け出すことは可能です。ですから、スランプに陥ってもあきらめないようにしましょう。落ち着いて対処し、時には信頼できる人の助けを借りて、粘り強く改善を続けましょう。そうするなら、スランプを克服するよう前身し続け、より成長した人となることができるからです。

繊細な線を描くための画材と技法 #

線の美しさ、繊細さに関する絶対的な指標はありません。

どんな線にも個性があり、それぞれの美しさを持っています。

ですから、繊細な線を描く方法について考える前に、それがどんな線なのか定義するのは良いことです。

繊細な線|電子機器でスマートに見える線

この記事では、繊細な線を『デジタル化したときにスマートに見える線』と定義します。

電子機器、つまりコンピューターやタブレットで見たときに、スッキリと見える線のことです。

電子機器のディスプレイはピクセルの集まりで画像を表示しています。ピクセルは非常に細かい正方形で表現されます。近年ディスプレイの性能が向上してきたとはいえ、あまりに細かいものはまだ表現できません。

現時点では、クセのある線よりもクセのない線の方が綺麗に表示できます。鉛筆で描いた線のようなムラのある線より、インクで描いたムラのない線の方が綺麗に表示しやすいということです。

スマートな線を描くための画材と技法

この記事では繊細な線をアナログで描くための良い方法を、画材と技法の2つの方向から考えます。

紙|漫画用の原稿用紙が最適 線の繊細さを左右する大事な要素となるのが紙です。紙にはいろいろな種類がありますが、主要な紙から4つを選んでみました。

  • 漫画用原稿用紙
  • コピー用紙
  • 画用紙
  • 水彩紙

漫画用原稿用紙(ケント紙)はインクのにじみが少なく、綺麗な線が描きやすい上質な紙です。消しゴムをかけても破けない耐久性があります。

コピー用紙は安価で購入できる紙です。紙の繊維が粗いので、インクがにじんでしまいます。

画用紙は耐久性と価格の安さのバランスの取れた紙です。色々な画材に使えますが、目が粗いので、綺麗な線は描くのは難しいです。

水彩紙は水彩画のための紙です。水分を含んでも紙が歪まない厚手の紙です。画用紙と同じく目が粗いので、綺麗な線を描くのは難しいです。

以上の比較から、どんなことが分かるでしょうか。

線を綺麗に描くのに最適な紙は漫画用原稿用紙ということです。

目が細かくて、インクのにじまない紙なら他の紙でも構いません。上質紙やケント紙でも代用できます。

筆|つけペンが最も使われている 次に筆について考えましょう。最も綺麗な線が描ける筆記用具は何でしょうか。たくさんの種類がありますが、その中から8つを選んでみました。

  • A. 鉛筆(2B)
  • B. 鉛筆(6B)
  • C. 筆ペン(中字)
  • D. 筆ペン(細字)
  • E. ミリペン(0.3)
  • F. ミリペン(0.1)
  • G. つけペン(Gペン)
  • H. つけペン(丸ペン)

鉛筆は芯の太さに関わらず、ラフや下書きを描くのに向いています。綺麗な線を描くのには向いていません。

筆ペンは柔軟なペンです。細い線から太い線まで描くことができます。微妙な力加減が必要です。

ミリペンは製図などに適したペンです。さらに細いペンも市販されています。

つけペンはよく漫画を描くのに使われます。筆圧で強弱がつけられ、手頃な硬さがあるので描きやすいです。

これらの中で最も漫画家に使われているのがつけペンです。とはいえ、筆ペン・ミリペン・つけペンなら、練習次第で綺麗な線が描けるようになります。

インク|墨汁で良い インク(墨)については、濃くてにじまないものなら何でも良いです。

墨汁は最適です。安く入手できて、乾くのが早く、にじまないからです。

色|線の色を変えて繊細に見せる技法 線を繊細に見せる色トレスという技法があります。これは、周りの色に合わせて線の色を変えることで、線を馴染ませる技法です。

また、線の色を少し変えるだけでも効果があります。

漫画用原稿用紙にGペンで絵を描いたとしましょう。それをコンピューターに取り込んで、色を塗ります。

線が黒色のままだと、線が目立ってしまいます。そこで、線を周りの色に合わせて変えてみます。

すると、線が周りに馴染むので、より綺麗に見えます。

この方法は線の主張を弱めるので、必要に応じて使い分ける必要があります。

画材と技法のまとめ アナログで繊細な線を描くための画材と技法について考えました。スマートな線を描くのに良い画材や技法は次の通りです。

  • 紙|漫画用原稿用紙
  • 筆|つけペン
  • インク|墨汁
  • 技法|色トレス

紙はケント紙や上質紙でも構いません。筆はミリペンや筆ペンでも構いません。インクは濃い色でにじまないものなら何でも構いません。色トレスは必要に応じて使い分けましょう。

表現したいものによって画材と技法を選ぶ

記事の冒頭で述べたとおり、線の美しさや繊細さに関する絶対的な指標はありません。どんな線にも良さがあるものです。

今はデジタルの時代なので、スマートな線が良いとされているかもしれませんが、数年後にどうなっているかは分かりません。また、スマートな線が表現したいものにマッチしているとは限りません。

ですから、表現したいものによって画材と技法を選ぶのは賢明なことです。

そのようにして、絵を描くことを楽しみつつ、あなたにとっての繊細な線を探してゆきましょう。

お絵かきばかりしていないで勉強しなさいと言われる子どもたち #

「お絵かきばかりしていないで勉強しなさい」

と、お母さんに言われたことはありませんか。お父さんだったかもしれませんね。

そういう風に言われると、子どもはとてもがっかりします。もちろん、親は子どもの心配をして言ってくれているのことは知っています。勉強が大切なことも知っています。

でも、心の中にはモヤモヤしたものが残っています。言い返せないけれど、納得できない何かがあります。それは一体何でしょうか。一緒に考えてみましょう。

お絵かきは他の遊びとは少し違う

親にこう言われたとしましょう。

「テレビばかり見ていないで勉強しなさい」

ムッとするかもしれませんが、お母さんが言いたいことはよく分かります。

テレビは楽しくて夢中になれますが、でもテレビばかりを見るのは良くないことだからです。どうしてそう言えますか。

例えば、テレビ番組の間にはCMが流されます。つまらないので飛ばしたくなるかもしれませんね。

CMでは、いろいろな新商品が宣伝されます。もし、お店でシャンプーを買いたいとします。知っている商品と知らない商品、どちらを買うでしょうか。知っている商品ですよね。

ですから、たくさんの人に商品のことを知ってもらうために、いろいろな会社はテレビ局にお金を払って、CMを流してもらっているのです。

テレビばかり見ていると、CMをたくさん見ることになります。そうすると物がたくさん欲しくなってしまいます。それは、あまり良くないことです。

そう考えると「やめなさい」と言われたのがテレビだったら、納得しやすいかもしれません。

でも、お絵かきは、他の遊びとは少し違います。

お絵かきは自分を守ってくれる秘密の場所

学校ですごく嫌なことがあったとき、どうしますか。

お母さんに相談します。そうできたら、とても幸せですね。

でも、親が忙しくて、相談できないときもあります。全然話を聞いてくれない親もいます。そんなとき、どうしますか。

友だちに相談します。そういう友だちがほしいですよね。

でも、信頼できる友だちがいないかもしれません。友だちだと思って秘密のお話をしたら、みんなにバラされて恥ずかしい気持ちになったことがあるかもしれません。そんなとき、どうしますか。

むしゃくしゃして、物に八つ当たりしたくなるかもしれません。でも、何も悪いことをしていない物を壊すのは、優しくないことですよね。それに、毎日そんなことをしていたら、部屋の中がメチャクチャになってしまいます。

では、嫌なことがあったときどうしますか。

自分の嫌な気持ちを紙に書くと少しスッキリします。絵を描くと気持ちが少しだけ楽になります。

お絵かきは自分を守ってくれる秘密の場所のようです。

だれにも知られずに描くことができます。そして、だれにも知られずに自分の気持ちと向き合って、心の中を整えることができます。

お絵かきはなかなか認めてもらえない

運動が得意な子をうらやましく思ったことはありませんか。

だって、スポーツが好きな人は、たくさんスポーツをしていても怒られないからです。

それどころか、頑張って練習しているとみんなに褒めてもらえます。野球が上手な子は、野球のチームに入ります。そうして大きな大会に出られるとしたら、もう近所のヒーローです。

でも、お絵かきだと、なかなかそう思ってもらえません。

絵の練習をいっぱいしたとしましょう。上手に描けるようにノートに何回も何回もイラストを描きます。たくさん努力しました。誰かに褒めてもらえるでしょうか。

お絵かきはなかなか人に認めてもらえません。

もし将来のことを真剣に考えていて「イラストレーターになりたいから絵を描いている」と言ったとしても、なかなか信じてもらえません。もっとちゃんとした職業を目指しなさいと言われます。

そうすると、また気持ちがモヤモヤしてしまいます。そう言われるほど、お絵かきをして気持ちを整えなくちゃならなくなります。

プレッシャーをかけるのは実は逆効果

「テストで○点取れなかったら、お絵かき禁止」

そんな風に言われたことはありませんか。こんな風に、頑張るように圧力をかけることを『プレッシャーをかける』と言います。

たくさん思い当たることがあるかもしれません。

例えば・・・

「お絵かきばかりしていて将来どうするんだ」

とか・・・

「いつか社会に出たら大変なことになるぞ」

とかです。

プレッシャーをかけられると、とても不安になります。将来が怖くなってしまって、いつもの力も出せなくなってしまいます。

プレッシャーをかけられても、全然良いことがありません。

でも、親はそのことを知らないかもしれません。どうしてかというと、親も子どものとき、そういう風にプレッシャーをかけられて育てられたかもしれないからです。

だから、もしお父さんやお母さんがプレッシャーをかけてきたとしても、だめな親だと責めることは間違っています。

でも、プレッシャーをかけられるのは、やっぱり辛いことですよね。

やめなさいと言われたらどうする?

もしも親から「お絵かきをやめなさい」と言われたらどうしますか。

もちろん親の言うことを聞くべきですが、自分の意見を言ってはダメというわけではありません。ちゃんと話せば分かってもらえるかもしれません。

でも、親がカンカンに怒っているときは、何を言っても聞いてもらえませんよね。

ですから、親がくつろいでいるときを見計らって、ゆっくり話しかけましょう。

言うことをメモしておくのは良い方法です。

どんなことを話せると思いますか。

例えば、こう言えるかもしれません。

  • 私のことを心配してくれて、とても嬉しい。
  • でも「お絵かきをやめなさい」というのは、厳しすぎると思う。
  • お絵かきするとつらい気持ちが落ち着くし、本当に好きだから、やめたくない。
  • もちろん、勉強をしなくちゃいけないのはわかってる。
  • お母さん(お父さん)が納得できる、ほかの方法にしてほしい。(テレビを見る時間を減らす、宿題をもう少し真面目にやる、など)

ケンカをする必要はありません。

大きな声を出して、意見を絶対に通そうとは思わず、優しい口調で話しかけてください。相手が親であっても、です。

もし話を聞いてもらえなくても、あきらめないでください。

何度も話せば、きっと分かってもらえるでしょう。

絶対にダメと言われたら?

何度言っても、聞いてもらえないとしたらどうすればいいでしょうか。

学校の先生や信頼できる別の大人の人に相談することができるかもしれません。

それでもダメと言われたら、どうすればいいのでしょう。

親には子どもに制限を課す権限があります。

ですから、つらいかもしれませんが、親の言う通りにする必要があります。

反抗しないで素直に従うのは良いことです。

もしかすると、素直に従っている様子を見て、後で制限をゆるめてくれるかもしれません。

そうならないとしても、その経験はいつか役に立ちます。

親には何ができるか

もし、あなたが親であるなら、子どものためにどんなことができるでしょうか。

子どもと気持ちをよく通わせるのは大切です。

お絵かきばかりする子どもは、もしかすると感情を出せる場所が他にないのかもしれません。学校でつらいことがあって、お絵かきをして気を紛らわしているのかもしれません。

子どもの味方になってあげてください。

子どもにはお絵かきが必要なのかもしれません。あるいは友だちが必要なのかもしれません。

でも、一番必要なのは親です。

ときには子どもが親に反抗しているように見えるかもしれませんが、それでも一番頼りにしているのは親です。

ですから、子どもと一緒に時間を過ごし、子どもにとっての一番の親友であってください。

つらいことも絵の世界では力になる

お絵かきするのは楽しいです。

絵を描いていると悲しい気持ちが軽くなって、ワクワクした感情が湧いてきます。

でも、いつも楽しくお絵かきできるわけではありません。

もしかすると、親に「お絵かきをやめなさい」と言われることがあるかもしれません。

それは、とてもつらいことですね。

でも、どんなにつらいことがあっても、絵の世界ではプラスの力になります。

つらい気持ちを知っているなら、それだけ優しい絵を描けるようになるからです。

ですから、前向きな気持ちでいましょう。

それはきっと将来、あなたの力になるでしょう。

絵描きだけが知っているイラストの法則 #

多くのイラストには隠された法則があります。キャラを可愛く見せたり、世界観を出したりするトリックがあります。でもそれらイラストの法則について見聞きすることは少ないかもしれません。

この記事では1枚のイラストを分析して、イラストに仕込まれた6つの法則を紹介します。

紹介する法則は一般的なものですが、呼び方は私が独自に使っているものです。また解説の題材として、私が最近描いたイラストを使用しています。どうぞご了承ください。

氷の上に立つ少女

このイラストは『夏』というテーマで描きました。夏をイメージする小物が沢山配置されており、また海の生き物も描かれています。軽く伸びをする少女が氷の上に立って、こちらを見ています。

一見すると思いつくままに描いたようにも見えますが、実際にはいくつかの手法を使ってイラストを描いています。それらはデザインの法則としても知られています。

集合したものは1つに見える

1つ目の法則は『集合』です。

例えば、左上に4つの正方形を2つずつくっつけて2列に配置したとしましょう。それは細かく見ると4つの正方形です。しかし、私たちはそれを1つの大きな正方形と認識します。

同じように、氷の上に立つ少女のイラストでは、小物や動物が寄り集まってそれぞれ1つのまとまりに見えるように構成されています。それで見る人は左上と右下の三角形を認識して、その間を一本の帯のようなものが貫いているように見えます。

対称を使って安定感と緊張感を生む

2つ目の法則は『対称』です。シンメトリーとも呼ばれます。

シンメトリーとは左右あるいは上下が対称になるように配置することです。また点対称と呼ばれるものも対称の一種です。シンメトリーを使うと画面に安定感が生まれます。

氷の上に立つ少女のイラストでは、集合で作られた三角形がほぼ点対称になるように配置されています。これによって画面が安定します。また2つの要素を見合わせることによって、独自の緊張感を与えています。

意味を対比させて問題を提起する

3つ目の法則は『意味の対比』です。

絵は言葉ではありませんが、描くものや描き方によってある程度意味を想像してもらうことができます。そして意味同士を対比させることで、シュールさを表現したり問題を定期したりすることができます。

少女のイラストでは、夏を表す人工物と溶けた氷の間を泳ぐ生き物が対比されています。ある人は、夏の小物は楽しさを、海の生き物からは温暖化を連想するかもしれません。そして、それらが対比されていることから、『楽しい夏の裏では、温暖化が進んでいる』などといった問題について考えるかもしれません。

要素に複数の意味を持たせる

4つ目の法則は『複数の意味』です。

イラストの表現では、1つのものに複数の意味を持たせることができます。有名な『ルビンの壺』では、1つの絵が向かい合っている人にも壺にも見えてきます。

氷に立つ少女のイラストでは、中央の帯に複数の意味を持たせています。イルカに注目するとそれは暖かい海ですが、氷やシロクマに注目するとそれは北極の海になります。イラストを逆さから見ると、雲の上の青空に見えますが、望遠鏡に注目すると星空になります。

全身を描くことで形式美を伝える

5つ目の法則は『全身か一部か』です。

全身を描くと形式的な美しさを伝えることができる一方、顔を大きく描くとその人物の感情を伝えることができます。

氷に立つ少女のイラストでは、少女の頭から足まで全身が描かれています。これによって感情を伝えることを抑えつつ、形式的な美しさをイラストに込めようとしています。

白黒で世界観を伝える

6つ目の法則は『白黒効果』です。

色の力はとても強力で様々な効果を与えることができます。一方で白黒でイラストを描くことにより、懐かしさや独特な世界観を伝えることができます。

氷の上に立つ少女のイラストは、白黒で描かれています。色の与える華やかさはありませんが、白黒効果によってどこか懐かしく、また独特な雰囲気を表現しています。

知っているといろいろ便利

これまで1枚のイラストから、それに仕込まれた法則を解説してきました。

法則を知っているとイラストをより楽しむことができます。それを使って意図を上手に伝えたり、作者の意図を汲み取ったりすることができるからです。

それでも理屈じゃない

とはいえ、すべての絵描きが法則を意識して描いているわけでもありません。私も常に法則を考えながら描いているわけではありません。ここまでつらつらと理屈を書いておいて、すみません。

それでは、これからも引き続き、楽しくイラストを見たり描いたりしてゆきましょう。

絵描きさんに見てほしいウェブサイト #

今はネットであらゆる情報を入手できます。絵に役立ちそうな資料やアイデアをネットから得ることができます。私もそうしていますし、あなたもきっとそうしておられると思います。

でも情報が多すぎて、圧倒されそうになるのも事実です。そこでこの記事では、私がよく見ているウェブサイトの中から、絵師さんに見てほしいウェブサイトを3つに絞って紹介することにしました。

  • PixiVision
  • いちあっぷ
  • イラスト・マンガ描き方ナビ

また、絵師を目指しておられる方に役立つウェブサイトも3つ紹介します。

  • 人を描くのって楽しいね
  • 洞田創研究室
  • 髪と形

絵師さんに見てほしい3つのウェブサイト

  1. PixiVision

絵師のイラストがたくさん集まるウェブサイトの一つはPixivですが、Pixivは一日に何万作品も投稿されるため、イラストを探すのも一苦労です。

PixiVisionでは、Pixivに投稿された作品の中からイチオシの作品が掲載されます。掲載されるイラストは、面白い作品や魅力的な作品などが満載です。

多様なイラストを見たい絵師さんにオススメのウェブサイトです。

  1. いちあっぷ

いちあっぷでは実践的な解説も豊富な、お絵かき情報を発信しているウェブサイトです。現役の絵師によるハイレベルな解説があるのも特徴です。

クリエイターセレクションでは、注目のクリエイターをピックアップして紹介しています。現時点で170の紹介記事が掲載されています。

向上心のある絵師さんにオススメのウェブサイトです。

  1. イラスト・マンガ描き方ナビ

セルシスが運営するイラスト・マンガ描き方ナビには、具体的な技法に注目した記事がたくさん投稿されています。

例えばMAEDAXの背景萌え!というシリーズでは、漫画の背景を描くためのコツや知識がふんだんに紹介されています。

技術を磨きたい絵師さんにオススメのウェブサイトです。

絵師を目指しておられる方に役立つ3つのサイト

  1. 人を描くのって楽しいね

人物画を上手に描くためには、絵の基礎力を鍛えるのが近道です。それを丁寧に教えてくれるサイトが人を描くのって楽しいねです。

個人が運営されているサイトで、情報も多少古いですが、書籍を超えるほどの詳細な情報量と丁寧な解説があります。

着実に上達したい方にオススメのウェブサイトです。

  1. 洞田創研究室

キャラの顔は描けるのに、いろいろな角度では描けなかったり、胴体を描くのが難しかったりするのはよくあることです。

人物を描く助けになる方法として、簡単な図形で身体を表現する『ステレオメトリー』という手法があります。しかし一般的なステレオメトリーはキャラ絵に向いていません。

洞田創研究室では、キャラ絵を簡単な図形や比率を使って描く新しい手法『広文メソッド』が紹介されています。15の記事を一つずつ読んで、実践していくことをオススメします。

  • 第一回 オリエンテーション
  • 第二回 アタリから始めよう
  • 第三回 素体基礎Ⅰ胴体
  • 第四回 素体基礎Ⅱ脚部
  • 第五回 素体基礎Ⅲ腕部
  • 第六回 素体基礎Ⅳ頭部+α
  • 第七回 応用概論Ⅰ立ち絵
  • 第八回 応用概論Ⅱフカン(俯瞰)
  • 第九回 補講 胴の動き
  • 第十回 応用概論Ⅲ後姿
  • 第十一回 補講 肩まわりのアレコレ
  • 第十二回 応用概論Ⅳアオリ
  • 第十三回 下書き概論Ⅰ裸体
  • 第十四回 下書き概論Ⅱ着衣
  • 第十五回 (最終回)総論

初心者を抜け出したい方にオススメのウェブサイトです。

  1. 髪と形

30秒ドローイングという練習で有名なPOSEMANIACSがオススメなのですが、Flashという拡張機能が時代に合わなくなってきたため、この記事では別のサイトを紹介したいと思います。

髪と形というブログでは、3D人形による様々なポーズが掲載されています。それらをトレス・参考した絵を自由に公開することが許可されています。

絵の練習をしたい方にオススメのウェブサイトです。

まとめ

この記事では絵師さんにオススメの3つのサイトを紹介しました。また絵師になりたい方のために役立つサイトを3つ紹介しました。

絵の上達には、インプットとアウトプットが大事だとよく言われます。ネットには非常に豊富な情報があるので、上手に活用してアイデアや資料をインプットしていけたらいいですね。

とはいえ、何よりの資料はネットではなく自然や身の回りにあると私は思っています。自然の動物や植物、身の回りのものをよくを観察することも忘れずにいたいものです。

絵描きを本気にさせる依頼の仕方 #

あなたは絵師にイラストを依頼したことがありますか。あるという方にとっても、これから依頼するという方にとっても「どうしたら絵師の力を最大限に発揮させられるか」に関するこの記事は役に立つでしょう。

絵師に力を出してもらうには、絵師について知る必要があります。絵師はどんなことを考えているのでしょうか。

絵師が「絵」を一番気にしている

絵師が一番気にしているのは「絵」です。当然のことと思われるかもしれませんが、この点は重要です。絵師にとっては、あなたのプロジェクトよりも絵のほうが大事だからです。

絵師はプロジェクトの動向をあまり気にしていません。そのプロジェクトがどれほど素晴らしいことを成し遂げているのか、どんな社会的な意義があるのか、どんな人のためのものなのか、それほど重視してはいません。

淡白だと感じるでしょうか。この点に関して、どうか絵師を責めないでください。それだけ本気で絵と向き合っているということだからです。この点から学べる要点があります。

絵師とのやり取りは絵に関係したものに留める

絵師とのやり取りは主に絵に関係するものに留めましょう。絵師と必要以上に親しくなろうとしたり、関係のないことをあれこれ言ってはなりません。それは逆効果です。

確かに一般的には酒の席を共にして親睦を深めたり、仕事とは関係のないことを共有することでより親密感が増したりするのかもしれません。

しかし、絵師は基本的にコミュニケーションが苦手です。それは会話が苦手というだけでなく、文章でのやり取りについても同じことが言えます。ですから、苦手なことを無理強いして絵師を困らせないようにしましょう。

最初にテーマを簡潔に伝える

絵の依頼の内容についてはどんなことが言えるでしょうか。テーマを簡潔に伝えることが大切です。

絵師は絵に関係することなら、なんでも知りたいと思っています。一番知りたいのは作品のテーマです。絵師は話を聞きながら、頭の中では絵の構想を練っています。テーマを与えてあげるならば、絵師はいわば絵の骨組みを組み立てることができます。

テーマを伝えるのに多くの言葉はいらないはずです。先ほど述べたように文章が苦手な絵師もいます。簡潔に作品のテーマを伝えてください。

具体的に依頼する

絵師の柔軟性を知ると驚かされるかもしれません。期日が1日でも1週間でもクオリティを調整して仕上げてきます。払える賃金が安くても高くても、それに見合ったイラストをきちんと描くことができます。

そして重要な点ですが、何も指示されないなら、何も指示されないなりの対処法を心得ています。あなたにもターゲットにも受け入れられるよう、可能な限り無難な絵を描いてくることでしょう。そして、たぶんそれはあなたの求める絵ではないはずです。

このように絵師は柔軟に対応できるので、すべてを絵師任せにするのではなく、要望をできるだけはっきり伝えるようにしましょう。その方が絵師に力を発揮してもらえるからです。

次のような事項を依頼に含めてください。

  • 担当者・関わることになる人についての情報
  • 経理部・経理担当の人についての情報
  • 領収証の必要の有無
  • 希望の賃金
  • 支払い方法(銀行振込など)
  • 前払い・後払い・一括・印税
  • 期限・スケジュール
  • 絵のテーマ
  • 絵のサイズ・形式
  • 媒体は紙かネットか
  • 色はカラーかモノクロか
  • デザイナーからの指示
  • 絵に求められるクオリティ
  • 狙うターゲット
  • 絵に加えたい要素

絵師はいろいろな絵を描けるように訓練しています。絵師があなたのプロジェクトにとって最高の絵を描けるように、具体的にはっきりと伝えてください。

スピーディに要望を伝える

絵師はいくつかの不安を抱えながら絵を描きます。その一つがリテイクです。描き直しは本当に大変です。それで予防策を講じます。例えば、何種類かのラフを送るかもしれません。依頼主の要望を引き出すためです。

確かに、絵が形にならないと要望の出しようがないかもしれません。絵師はそれを分かっています。しかし、それでも一度できた絵を作り直すのはとても消耗しますので、絵師はそれを避けたいと思っています。

ですから、要望が分かったなら、すぐに連絡してください。すぐにです。

絵師は要望が来るまで絵を固めないように、なんとか粘っているのです。知っていましたか。絵師は要望を待っています。もし絵師に「もう絵は変えられません」と言われたなら、それは切実に変えようがなくなってしまった、ということなのです。

繰り返します。要望はスピーティに伝えましょう。

信頼して託して見届ける

例えば会社に新人が入社したとしましょう。真面目そうな若者で、少し内気そうに見えます。信頼して仕事を任せるべきでしょうか。心配なので最後まで見届けるべきでしょうか。答えは両方です。

絵師にもいろいろな人がいますが、少なくともあなたとのプロジェクトは初めてです。いわば新人です。ですから、その人にできる仕事を信頼して委ねることと、最後まで見届けることが大切になってきます。

信頼されると、力を発揮しやすくなります。きっとその絵師は、できる最高のものを仕上げてくるでしょう。同時にあなたとの仕事は絵師にとっても初めてなので、最後まで成し遂げられるようにフォローしつつ見届けてください。

絵師のクーポンを活用する

絵師は最初の依頼ではある意味で新人です。あなたが信頼できる人なのか、不安そうにしていても気を悪くしないでください。絵師はあなたが、きちんとお金を払ってくれるか、質問に答えてくれるか、イラストを大切に使ってくれるか、などを心配しているのです。

基準は決して高くありません。誠実な依頼、具体的な要望、丁寧なリテイク、そしてきちんとお金を払うことです。

(絵師が不安になるのは、大変残念なことに、その基準に達していない依頼が少なくないからなのです)

この基準をクリアすると絵師はクーポン券を出してくれます。初耳でしょうか。どんな特典があるのでしょうか。次回の依頼では、よりあなたにマッチした絵を描いてくれるクーポンです。

2回目の依頼では、絵師は最初のときよりあなたを信頼しています。ですから、その分のエネルギーを絵に力を回すことができます。そのようにして次第に絵師は最大限の力を出してくれるようになります。

絵師の出す信頼というクーポンを活用しましょう。

どこを向いているのか

信頼を試される顕著な例がターゲットの問題です。

絵師は依頼主がどこを向いているのかを気にかけます。それは「依頼主を喜ばせればいいのか」それとも「お客さんを喜ばせようとすればいいのか」ということです。それがわからないと、やや依頼主よりの依頼になってしまいます。どういうことでしょうか。

絵師側としては、依頼主が気に入ってくれないと、仕事として成立しません。絵師はどんな絵がどんな客層に響くのか知っていますが、依頼主がその層ではない場合がほとんどです。「いい結果を生み出す作品」を作るか、「当面満足してもらえる作品を作るか」迷うわけです。

絵師に信頼していることが伝わるように努力を続けましょう。

避けるべきポイント

どんなに信頼されようと努力しても、絵師に嫌われてしまっては元も子もありません。絵師を不快にさせてしまう言葉がありますので、いくつか紹介します。

「○○さんみたいな絵柄でお願いします」

この言葉は絵師はがっかりさせます。こう思うからです。「私じゃなくて、その絵師さんに依頼すればいいじゃないか」。そうは思ってほしくないですよね。気をつけましょう。

「徹底的に話し合って決めましょう」

絵師と共同でプロジェクトを練り上げたいと思っても、最初の依頼ではやらないようにしましょう。それは強固な信頼関係があって初めてできることだからです。

「このプロジェクトをどう思いますか?」

絵師に意見を求めないでください。それは主要なメンバーで話し合うべき事柄です。それに絵師はすでに絵で語っています。

「予算の件ですが・・・」

値下げ交渉は辞めましょう。たとえそういう文化圏で育ったとしてもです。もし絵師が提示した額が予算より大きい場合は、別の絵師を探してください。

「いただいたイラストについてですが・・・」

完成してから文句は言わないでください。しかし、どうしても修正してほしい状況は生じるものです。そのような時は、絵師を傷つけないように配慮しつつ、新規の依頼として、再度依頼しましょう。

絵師に嫌われないようにしましょう。

依頼にトラブルはつきものです

問題なくスムーズに終わる依頼はほとんどありません。どんなプロジェクトもなんらかのトラブルに見舞われます。プロジェクトが大掛かりになればなるほどそうなります。

ですから、依頼が失敗に終わるのではないかと心配しないでください。心配してもしなくても、トラブルは発生するのですから。

一緒にトラブルを乗り越えましょう。

お金の話はきちんと、さっさと済ませる

お金が絡んでくると打算的になります。絵師もそうです。この依頼はいくらだから、まるまる分のお仕事をしよう、と力を加減します。収入に見合った労働をしたいと思うのは当たり前のことです。

残念ながらもっともトラブルになりやすいのがお金です。同意した金額で、同意した労働を提供したいのです。

絵師も人間です。お金が大切だと感じているのと同時に、良い仕事をしたいと思っています。お金に対して厳しいとしても、それはがめついからではなく、トラブルに巻き込まれたくないから、ひいては絵の仕事に専念し、良い仕事をしたいからです。

本気になるポイントはそれぞれ

ここまで絵師を本気にさせる依頼の仕方について説明してきました。

ここで本末転倒なことを書いてしまうと、本気になるポイントは人それぞれです。少し怒らせると本気になる人もいますし、期限が迫っていると本気になる人もいます。センチメンタルな気持ちになると創作意欲が掻き立てられる人もいれば、穏やかな気持ちこそ創造の源と考える人もいます。

しかし、どのようなトリガーがあるとしても、その人との信頼関係があって初めてわかることです。そしてその信頼関係を築くためにできることは、とても基本的なことでした。最後に学んだことをまとめましょう。

具体的な依頼をはっきりと丁寧に

具体的な依頼をはっきりと丁寧に伝えましょう。誠実さは好感を与えます。リテイクするときでも親切にしましょう。

そうして築かれる信頼が、絵師の力を引き出します。

絵師はプロジェクトのことをほとんど気にかけません。しかし、絵師の力を最大限に引き出すのは、最高のプロジェクトの最高の依頼なのです。

絵師という呼称に対する考察 #

絵師という呼び方とそれに関係する事柄を考察した記事です。この記事には創作・想像が含まれています。真に受けないように気をつけてください。

絵師という言葉の定義

はじめに絵師という言葉の定義について述べます。

絵師というのはネット上で使われるようになった俗語です。絵を描く人のことを指して用いる言葉で「絵描き」とほぼ同じ意味を持っています。

絵師は敬称です。自称することもありますが、基本的に絵を描く人あるいは投稿する人を指して使う言葉です。

絵師の品詞は、接尾語あるいは代名詞に分類されます。「○○絵師」のように言葉の後ろに付いて意味を付与したり、「絵師さん」のように代名詞として用いられたりします。また、名詞としても機能します。その場合は「絵描き」とほぼ同等の意味を持ちます。

「絵師さん」という呼び方は、敬称に敬称を重ねているために文法的に間違っているように感じるかもしれません。とはいえ「あなた様」という表現があるように、「絵師さん」という言葉は「絵師」という言葉をさらに丁寧にした表現であると捉えることができます。

人気による分類|絵師界のピラミッド

絵師たちを構成する社会を分類する方法の一つに、絵師界のピラミッドがあります。絵師界のピラミッドは主に絵師の人気によって分類されます。

ここで述べる人気とは、主にSNSなどに投稿したイラストの閲覧数が「伸びる」「伸びない」ことを指しています。投稿した作品がたくさん閲覧される人、たくさん「いいね」される人、拡散される人を人気のある人とします。

階層を構成する主な要素は次の三つです。

底辺絵師 普通の絵師 神絵師

これらの要素は人気による分類をしたときにのみ存在する特異なものです。言葉による装飾を取り除いた場合にあるのは、人気があるかないか、それだけの分類です。

底辺絵師|人気のないことを自称する絵師

底辺絵師とは人気の出ない絵師のことを指して用いられる表現です。自分が人気のない絵師であることを自称する際に用いられます。他人を侮辱するための蔑称として用いられる場合もあります。

底辺絵師の基準は曖昧です。人気があるとみなす基準によって、何に属するかが変わってしまうからです。また人気は絵のうまさ以外でも変動するため、人気のなさと絵のうまさは混同すべきではありません。

凡絵師|普通だと思われている絵師

凡絵師とは人気が普通程度の絵師のことです。底辺とみなすほどに人気がない訳ではなく、また神絵師と呼ばれるには至っていない絵師のことを指して使用します。

神絵師|一番ちやほやされる絵師

人気・拡散力・知名度の点で並外れた影響力を持つ絵師です。プロ・アマチュア問わず人気別に分類された絵師の中で一番人気のあるカテゴリーに分類される絵師です。

人気のよる分類の限界 絵師界のピラミッドは閲覧数や拡散力など、ユーザーの評価によって分類しているため、基準が曖昧で不安定です。流行に左右されることもあります。

そのため絵師を分類する新たな方法が必要とされています。

その他の絵師たち

人気による分類は、上位者を特定することが比較的容易です。そこに登場する絵師たちはランカーであったりプロ絵師だったりする場合が少なくありません。

ランカー|ランキング常連の絵師たち ランカーとは、ランキングに名前の乗っている人を指す一般的な言葉です。

絵師を指して用いる場合は、主にイラスト投稿サイトのランキングなどで、頻繁に名前の出るランキング上位の常連者たちのことを指して用います。

プロ絵師|絵を仕事にしている絵師 プロ絵師とは、絵を描くことを仕事にしている絵師のことです。

プロであることと人気は直結していないため、プロ絵師が人気がある絵師とは限らず、また人気がある絵師がプロ絵師とも限りません。

絵描きは自分をどう自称すればいいか

絵師が自称するものではないという認識が広がるにつれ、代わりとなる表現が必要になってきました。それで「絵描き」を名乗ったり、「趣味で絵を描いています」などと肩書きではなく説明文で紹介したりします。

とはいえ、まだ主流と呼べるほどの表現はなく、絵を描く人が自称するための表現が求められています。以下には候補として考えた表現をあげます。

  • 絵描き|最もポピュラーで無難な表現
  • 描き手|「歌い手」から派生
  • 作画者|「実況者」から派生。アニメ業界における作画との区別が必要
  • 絵職人|芸術家と区別した表現
  • アーティスト|ポピュラーだが日本では適用範囲が広いので注意
  • ペインター|「イラストレーター」から派生。同名のソフトウェアあり
  • 絵士|師と士の違いから

この中でいちばん無難なのがやはり「絵描き」でしょう。職人気質を自覚しているなら「絵職人」も悪くないかもしれません。また「描き手」という表現も堅苦しくなくて良いかもしれません。

ネット以外では使わないように

絵師という表現はサブカルチャー界隈ではよく知られた呼び方です。とはいえ、あくまでネット上で生まれた表現です。

将来的には広く使われるようになる可能性はありますが、現状サブカルチャーをあまり知らない人たちに対してや改まった場では使わないようにしましょう。

破壊の芸術 #

芸術家は既存の概念の殻を破ろうと模索します。自分の想像を超える何かを見たいと切望します。そのような場面でしばしば使われる手法の一つが破壊です。この記事では芸術における破壊について考察します。

破壊とは

破壊の辞書的な意味は『壊すこと』です。壊すとは『ものの形を崩すこと』や『正常な働きや良い状態をダメにすること』です。ものの形を崩して表現するのはイラストの世界でもよく使われる技法です。

漫画では絵を崩すことでコミカルさを演出します。アニメではキャラの姿勢を崩すことによって自然さを生み出します。文字を崩すと雅な雰囲気になります。形を崩すことは身近なところで頻繁に行われています。

破壊されたものの美しさ

芸術に破壊を組み込むことにはピンと来なくても、破壊にされたものの美しさについて問われたら、きっとすぐに答えることができるでしょう。完成された城は当然ながら美しいものですが、廃墟となった城にも哀愁という美しさを感じるでしょう。

さて問題です。芸術家が廃墟のような雰囲気を作品に組み込みたい場合、どのようにすればよいでしょうか。破壊されたものを模倣するのは一つの手段です。もう一つの方法は作品を実際に破壊することです。

人為的な破壊と自然による破壊

考察を進めるために破壊を二つに分類してみます。

一つ目は人為的な破壊です。環境破壊はそれにあたります。その先にあるものは荒廃です。人は不要になったものや気に入らないものを破壊します。人の手による破壊は往々にして激しく、強い感情が伴い、荒々しいものです。

二つ目は自然による破壊です。形あるものであればやがて朽ちます。地球は自浄作用を持っているため、荒廃した土地でさえ人の手を離れればいつかは豊かな自然に戻ります。自然による破壊は静かで、深遠で、悠久の時を感じさせます。

破壊の活用例

人の手による破壊は激しいものを連想させるので、ロックやパンクなどを表現したいときに有効に活用することができます。例えばエレキギターは音を歪ませる、いわば音を崩すことによって激しい音を鳴らすことができます。

自然に作品を委ねるという手法は芸術の世界で用いられています。陶器をあえて破壊して自然の美を見出そうとしたり、キャンバスに絵の具を流すことによって自然の美しさを表現しようとしたりします。

概念の破壊

破壊は形ある物体にだけに留まりません。目に見えないものも破壊の対象になります。そのうちの一つが考えです。考え方が捉われてしまうと進めなくなってしまうことがあります。しかし自分の中の常識を破ると違う結果が見えてきます。

これは一種の主義としてあらわれることがあります。今までの表現方法に疑問を持った芸術家たちが印象派やキュビズムやミニマリズムなどといった美術を築き上げてきました。日本の侘び寂びもそのようなもののひとつです。

破壊を駆使する

どのようにして破壊を作品に活かすことができるでしょうか。スマートフォンで自撮りして歪み形のフィルターを加え、自分の顔をリスのように膨らませたことがあるかもしれません。これはいわば写真を破壊して面白いものを生み出している例です。

イラストにノイズを加えてレトロ感を出したり、わざと印刷とスキャンを繰り返して画像を劣化させて独特な雰囲気を作ることもできるでしょう。破壊による芸術はうまくいかないことが多々ありますが、うまくいくと劇的な効果を生み出します。

今まで見たことのないものを

これまで芸術における破壊について考察してきました。もし既存の表現に物足りなさを感じていたり、行き詰まっているように感じるのであれば、破壊という方法を試してみるのはいかがでしょうか。もしかすると、今まで見たことのない新しい表現を見つけることができるかもしれません。

それでは、よい創作を。

絵にすると失われるもの #

言葉にすると失われるものがある。そんなフレーズを一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。この現象は心理学で言語隠蔽と呼ばれています。この記事ではそのことをイラストの分野へと発展させて考察します。

■ 言語隠蔽とは

1990年に行われた顔の記憶に関する論文では、目撃した人の顔について言語化すると、言語化しない場合と比べて記憶の成績が悪くなるとの実験結果が記されています。言語隠蔽に関する論文は他にもあります。

■ 言語隠蔽と創作

言語隠蔽と創作は深い関係があります。一番影響が大きいのは文学でしょう。作家は言葉を書かなければ成り立たちません。しかし、言葉にすると表現したいと思っていたものの一部が失われてしまいます。これは作家にとって大きなジレンマとなりかねません。

イラストも似たような現象が起こります。絵にすることで失われてしまうものがあるのです。これについては実体験を思い出していただいた方が理解しやすいと思います。

■ 小説を読んだ後に見る映画

例えば感動した小説が映画化されたとしましょう。いざ映画を見てみると何か違和感があります。自分の中で思い描いていたものとのギャップに戸惑うかもしれません。

イラストは想像力を刺激するために用いられると説明されることがあります。しかし、イラストには同時に想像力を抑制する力もあるのです。それを顕著に表しているのがホラー映画です。

■ 描かないところに想像力が働く

よく日本のホラー映画は怖いと言われます。その理由として一般的に挙げられるのが、はっきりと描かないことで演出する恐怖です。どんなに恐ろしい怪獣でもしっかりと描かれると想像力は抑制され、描かれている以上には怖いとは感じなくなります。その怪獣はビルや街を破壊する以上のことはしないからです。

しかし、なんだかよくわからないものは、想像力に歯止めが効かないため余計に恐ろしく感じます。これを逆手にとることもできます。怖さを抑制したい場合はあえてきちんと描くことで、作者が意図したものにコントロールすることができます。

■ ないものの扱いは日本人が得意としている

あえて表現しない、言葉にしない、形にしない。こういったことは日本の文化に組み込まれています。ないことに美しさを見出す侘び寂びや、音と音の間に生じる空白で魅了する三味線の演奏、少ない言葉で多彩な表現をする俳句などです。

ここでは、あえて言葉にしなかったり、曖昧に表現したりすることの是非は別にして考えます。この表現しないことによる効果を創作に役立てることはできないでしょうか。この点はデザイナーの方法論にすでに組み込まれています。

■ あえて多くの情報を置かないデザイン

けっきょく、よはく。というデザイン関係の本の帯には『デザインは余白が9割』と大胆な言葉が記されています。その真偽については各自で確かめていただくとして、デザインの分野で余白がかなり重要視されているのは確かです。

今こうして読んでいるウェブページも入念にデザインされたものです。行間やマージンなどの余白を1mmにも満たないほど細部まで調整することがしばしばあります。それが余白が読みやすさに直結するからです。

■ 余白が余裕と強調を生む

イラストにも同じことが言えます。何も描かれていない部分、すなわち余白がイラストに余裕を持たせ、あるいは描いている部分への強調を促します。

■ 省略することで細部を際立たせる

イラストの一部を省略して描く方法があります。これはプロの絵描きたちも頻繁に用いている技法の一つです。これは時短になるだけではなく実際的な効果があります。

分かりやすい例がカメラで撮ったように背景をぼかす手法です。背景をあえてぼかして描くことで焦点が自然と人物に向かい、より印象深いイラストにしています。

■ 描かないことで膨らむイメージ

描かないことで想像力を膨らませる具体例の一つにマンガや映画のキスシーンをあげられるかもしれません。後ろ姿のみを描いたり、あえてシルエットだけにしたり、場合によっては繋いだ手と手、あるいはつま先立ちした足だけを描くかもしれません。もちろんキスそのものは描きません。それでも読者は二人がキスをしたことを疑いません。想像力が働いているからです。

キャラクターの可愛さもかっこ良さも描かないことでより強く演出することができます。ヒロインが照れたときの顔を隠して見えないようにしたり、颯爽と助けに来たヒーローの後ろ姿だけを描いたりするのです。

■ 芸術家は描くと失うものに気づいている

芸術家は描くと失うものに気づいています。最初にざっと描いたものが一番完成に近く、筆を重ねるたびに完成から遠のくような感じがする、という体験を絵描きであれば一度はしたことがあるのではないでしょうか。

私はそのことについて、詳細を描くにつれて当初の完成イメージから外れていくことに気づくから、あるいは線を整えることで情報量が減るからだと考えていました。これはあながち間違ってはいないと思います。

しかし、これはあくまで仮定ですが、言語隠蔽と同様に視認することで自分の中のイメージが固定化して、想像で補えていたものが失われていく、そんなことが頭の中で生じているのかもしれません。そして湧き上がるのは「これじゃない」という感覚です。

■ 完成は存在しない?

そう考えるとイラストは近づいても近づいても辿り着くことができない蜃気楼のように感じられるかもしれません。ある大手ゲームメーカーの重役が「ゲームは完成しないものなんです」と言ったことがあります。もしかするとイラストも最も理想的な意味での完成は存在しないのかもしれません。

創作物には妥協や当初のイメージとの違い、技術的な拙さ、時間的な制限などがどうしても入り込んでしまいます。万能の天才と呼ばれるレオナルド・ダヴィンチでさえ完成させた絵画はたったの十数品しかありません。

■ 不利なようで有利なようで

創作にはどこか不安定な状態で作っているという感覚がずっとあります。濡れた紙に錆びたペンで描くような不自由さです。ゆるんだ弓では的を射られないのと同じように絵を描くのも文章を書くのも物を作るのも皆かなり不利な条件で参加している気がするのです。

人間は創作をする唯一の生き物ですが、創作をするのに不利な生き物でもある、と私は感じています。

ゆえに人間の作るものは感動を生み出すのだと思います。完全無欠で隙のない人間は存在しませんし、仮にいたとして感銘を与えこそすれ共感は覚えにくいでしょう。絵描きは描くと失うものに気付いており、それでも描き続け、ゴールのない道を走り続けます。

■ まとめ

この記事では、描くと失われるもの、描かないことで効果を発揮するものなどについて考察してきました。そして、ここまで書いたことで最初に書きたかったぼんやりとしたイメージはどこかに消えてしまいました。たぶん創作とはそういうものなのでしょう。

それでは、良い創作を。

絵描きと未来のウェブ #

Web3.0と呼ばれる新しいウェブの時代がやってくると考えられています。それは絵描きにどのような影響を及ぼすでしょうか。どんな関係がありますか。この記事ではその点について取り上げます。

イラストに置き換えて考えてみよう

Web3.0とは、簡単に言うと、大きな組織がデータを集めて管理している状態から脱却して、個人がデータの所有権を持つようになるネットの時代のことです。

わかりやすくするために、データをイラストに置き換えて考えてみましょう。Web3.0では、イラストが誰のものかが明確になり、改ざんしたり偽装したりすることはできなくなります。個人情報を大企業が集めることなく、自分で管理することができようになります。

Web3.0が絵描きにどんな影響を与える可能性があるのか、具体例をいくつか挙げたいと思います。

無断転載・自作発言の対策ができる

絵描きを悩ませる問題に無断転載や他者による自作発言があります。Web3.0ではイラストの所有権が明確になるため、それらの問題に対応することができるようになります。

現状ではイラストのデータを丸ごとコピーして『これはわたしが描きました』と発言すると、ある程度は騙すことができてしまいます。そのデータがオリジナルか複製品か判別するものはないからです。

Web3.0ではデータを複製して自作発言する行為が無意味になります。イラストを加工したものを自作したことしようとする行為も無意味になります。イラストの所有権は明確であり、改ざんすることはできないからです。

イラスト関係のサービスが堅牢になる

イラストの所有権が明確になると、不正アクセスや不正コピー行為の発見が容易になります。そのためイラスト投稿サイトなどがより堅牢なものとなり、利用者にとっても、運営者にとってもより便利になります。

現状では、投稿されたイラストが本物か偽物かを機械的に判別にすることは難しいです。よくある解決方法は発見者が運営に報告して、運営がそれに対処するというもので、どうしても人手が必要になります。

サービスが堅牢になれば、利用者はより安心して利用できるようになり、運営者はコストを削減してサービスの向上により多くの資源を使えるようになります。

イラスト依頼のトラブルが軽減する

Web3.0で最初に変革が起きるのは金融機関だと言われています。これまで銀行が担っていたところをブロックチェーンという技術に置き換えることによって、金銭的なやりとりがスムーズになります。

イラストの依頼で金銭的なトラブルが発生することは少なくありません。個人の依頼など支払いの保証がない場合、未払いになってしまうこともありえます。現状でそれを防ぐには、誰かが担保する必要があります。

ブロックチェーンが担保するようになれば、イラスト依頼のトラブルが軽減されます。互いのやりとりが記録されるので、支払いから逃れようとすることは難しくなります。そうなれば、イラスト業界の経済はより健全なものになるでしょう。

イラストの印税が発生する

Web3.0はイラストレーターの働き方を変えます。タイムカードは労働者の働いた時間を記録します。同じようにイラストレーターが費やした時間がブロックチェーンに記録されるようになれば、給料を設定する目安となるでしょう。

イラストの所有権がはっきりするので、所有権の売買や二次創作の可能性も広がるでしょう。デジタル画廊はより価値のあるより堅牢なものとなります。二次創作は、オリジナル作者がより厳密に二次創作についてのガイドラインを設定できるようになるでしょう。

現状では、趣味で描いたイラストがどれほど売り上げに貢献したとしても、それが還元されることはまずありません。しかし、イラストがもたらした恩恵が記録されるようになれば、いくらか還元される仕組みが作られるかもしれません。イラストの印税のようなものです。

イラストレーターだけでなく、お絵かきソフトウェアの開発者にも還元されるようになるかもしれません。現状ではソフトウェアの主な収入源は売り上げがサブスクリプションによる課金ですが、Web3.0では該当するソフトウェアを使って描かれたイラストが利益を生み出すとき、そこから開発者に還元されるわけです。

画像データが変わる

これまで書いた未来が実現されるには、画像データが変わる必要があります。現在の画像データとは全く異なるものです。プロセス全体が暗号化して記録され、それがブロックチェーンによって分散されて保持されます。その新しい画像データは、不正コピーすることも改ざんすることもできません。そして所有権を不正に書き換えることもできません。

これは不思議に思えるかもしれません。現状ではコピーすることはとても容易いからです。正確に表現するなら、書き換えやコピーが不可能になるわけではありません。不正にコピーしたイラストを従来のウェブ(Web1.0やWeb2.0)で公開することは依然として可能です。しかしWeb3.0ではそれができなくなります。

画像データが変わるためには、当然お絵かきソフトウェアが変わる必要があります。とはいえ操作が著しく変わることはないでしょう。

変化に伴う不安に対処する

Web3.0がこれほど大きな変化をもたらすと考えると、かえって不安になるかもしれません。変化に不安はつきものです。慣れ親しんだものが新しいものに変化するのは抵抗があるかもしれません。

不安を感じさせる要素はたくさんあります。今の時代のウェブに満足しているなら尚更です。データが中央集権にならない分、自分できちんとデータを管理しなければなりません。

とはいえ絵描きのやることは基本に変わらないでしょう。またWeb2.0や1.0時代のものがすべて消えるわけではありません。自分に合っているものを選べば良いでしょう。

待っているだけでは実現しない

この記事に挙げた未来は、ブロックチェーンなどによって技術的にできるようになることです。技術的にできたとしても、それが新しいウェブの標準になるとは限りません。絵描きが何も働きかけなければおそらく実現しないでしょう。ウェブを支える人々すべてがイラストに思い入れがあるわけではないからです。

もし新しいウェブに期待することがあるならば、行動をする必要があります。どんな未来になるかは誰にもわかりませんが、変化は確実に起きています。Web3.0で何かが変わります。そして明敏な人たちは、すでに行動を開始していることでしょう。

もし時代に干渉できるとしたら、今がそのタイミングかもしれません。時代の荒波に向かって船を出すよりは、まだ穏やかなうちに出向するほうが良いのではないでしょうか。

私たちにできること

Web3.0で鍵となるのがブロックチェーンという技術です。ブロックチェーンについて学ぶのはよい備えになるでしょう。

絵描きは、絵描き同士でしか仲良くなれないということが少なくありません。技術者とも友好的な関係を築けるような方法を探すのもよいかもしれません。

より積極的に時代を作り上げたいという人もいるかもしれません。協力者を探し、助言者を見つけ、ぜひ果敢にチャレンジしてみてください。

先駆者の取り組みを参考にしましょう。詳しい人から学ぶのです。新しい技術に取り組むときは、どんな人でも手探り状態になります。情報を分け合いましょう。

失敗を恐れないようにしましょう。馬鹿馬鹿しく思えるようなアイデアでも、思い切って発言してみましょう。

まとめ

この記事では、Web3.0が絵描きに与える影響について書きました。

変化は日々着々と進んでおり、今も新しい時代に刻一刻と迫っています。その未来は私たち絵描きにとって心地よいものでしょうか。

私たちは泣いても笑っても絵描きです。

ですから今を、そして未来をこれからも描いていきましょう。

絵描きと炎上三つ巴 #

絵描きは基本的に自由な人々です。自由は一つの正義であり、正しいものです。しかし、自由が唯一の正義という訳ではありません。他の正義との対立で、自由を蝕む争いに巻き込まれてしまうこともあります。今日はそのことについて記事にしたいと思います。

三つの正義:平等・自由・宗教

正義の教室という本は『人間が持つ3種類の「正義の判断基準」、それは「平等、自由、宗教」の3つだ』と述べています。

逆に不平等、不自由、反宗教は悪と言えます。差別は悪いことですし、自由を束縛するのは悪です。道徳や伝統を壊すのも悪いことです。

これらの正義は両立しうるものであり、手を取り合うことが理想です。しかし、残念ながら、互いが互いの悪を攻撃するとき、三つの正義は御しがたい争いに発展してしまうことがあります。

それぞれの正義の定義

平等とは、差別がなく、みな等しく扱われることです。平等という正義のもとでは男女差別や人種差別は許しがたい悪であり、正されるべきことです。偏見や先入観に基づいて人々を扱うのは許しがたい行為です。

自由とは、束縛されることなく、自分の意思で行動できることです。支配されたり強制されたりして自由をなくしてしまうことは悪と言えます。自由という正義にとって圧政や奴隷制度は許しがたい行為です。

宗教とは、広い意味がありますが、ここでは道徳的であることや、伝統を大切にすることを意味します。モラルに反することは悪であり、また自身の信条に反することも悪です。人道に反することは許しがたい行為です。

正義による争いの歴史

それぞれの正義を勝ち取るため、人々は古くから争っています。宗教戦争は双方が正しいとする宗教のため、解放戦争は自分たちの民族の自由を回復するために戦いました。平等を求めるための革命が行われてきました。

そのような争いは世界中で生じました。ヨーロッパから中東、アジア、アメリカに到るまであらゆる国々で争いの歴史が残っています。人々は正義を掲げ、差別をなくすため、圧政から解放されるため、信条を守るために戦いました。

その結果、それぞれに傷跡を残しながら、ある程度の自由や平等や宗教が勝ち取られていきました。それでも世界中では今でも差別や圧政、特定の信条への攻撃が報道されており、戦いは続いています。

ネットで生じる論争

実際の戦争の他にも、正義による論争は頻繁に生じています。特にネット上では生じやすい環境にあります。匿名であるために発言がしやすく、正義の異なる人との接触も発生しやすく、拡散させる機能によって論争が広がりやすいからです。

世界的に有名な争いの一つにゲーマーゲート論争があります。議論の内容は多くありますが、ゲーム内容の女性への扱いについてや、ネットによる叩きはいじめである、といった議論がなされてきました。

ゲームは自由であるべきですが、平等や道徳が脅かされているのであれば、正義と正義がいともたやすく衝突してしまいます。そして、このような争いは日本でも頻繁に生じています。

日本で生じる論争

いくつもの争いがありますが、とりわけ絵描きに関係する論争が、日本のアニメや漫画が差別や暴力を助長しているとする論争でしょう。その内容や有様はゲーマーゲート論争と共通するところが多くあります。

アニメや漫画は創作であり、自由であるべきですが、差別を助長するのであれば平等という正義が黙っておらず、暴力を助長するのであれば道徳という正義が立ち上がるでしょう。どれが正しいかに関わらず、論争はすぐに生じます。

そして日本人が最も大切にする道徳が『和』です。日本では和を乱すことは悪です。そのため論争が和を乱す喧嘩になってしまえば、それはただ見るのも不快な悪ということになります。

炎上の構図

正義による論争は、それぞれが正義として譲れないものを抱えているため、発言は苛烈に、そして終わりの見えない言い争いに発展していくことがあります。このような状況を炎上と表現することがあります。

炎上は騒ぎに乗じて、揚げ足取りや誹謗中傷によって荒らされることもありますが、その多くは発信者の言動への批判から始まります。その発端となる言動は、三つの正義を侵していることが少なくありません。

自由を侵害するならば自由を正義とする人々から、差別をするなら平等を正義とする人々から、道徳を侵すなら道徳を正義とする人々から批判されます。もし三つの正義を同時に侵すようなことがあれば、往々にして大炎上してしまうことでしょう。

絵描きは基本的に自由を求める

絵描きは基本的に自由を求める立場にいます。絵描きは表現をするものであり、表現には自由な発想と自由に発信できる環境が必要だからです。

自由の人々は攻撃の対象になりやすいものです。今は自由という正義が強い時代です。自由に生きようという考え方は人気があり、ネットも言論の自由に重きを置いています。人気があれば発信力も高く、批判されやすくなっていると考えられます。

とはいえ絵描きが強いとは限りません。メンタル面などの弱さを持っていることは少なくありません。そこに正義による論争に巻き込まれてしまうと、大変な痛手を被ってしまうかもしれません。

正義が違うので根本的に分かり合えない

ネットや現実でのいさかいを見るとき、どうして争っているのかわからなかった経験があるのではないでしょうか。そんなに問題にするようなことだろうか、と思ったことでしょう。正しいのはどっちで、結論は分かり切っていると考えたかもしれません。

しかし、正義と正義のぶつかり合いは、どちらも正義であるため、分かり合うことができません。考え方の根本が異なるのです。それはまるで自分には存在しない思考回路のようです。

究極の解決策は、三つの正義が手を取り合いバランスを保つことです。しかしそれは善良な独裁者でもいない限り実現できないでしょう。

絵描きにとっての最悪のシナリオ

誰かが炎上しても、自分と感じるかもしれません。しかし、本当に警戒すべきなのは炎上ではありません。アーティストは生き方すら芸術にできる稀有な人々です。本人さえ折れなければ、また立ち上がることができます。

最悪のシナリオは文化が消えることです。その始まりとなるのが裁判です。どちらかが訴訟を起こすことが発端となって始まり、勝っても負けても傷を負う結果となります。負けてある種の表現や活動を禁止されたら、それで生計を立てている絵描きはどうなってしまうのでしょうか。

法廷による決定は想像以上の影響を及ぼします。判例は続く裁判にとって重要なものとなります。負けた側が改めて勝つのはますます難しくなっていきます。そうなってしまったら、孤独に活動を続けるか、別の分野に移るか選択しなければならなくなります。

正義による争いには近かない

絵描きに限らず、平穏に過ごしたい人々は正義による争いには近づかないようにしましょう。どんな発言をしても、大抵は焼け石に水であり、ただ辛い思いをするだけだからです。

それと同時に、論争が裁判に発展した場合には、覚悟をしましょう。和解の道があるのなら、和解しましょう。その方が傷が浅く済むからです。勝っても負けても痛手を負い、負ければ活動を制限されてしまうかもしれません。

絵描きには絵描きを守る団体がありません。法廷で闘うことに慣れていません。これを危機と捉えるか、自由の産物と捉えるは、各々の自由です。

まとめ

この記事では、正義には平等・自由・宗教の三つの正義があることを書きました。また、それぞれの正義が対立することがあること、そのような争いには近づかないようにとのことを書きました。

この混沌とした時代に、私たちはいったい何を描くのでしょうか。

無断転載について私が思うこと #

無断転載について言及されているのを見聞きすると、私は一つの格言を思い出します。それは古代の格言で、不正に富を集める者をある鳥に例えた言葉です。その鳥は、キジ目キジ科の鳥です。

その格言には二つの解釈があるようです。1つ目はその鳥が不正に卵を集めても育てきれず、結局は無駄にしてしまうという解釈です。2つ目はこの鳥の巣が攻撃を受けやすいという解釈です。

私はその格言の正確な適用を知りません。ですから、ここに書くのはあくまで私の勝手な考えです。私は無断転載について聞くと先ほどの格言を思い出し、こう考えます。

無断転載は無駄である

無断転載は身に余る、ということです。

それは到底、転載する者に管理できるものではありません。著作者の思いも労力も知らないからです。それがどれだけ重みのあるものかを知りません。

後になって、それを手放すでしょう。転載する者は、時間と手間を無駄に浪費しただけなのです。

また、無断転載は強い感情を伴って非難されます。著作者自身がそうすることもありますが、それを見た人が強い言葉を持って非難することもあります。それで、私はこう考えます。

無断転載は非難される

無断転載は非難の的になる、ということです。

なぜそれほどまで非難されるのでしょうか。無断転載は著作者にも視聴者にも強い反発感を与えます。感情に影響を与えるのです。

無断転載をする人は、その行為の意味を知っていてもいなくても、遅かれ早かれ非難されることになります。

無断転載ではなく無許可転載と呼びたい

ところで、私は無断転載という言葉を聞くたびに、この言葉は不正確だと感じます。無断で転載すること自体が悪ではないケースがあるからです。どういったケースがあるでしょうか。

例えば、フリー素材など、著作者が転載を許可している著作物があります。そして無断で転載することを許可している場合もあります。その素材を「無断転載」するのは悪いことではありません。

そこで私は、無断転載ではなく「無許可転載」と呼ぶことにしています。あくまで個人的にそう読んでいるにすぎません。いずれにせよ、無許可で転載するのは良くありません。

クリエイティブ・コモンズという選択肢

逆に自分が正当な著作者で、かつ作品に転載の許可を与えたい場合はどうすればよいでしょうか。例えば、フリー素材を作っていたり、作品を多くの人に利用してほしい場合です。

自分で利用規約を設定することもできますが、すべてを考えるのは大変です。ですから、すでにあるライセンスから選ぶのは有用な選択肢の一つでしょう。そのうち、よく使われているライセンスがクリエイティブ・コモンズです。

クリエイティブ・コモンズでは、設定したい制限の強度によって条件を自由に選択することができます。例えば、CC-BYでは著作者名を明記することを条件に転載を許可します。このライセンスでは改変や商用利用も許可していることになります。CC-BY-NDとすることで、著作者名を明記し、改変しないことを条件に転載を許可することができます。

クリエイティブ・コモンズは、日本のイラスト界隈に広まってはいないように見受けられます。この考え方は最初は受け入れにくいかもしれませんが、ぜひ一つの選択肢として広まってほしいと思っています。

クリエイティブ・コモンズを採用している方にイラストレーターの草壁さんがいます。

無断転載についての正しい教育が必要

無断転載への注意喚起はこれまで幾度もなされてきました。ときには非常に強い調子で語られてきました。それでも無断転載はなくなりません。では、それらの努力は無駄だったのでしょうか。

私はそうは思いません。少なからずルールを知らずに転載してしまう方がいると思っているからです。例えば、子供は盗みは良くないこと知らなければ、平然と盗みをしてしまいます。しかし、きちんと教育されるなら、それが悪いことだとわかり、もう盗まなくなります。

ですから、インターネット時代の守るべきルールとして、たとえそれが実体をもたないデータだったとしても、他の人の著作物を無許可で転載するのは良くないことであると、きちんと教えていくことはこれからも必要であると私は思います。

巧妙な転載「リスナップ」の罠に注意

多くの人は気づいていないかもしれませんが、SNSで利用されるリスナップも転載の一種です。もちろん利用者はそれを承知の上で利用しているはずなので、それ自体が悪いというわけでは決してありません。

しかし、問題になるのは、そのリスナップが他とは違う動作をする場合に、その仕様について正しく理解していないならトラブルが発生しかねないということです。一つの例を考えてみましょう。

あるSNSではリスナップに相当する機能が実装されていました。好きな作品をリスナップすると、フォロワーのタイムラインにその作品が流れていきます。これ自体はなんら問題はありませんでした。しかし、後になって著作者が作品を消したとき、リスナップされたものは消えませんでした。何と作品とリスナップが紐付いていなかったのです。

ここまで極端な仕様のSNSは珍しいかもしれませんが、リスナップが利用者間での同意のもとに行われる一種の転載であるということを念頭に置いておくのは賢明です。またSNSによってリスナップの挙動が異なる可能性があるということも覚えておくと良いでしょう。

正直であることの安心感

無断転載をしない、つまり無許可で他人の著作物を公開しないことは、その人にとって益になります。自分が作った作品だけを公開することに咎められることは何もありません。誰かから非難されることも回避できるでしょう。それは安心感を与えます。

私たちは創作が騒然とした口論ではなく、和やかな安心感を生じさせることを望みます。そしてそれは小さな一歩から始めることができます。自分の正当な創作物だけを公開し、無断転載しないことによってです。

絵描きの居場所を守るには #

たくさんの絵描きが人気を集めているところをみると、絵描きの居場所は将来も安泰だと感じるかもしれません。とはいえ、すべての絵描きが安定した土台を築いているわけではありません。この記事では絵描きが自分や自分たちの居場所を守るための方法について考えます。

絵描きが一番心配していること

意外かもしれませんが絵描きが一番心配していることは無断転載でも誹謗中傷でも晒し上げでもありません。前回の記事『絵にするもので失われるもの』で書いた言語隠蔽でもありません。それよりももっと重大かつ十分に発生する可能性のあるものです。それは絵描きが最も心配しているのは絵描きの文化が失われることです。

文化が失われる可能性は常にある

絵描きは絵描きが不安定な土台の上で活動していることに気づいています。多くの文化は時代とともに廃れてゆき、あるときは唐突に崩れ去ってしまいます。イラストをネットに投稿できる自由が永遠に続くとは限りません。実は危うい土台の上に成り立っている文化を3つほど紹介します。

  1. 二次創作

ネット上では二次創作が非常に盛んです。絵描きであれば誰でも感じたことがあるように人気作品の二次創作は認知されやすく喜んでもらえる場合も多いです。二次創作はもはや日本のカルチャーにとってなくてはならない文化であり、場合によっては権利者から推奨されてさえしています。二次創作がなくなったら経済的にも大きなダメージを与えるでしょう。

  1. センシティブなイラスト

どの国にもセンシティブなイラストは存在します。とはいえ日本の文化の中で生まれたセンシティブなものと、海外の人々がセンシティブだと思うものには多少の違いがあります。例えば日本のイラストは記号的に描かれます。童顔でも成人だと前置きがあればジャパンカルチャーに親しんだ人はそれをすぐに受け入れられますが、絵画的に捉える国の人々にとっては受け入れがたいかもしれません。

  1. ジャパンカルチャー

ジャパンカルチャーと言ってもたくさんのものがありますが、ここではマンガやアニメやゲームなどの娯楽でよく用いられる創作物のことを指して用います。きわどいものから健全なものまで幅広く含みます。ジャパンカルチャーは上記の二つと深い関係にあります。もしどちらかがなくなったらジャパンカルチャーに激動が走るでしょう。

崩壊を引き起こすのは裁判

この手の文化の崩壊を引き起こすものは一言に要約すると裁判です。正確に言うと判例です。裁判が妥当かどうかは問いません。不適当だと

文化の崩壊は正義の名の下に執行される

今ある文化がなくなることは想像もつかないことかもしれません。しかし、文化の崩壊は世界のあらゆるところで生じています。それも多くの場合、悪意を持った人間によって引き起こされるのではありません。ある人々が自身の正義のために戦うが故に文化の崩壊が引き起こされるのです。

絵描きがパンデミックを乗り越えるために #

個人としてこのような事態に何をすべきかはすでによく知っていると思う。不要不急の外出を自粛し、手洗いうがいを徹底することである。当局の指示にしたがうべきである。では絵描きがこのような事態に直面する問題についてはどうでしょうか。この記事で取り上げたいと思います。

ショックで絵が描けなくなったら

絵描きを含む芸術家の多くは感受性が豊かである。故に、大きな事件や事故が起きると、心の受容量がパンクしてしまい、絵が描けなくなってしまうことがある。

それは絵描きとしての経験などはあまり関係ない。偉大な芸術家でも、世界的な大事件が起きた時は、絵が描けなくなったり、音楽が作れなくなったりした。誰にでも起こりうることなのだ。

止まった時計の針を動かそう

ショックを受けると、心の中の時計が止まってしまうという現象が起きる。これは比喩表現だが、辛いことがあっても至って元気で自分では平気だと思っていたけど、ふと親切な優しい言葉をかけられて涙が止まらなくなった、というようなことがある。

今は、いやでも毎日ニュースを見聞きする。時間は進んでも、桜が咲いても、心の時計はショックを受けたあの日のままになる。だから本当は、安全地帯で療養するのが最高なのだが、それはかなわない。

小さなことをしよう。家の中でできること。リモートで会話しよう。和やかなゲームをしよう。

みんなストレスが溜まっているから

自宅勤務、テレワークなどで、自宅にいるから、四六時中顔を合わせることになる。夫婦仲が悪くなっているらしい。仕方のないこと。本来の休日のような清々しい日ならまだしも、プレッシャーの感じる中でずっと一緒にいたら、ストレスになる。

自宅にずっといるのは、外に自由に出回れた時には思いもしないほど、精神的な負担になる。自分も他人も、とても不安を抱いている。自分が思っているより鬱憤が溜まっているかもしれない。すれ違いや諍いが起こっても、こんな状況下でなければ起きなかったかもしれないと、少しだけ、肩の力を抜こう。当然だけど、日常のストレスは、ネットにも表れる。風当たりが強くなるかもしれない。無理するのではなく、体調と上手く付き合おう。もう少しだけ自分も楽になれるかもしれない。

ストレス発散を晴らすために、怒鳴ったり飲んだくれたりするのは逆効果になる。

可能なら少し運動しよう。ラジオ体操のような軽い運動でも、やるとだいぶ気分がすっきりする。少しでも、良いので自然をみよう。自然はいつもインスピレーションを与えてくれる。そしてよく寝よう。

慎重に、でも心配しすぎないで

不安な考えが堂々巡りになってしまうことがある。ネガティブな思考のループに陥ってしまう。正しい危機感を抱くことと、延々と心配ことは全然違う。

きちんと警告に留意して、手洗いうがいを徹底して、人混みを避け、外出を控えているのなら、それで十分なのだ。朝ニュースを見て、新しい情報を取り入れたら、『どうしよう、どうしよう』と不安のループに陥る前に、別のことをしよう。今日を乗り越えることに集中しよう。

自分のために絵を描こう

経験の長い芸術家ほど、誰かのために絵を描くことに慣れている。でも、描けなくなったら、誰かのため、社会のため、家族のため、いろんなことをいったん忘れて、素直な気持ちでペンを走らせてみよう。

誰にも見せることのないノートに描こう。写真にとってネットにあげることは考えずに。ずっと誰かのために描いてきた、自分のために描いたっていい。

少しずつ、少しずつ見えてくるはずだ。

こうして時代は変わるから

世界的な出来事が起きると、それ以前と以後では、人々の見方や考え方が変わる。変化とはそれだけで、人を戸惑わせる。例えば成長期などに声が出にくくなったり、走り辛くなったりした記憶があるかもしれない。

同じように、時代と人々が大きく(意図に反して強制的に)変化するので、描けなくなるのも当たり前なのだ。それは、時代をちゃんと見ている証拠でもある。

ありきたりな言葉しか言えないのがもどかしい。あの日、ただただ無力を感じて言葉が出なかった時とは違う。まだできることがある。

けれども、本音は。

記事を書きながら、また涙がにじむ。無力で、悔しくて、情けなくて。本当は、頑張ろうとか、言える人間じゃない。ひどくちっぽけで惨めな弱虫なんだ。

一緒に、乗り越えたい。

クリエイターはひとりぼっちになりがち #

クリエイターはひとりぼっちだ。例えば、皆で映画を見たとしよう。どこが面白かったとかどこが泣けたとか、そういう話で盛り上がる。ところが生粋のクリエイターは、どう作るのか、どう表現するのかを常に考えている。無意識に。当然、話の輪に入ることができない。

クリエイターはネットの世界では影響力が大きく、たくさんいるように感じる。でも実際にクリエイティブな人間はそう多くないのではないと私は思っている。全くいないわけではないが、全体の割合としては少数派なのかもしれない。

クリエーターはクリエイター同士でやっていく道がある。絵描きは絵を介したコミュニケーションしか知らないわけで、おのずと絵描きとの繋がりが多くなる。音楽家もほかのクリエイターもそうだ。自分の知っている表現の世界で、自然な考えを共有できる人と一緒になっていく。

クリエイターがクリエイターであることを辞めることがある。生粋の表現者にさえ生じる。その多くは受験や就職、あるいは健康のことで仕方なくそうなっていく。クリエイターにとっての自然な表現手段を封じられて、不自由を感じながら社会のレールを進んでいくのである。

クリエイターであることを辞められない人がいる。それ以外できない人とそうであるべきことを熱烈に支援される人だ。クリエイターであることを職にする人もいる。残された人は少なくないとはいえ多くもない。身近にクリエイターがいないこともあるだろう。

私はクリエイターなのだろうか。正直なところ分からない。でも、いつも何かを作ることを考えてしまう。一人じゃなかった頃もあったが、今は皆、創作を辞めてしまって、私はひとりぼっちになった。とても寂しい。

そして、いつしか創作の話をしなくなった。誰かと会っても、自分が絵や音楽が大好きなことを秘密にするようになった。趣味を尋ねられても「散歩」と答えるようにしている。無難な会話を選べるくらいには、話題の選び方が上達した。といっても、相変わらず天気の話ぐらいしかできないが。

ひとりぼっちになると、創作の意義を見失いそうになる。喜んでくれる人がいないからだ。自分のために表現することを強いられる。描きたいから描く。作りたいから作る。そういう原始的な動機に回帰してしまう。日ごとに蓄積された表現の欲求が爆発して、結局またなにかを作り出す日々に。

寂しさと虚無感を感じながら、ふと心に情熱が沸き起こり創作に打ち込み、また空虚を味わい、また何かに刺激された感情を創造力に変換して、再び無力感に打ちのめされ、こうした終わりの見えない創作の円環に陥っていく。

ひとりぼっちでいるのは良くないとは思う。でも、クリエイターはひとりぼっちになりやすいとも痛感している

ひとりぼっちになることを恐れて、なにもしなかったら、本当にひとりぼっちになってしまった。だから私に必要なのは、クリエイターであることを周りに宣言するだけの、小さな勇気なのだろう。

すれ違うクリエイターたち #

よく仕事では『現場と営業は分かり合えない』と言われます。どちらにも真っ当な言い分があるため、関係が難しくなることがあります。クリエイター間でも同様のことが起こり得ます。今日はそのことについて記事にしたいと思います。

作曲者と作詞者の場合

作曲者と作詞者はとても相性の良い組み合わせに見えるかもしれません。仲良く活動できているクリエイターも多数います。しかし、作曲者と作詞者の間でも、すれ違うことはよくあります。

ネット上では、作詞者は多くいて作曲者を必要としており、逆に作曲者は少なく需要があります。仮に歌詞に曲をつけてくれる作曲者が現れたら、引っ張りだこになるでしょう。

この崩れたパワーバランスは、作詞者にも作曲者にも影響を与えています。

作詞者は作曲者に対して強い意見を述べることができず、作曲者は作詞者に対して厳しい言い方をする場合があります。

実際には作曲者も作詞者も同じクリエイターですから、立場は対等なはずです。しかし、残念なことにそうしないクリエイターも存在します。

作詞者が言ってしまいがちな、でも言ってはいけないセリフがあります。それは「歌詞を自由に変えてもいいです」という言葉です。なぜでしょうか。

もしも作曲者が「曲を自由に変えてもいいよ」と言われても、作詞者は困ってしまうでしょう。それと同じです。また、実際に歌詞改変がされたら、たとえ許可していたとしても、どうしてもがっかりしてしまうものです。

作曲者がやってしまいがちな問題行動は、ネット上の強い立場を乱用することです。作詞者に説教したり、何度もリテイクしたり、歌詞を勝手に変えたりすることです。

作曲者も作詞者と同じクリエイターです。作曲するには機材の費用や長い制作時間を必要とするのは事実ですが、作詞者が何か楽をして歌詞を書いているわけでは決してありません。

大切なのは、互いに相手の作ったものを最大限に尊重することです。

優れた作詞者はこう考えます。

『作曲者さんが一生懸命に考えた曲を変えちゃだめだ。だからメロディーを変えないように文字数ぴったりの歌詞を書こう』

優れた作曲者はこう考えます。

『作詞者さんが一生懸命に考えた歌詞を変えちゃだめだ。だから一字一句たりとも削ることなく曲を作ろう』

そして、そうするには信頼関係が不可欠です。

作曲者と絵描きの場合

作曲者と絵描きは相性の良い組み合わせです。というのも、作曲者にとっては曲に絵が付くのが嬉しいし、絵描きにとっては絵に曲が付くのが楽しいからです。

例えばこうなります。

作曲者「イラストのイメージで音楽を作ってみました」 絵描き「わーい!」

あるいはこうなります。

絵描き「音楽のイメージでイラストを描いてみました」 作曲者「やったー!」

このように絵と音楽だけで作品が完結する場合に問題が生じることはほとんどありません。

しかし『動画を作りたい』『CDを作りたい』などの目的がある場合には問題が生じることがあります。

絵描きが作曲者に依頼するのは稀ですから、作曲者が絵描きに依頼するときに問題が発生する可能性があります。

ありがちなケースは作曲者が絵描きに無茶な依頼をすることです。例えば『一枚絵を10枚描いてほしい』といった具合です。

人にもよりますが一枚絵は1週間に1枚描けるか描けないかというぐらいの労力がかかります。人によっては1ヶ月から数ヶ月かかる方もいるでしょう。

しかし、作曲家はその事実を知らないために、無茶な依頼をしてしまうというわけです。

絵描きの側が問題を起こすことはあまりありません。あるとしたら、有償依頼の場合でしょう。どんな商売でもそうですが、価格の折り合いがつかないというのはよくあることです。

お互いがどんな作業や苦労をしているのか知ることは大切です。

作曲者と歌い手の場合

作曲者と歌い手の関係は、とてもうまくいくか、全くうまくいかないかの両極端なケースがあります。

うまくいくケースはお互いがお互いのファンであったり、信頼しあっている場合です。音楽と歌は結びついていますから、うまくいかないはずがありません。

音楽を歌ってもらえてハッピー、好きな曲を歌えてハッピーという感じです。

うまくいかない場合は、お互いを毛嫌いしている場合です。

あらゆる音楽は、ポピュラー音楽であれボカロ曲であれ、流行れば必ずと言っていいほど歌い手が歌います。場合によっては原曲よりも有名な歌い手が歌った方が広く聞かれることさえあります。

それを快く思わない作曲者もいます。特に楽曲の二次利用を許可していない場合は問題になります。その作曲者の言い分は『自分が生み出したわけでもない曲を勝手に歌って人気になるなんておかしい』といった具合です。

当然ながら歌い手には歌い手ならではの苦労や工夫があります。他の人から見ればさらっと歌っているように見えるものでも、それは何度も練習した、そして何度も撮り直した結果です。

どちらかが嫌いになれば、お互いが嫌いになるのは時間の問題です。

一緒に楽しく建設的に活動できる人と行動しましょう。

歌い手とMix師の場合

Mix師とはレコーディング・エンジニアが行うミキシングに由来するクリエイターで、曲の楽器のそれぞれの音質を調整したり、歌を音楽になじませたりします。

Mix師は何をしているのかなかなか理解してもらえないクリエイティブの一つでしょう。無料のアプリを使う方もいますが、音質を調整するプラグインを何十種類も駆使して最良のサウンドを目指す方もいます。

歌い手とMix師はクリエイティブに関する考え方の違いで問題が発生する場合があります。逆に言えば淡々と作業のやりとりをするだけなら、あまり問題は発生しません。

またMix師の力量や効果がわかりにくいことも、問題になりえます。歌と音楽を合成するだけの簡単な作業もミックスと言えばミックスですし、高価なスピーカーでしか聞き取れないレベルでの最高の調整をしたものもミックスです。

歌い手やMix師に限ったことではありませんが、クリエイターはそれぞれクリエイティブに関する考え方や行動原理を持っています。

Mix師は基本的にコンピューターの前に座り、マウスで修正や調整を行ない、側から見ると事務的に作業しているようにも見えます。しかし、Mix師はそれぞれ、その人なりのクリエイティブがあります。

その考え方がうまくかみ合えば良いのですが、衝突してしまうとうまくいかなくなってしまうことがあります。

基本的な解決策は、相手の専門分野に立ち入らないことです。技術的な問題について話し合うのは良いかもしれませんが、考え方にまで踏み込まないことです。

自分の持ち場を忘れず、それに徹することは大切です。

作曲者とMix師の場合

この関係は難しいものがあります。最近の作曲者はミックス作業までこなしてしまう場合が多く、さらにミックスしてもらうことを望まないことがあるからです。

作曲者がMix師と連携する場合は、作曲者が一時的に組み立てた音楽を一旦楽器ごとに分けた状態で、Mix師に渡します。

この段階で作曲者が仮にミックスしていた場合、すでに望む音楽はほとんどできているので、それを崩すのに抵抗を感じるかもしれません。

Mix師は渡されたデータをもとに最良と思える状態に楽曲を調整します。ここでMix師の目指す方向性と作曲者の方向性が違うなら、問題が発生するかもしれません。

作曲者は楽曲のデータを送った時点で、すべてその人に任せるような、相手に対する信頼が大切になってくるでしょう。餅は餅屋という言葉の通り、その手の専門家に委ねるのです。

Mix師は人からは評価されにくい『縁の下の力持ち』です。作曲者の方向性を尊重してはみ出さないようにしつつ、音楽をさらに磨きたいと思うことが大切でしょう。

互いに尊敬しあえるような人と巡り会うのが理想です。

作曲者と動画師の場合

動画師はMix師に次いで理解されにくいクリエイターかもしれません。その苦労もやっていることも、知らない人からすれば謎だらけです。

動画師のやることは多岐に及びます。文字入れから、種々のエフェクト、高度な動きを取り入れたコンポジションなどです。1秒の動きを作るのに、多くの時間を割きます。

ほとんどの曲は4分程度なので、動画師の作業は膨大です。そのことを知らずに依頼してしまうと、問題が発生してしまうかもしれません。

作曲者や歌い手は動画を作りたい場合、基本的に絵描きにイラストを頼んでから、そのイラストを使った動画を作ってもらうために動画師に頼みます。

そのため、作曲者はほとんど必然的にプロデューサー的な立ち位置になり、クリエイターたちの仲介者になります。そこに落とし穴があります。

クリエイターはなにかを創るのが大好きで、得意です。しかし、人をまとめる能力があるかと問われれば、多くのクリエイターは首を横に振るでしょう。それは作曲者も同じです。

当然ながら、動画師も個性やそれぞれ自分のクリエイティブの考え方を持っています。うまく折り合いをつけながらプロジェクトを進めていけるでしょうか。

動画編集は決して安くはない機材とアプリ、そして多くの時間と労力を必要とするので、有償での依頼に限定する場合も少なくありません。作曲の費用も決して安くはないので、費用の折り合いをつけることも大切です。

互いの努力を認めつつ、力を引き出し合える人と出会いたいものです。

絵描きと小説家の場合

小説を書く方は絵描きと同じくナイーブな方が多く、ちょっとした言葉で諍いが発生してしまうことがあります。

絵は比較的見てもらいやすい創作ジャンルです。SNSで何十人かフォロワーがいれば、全く見てもらえないということはあまりないでしょう。そのため絵描きは、作品を見てもらうことに慣れています。

小説は見てもらいにくい創作ジャンルです。全く見てもらえないということもあります。作品を見てもらうことになれていない方は少なくありません。

そのため、絵描きのいつもの感覚で小説を書いている方に接するとトラブルが発生する場合があります。

とはいえ、絵描きと小説を書く方が接点を持つこと自体あまりないでしょう。また、イラストを描いてもらって喜ばない人はほとんどいないでしょう。

私の絵柄では小説のお仕事は来なさそうなので、いっそ自分でお話を書いてもいいかなと思っています。

絵描きとゲームクリエイターの場合

ゲーム開発のクリエイターは規模やジャンルによりますが、シナリオライター、プログラマー、3DCGエンジニア、コンポーザー、サウンドエンジニア、イラストレーターなどがあります。

これが企業であれば、仕事ですから、人間関係もなんとかこなして、いそいそと作業に励むことでしょう。

もし同人ゲームサークルだったらどうでしょうか。必ずと言っていいほどトラブルが発生します。

絵描きは企画者やシナリオライター、プログラマーたちのトラブルを達観しつつ、割り当てられた無理難題に頭を抱えることになるでしょう。

描けども描けども終わらない作業が待っています。

ゲーム制作は年単位での作業になるので、いつものお絵かきとは何もかもが違います。そしてメンバーもそれぞれの生活があるので、徐々にプロジェクトは進まなくなり、やがて頓挫します。

同人ゲームは完成しない前提で、経験を積む過程として参加するとよいでしょう。

絵描きとデザイナーの場合

絵描きがデザイナーと組む場合は、デザイナーの指示に従って、イラストを描くことになります。

例えば『ページのデザインはこんな風にするから、右下の空いているところに可愛い動物のイラストを描いてね』といった具合です。

デザイナーは絵描きと組むことに慣れているので、それほど心配しなくても良いでしょう。

絵描きと絵描きの場合

絵描きは絵描きと仲良くなります。問題が生じることは、あまりないでしょう。絵描きは繊細ですから、どうしても傷つけ合うこともありますが、それは仕方のないことです。

いさかいというほどではないですが、ちょっとした問題が生じるとすれば、絵ではない交流を持ったときでしょう。例えばコメントやチャット・メールなどです。

絵描きも皆個性を持った人間なので、それぞれに違いがあります。黙々と作業をする人、なんでもない世間話を好む人、想像を膨らませて楽しむ人、建設的な会話をしようとする人などです。

多少の相性の良し悪しはあるようなので、ちょっと気まずくなったり、無言になったりしますが、それはそれで悪くないように思います。

絵描きと絵描きの遭遇する別の問題は、SNSのフォロワー数によるマウントです。本人にマウントを取る気が全くなくても、フォロワー数が違いすぎると場違いに思ってしまい、離れてしまいます。そして、フォロワー数が近い人同士が繋がるようになります。

これは絵描きの問題というよりはSNSの問題と言ったほうが正しいでしょう。

基本的に絵描きと絵描きは仲良くなりやすいです。

まとめ

この記事ではクリエイターたちの間で起こりうる問題について考えてきました。

クリエイターたちのクリエイティブに対する考え方はそれぞれ異なるので、すれ違いがあるのは当然のことだと思います。

それらがすべて悪いとは思いません。

ありきたりな言葉ですが、違いがあるからこそ、創作に多様性が生まれ豊かになってゆくのだと思います。

私たちも、それぞれ考え方を尊重しつつ、自分の目指す創作を模索していけたらいいですね。

自分の絵柄に自信が持てないとき #

私たち絵師は絵柄について悩みます。自分の絵柄が見つからず、色々な絵柄を試します。やっと絵柄が見つかったと思ったら、誰かから「その絵柄は一般ウケしない」などと言われて、自信を失ってしまいます。

理想と現実のギャップ

そうなってしまう原因の一つは理想と現実のギャップです。私たちは常にワンランク上の理想を抱いているので、どんなに成長しても現実がそれに追いつくことはありません。その結果、ギャップに落胆してしまいます。

理想があるのは良いことです。それによって上達していけるからです。また、落胆するのは慢心していない証拠でもあります。もし自分の絵が究極の域に達しているなどと思い始めたら、上達できなくなってしまいます。

ですから、バランスの取れた見方が必要です。自分の絵柄がまだ理想に達していないとはいえ、上達しているのは確かです。自分の絵を甘やかさず、かつ厳しすぎないようにしましょう。バランスが大切です。

自分の絵柄が見つからない

ある絵師たちにとっての悩みは、自分の絵柄が見つからないことです。絵柄は絵師たちにとっては個性のようなもので、一種のアイデンティティーとさえ言えるかもしれません。それが見つからないのは絵師たちにとっては大きな問題なのです。

ところで、絵柄とはなんでしょうか。それは曖昧なものです。ある人にとっての絵柄とは「これはあの人の絵だ」とはっきりわかる絵の個性のことです。それは他の絵師たちと自分を区別する固有のもので、自分らしさが表れています。

絵柄が見つからないと絵師がいう場合、その絵師の絵に個性や特徴がないということではありません。そうではなく、他の絵師たちの絵と自分の絵を区別する、はっきりした特徴、ないしは自分らしさが見つけられないということでしょう。

自分らしさとは

自分らしさとは、その人の個性のことであり、他のことならせる固有の特質のことです。絵における自分らしさは、絵そのものの個性を指すことがあり、また絵に滲み出る作者像のことを指すのかもしれません。

自分らしさを一言で表現するのは難しいですが、それにはその人の長所や短所、得意なことや苦手なことが含まれているはずです。絵も同じです。絵の長所や短所、得意なことと苦手なことすべてが、自分らしさを表しています。

ですから、絵の個性を磨くには、まずは自分の絵をよく知る必要があります。自分の絵の長所はなんでしょうか。どんな点が優れているでしょうか。逆に苦手としているところはなんですか。正直に観察してみましょう。

長所を伸ばし短所を克服する

自分の絵柄を見つける出発点は、自分の絵を調べることにありそうです。そうするなら、必ず良い点と悪い点が出てくるでしょう。悪い点を知るのは、決して気持ちの良いことではありませんが、それも含めて個性と考え受け入れましょう。

長所を知るなら、それは絵を描く上での心強い武器になります。線がきれい、色使いが繊細、構図が巧み。それらはまぎれもない長所です。それを生かす方法はありませんか。ぜひ長所を伸ばしましょう。

覚えておきたい点は、短所が欠点とは言い切れないということです。苦手な点を知っているからこそできる表現があります。ですから、短所を見つけても落胆せずに、それをカバーする方法を考えましょう。

長所や短所は、自分ではなかなか気づけないかもしれません。正直に意見を述べてくれる 信頼のできる人がいるなら、その人に相談するのは助けになるでしょう。そうやって判断材料を増やしていくなら、自分の絵についてバランスのとれた見方ができるようになります。

絵柄について批判されたら

残念なことに、皆が建設的な意見を述べてくれるわけではありません。そのうちのひとつが「その絵柄は一般ウケしない」というものかもしれません。もちろん、その人は善意で言ってくれているのでしょう。しかし、この言葉はときに絵師を傷つけてしまう恐れがあります。

そのように言われた時、絵師はどう対処できるでしょうか。まず、傷ついたということを認める必要があります。相手を慮るあまり、自分を省みるのを忘れないようにしましょう 。そして、あくまで絵柄についての意見であり、自分自身を否定されたのではないことも思いに留めましょう。

私たちは相手の心を読めません。傷ついたのがどのような言動であれ、相手がどうしてそんなことをしたのか、完全に理解できる人はいません。ですから、すべてを知らないことを認めましょう。

洞察力は助けになります。その人は絵を描く人ですか。もしかしたらその人自身も絵柄に自信がないので、不安からつい言ってしまったのかもしれません。このように相手の気持ちを汲み取るなら、不必要に不満を募らせるのを避けられるでしょう。

一般ウケする絵柄とは

一般的にもてはやされる絵柄、流行の絵柄は常に変化しています。例えば、昔の日本では浮世絵というものが流行しましたが、今ではほとんど見ることはありません。

大きく変化しているものの一つは目の描き方です。昭和の少女漫画の描き方に、瞳に星を入れるというものがありました。それは漫画家たちに使われましたが、やはり漫画家たちによって違うものに置き換えられてきました。

現在はゴテゴテとした瞳ではなく、シンプルな瞳が目立ちます。しかしそれもまた流行の一つです。輪郭やパーツの描き方、筋肉の描き方に至るまで、いわゆる「一般ウケ」する絵柄は常に変化しています。

そのため、流行ばかり気にするのは時間の浪費になりかねません。もちろん商業的に活動している絵師たちにとっては流行を知るのは重要なことです。しかし、その絵師たちは流行の一歩先を見据えなければなりません。

多くの絵師たちにとって流行の絵柄を気にする理由はほとんどないでしょう。あるとしても、優先度はそれほど高くないはずです。ですから、自分の絵柄に「一般ウケ」を取り入れるかどうか、労力に見合う成果が得られそうか、冷静に判断する必要があります。流行は常に変化してるからです。

それでも悩みながら成長していく

どんなに知識で武装しても、悩みが全くなくなるということはないでしょう。心の繊細な絵師は少なくありません。繊細さは絵に求められる重要な要素です。また、苦悩が創作の原動力になることさえあります。

私たち絵師は、これからも悩みながら絵を描いていくのでしょう。それでも悩みと上手に付き合うなら、それは絵師として成長する糧となるはずです。

心が繊細な絵描きの生き残り戦術 #

心が繊細な絵描きさんは少なくありません。絵を描くことをいわば避難所にしている方もいることでしょう。この記事ではそんな絵描きさんが直面する問題と対策について考察します。

絵描きたちの直面する問題

今はとても絵描きが多い時代です。インターネットやSNSの普及により、個人でも自由に絵を発信できるようになりました。

有名な絵描きは何十万というフォロワーを抱えており、大きな影響力を持っています。そんな絵描きに憧れて、絵を始める方もたくさんいます。

小さな子供がクレヨンを握りしめ、夢中で絵を描くように、絵を描くことは本来とても楽しいことです。

でも、絵描きとして活動していくにつれて、色々な問題に直面します。一つずつ調べていきましょう。

誰も見てくれない

絵を描き始めた人が最初に直面するのが、恐らくこの問題でしょう。絵をネットにアップしても、誰も見てくれないし、ましてや誰も評価してくれないのです。

時間をかけて一生懸命に描いた絵なのに、誰からも評価されないのはつらいものです。それに絵の描き始めは褒められることが原動力になることが少なくありません。

誰も見てくれないと、やる気をなくしてしまい、絵を描くのをやめてしまうかもしれません。どうすれば人に見てもらえるでしょうか。

ヒントは『他の絵描きも見てもらいたいと思っている』というところにあります。みんなも同じ絵描きなのです。

絵描きたち、特に絵を始めたばかりの方のイラストをよく見るようにして、感想などを送ってあげましょう。そこから小さな繋がりが生まれ、自分の絵も見てもらえるようになります。

誰も見てくれないときは、自分から他の人の絵を見るようにしましょう。

自信がなくて絵を消してしまう

自信がない絵描きは少なくありません。自分の絵について誰よりも知っていますから、よくない点が気になってアップした絵を消してしまいます。

不特定多数に見られることが嫌になって消してしまうこともあります。それは仕方のないことです。ネットには色々な人がいますから、そのような気持ちはむしろ健全です。

自信がないときは、しばらくは公開設定を狭めるのが良いかもしれません。使用するサービスによりますが、例えばフォロワーにしか見えないように設定したり、知り合いにしか見えないように設定します。

LINEやメールなど個人的に仲の良い方に見せるのも良いでしょう。

一番良いのは信頼できる家族や友達や知り合いに見せることです。きっと絵の良いところを褒めて、自信をつけてくれるでしょう。

絵を消すことは何も悪いことではありません。無理して公開を続けるよりも、できる範囲で活動するのが大切です。

うまく描けなくてつらい

うまく描けないというのは絵を描く人なら誰もが直面する問題です。毎日のように感じるといっても過言ではないかもしれません。

その原因の一つがスランプかもしれません。スランプについては絵のスランプについて知って欲しいことという記事で詳しく書いたのでよければご一読ください。スランプから脱出するためにいくらか役に立つかもしれません。

またスランプではないにしても、どうにもうまく描けない、言い換えると自分が理想としている絵が描けないことに悩んでしまうことがあります。

描き終わったあとや描いている最中に『何か思っているのと違う』ということに気づいてしまい、その絵に対する熱が冷めてしまいます。

うまく描けない、思ったように描けないと感じるのは良い兆候です。上達のための問題点をいわば直感的に察知しているからです。

ですから、余力があるときは『どうしてうまく描けないのだろうか』『どうすれば良くなるだろうか』と理性的に判断して、改善を図る良い機会になります。

とはいえ、うまく描けないことを気にしすぎると、それがどんどん嫌になり、負のスパイラルに陥ってしまうかもしれません。

この問題に対する解決策はいくつかあるのですが、一見すると正反対の2つの面白いアプローチを紹介します。

1つ目は、絵を描き始めた頃の自分の絵を見ることです。

小学生の頃でも、幼稚園の頃でもかまいません。その頃の絵と比べて今の絵はどうでしょうか。上達しているはずです。

上達していることを自覚すると、『うまく描けない』ではなく『あの頃よりはずっとうまく描けている』と思えるようになり、問題に対処しやすくなります。

2つ目は、絵の偉大な巨匠たちの絵を見ることです。

レオナルド・ダヴィンチでもミケランジェロでもピカソでもゴッホでも構いません。途方もない修練と才能がそこにはあります。

星空や大海原を目にすると自分の問題がちっぽけに見えるようになります。同じように絵の巨匠たちの絵を見ると、自分が『うまく描けない』と思っていることが小さな問題に思えてきます。

うまく描けなくてつらいときは確かにありますが、上手に気持ちを切り替えて乗り越えたいものですね。

絵を描くのが楽しくない

「お絵かきが楽しい」という意見が話題になる一方で「お絵かきが楽しくない」という意見も耳にします。

絵を描くこと自体が楽しいという人もいれば、完成した絵を見ることが楽しみだという人、自分の書いた絵で誰かが喜んでくれることを望む人と、人はそれぞれです。

純粋な芸術でない限り、お絵かきに『作業』はつきものです。線画を丁寧に清書したり、ネットで公開するために色やサイズを調整したりなどです。

そして単調な作業は退屈なものです。単調な作業を楽しめる人は稀です。ですから、本来お絵かきは楽しいものですが「お絵かきが楽しくない」という意見も決して間違ったものではありません。

お絵かきが楽しくないときはどうすればよいでしょうか。

おしゃべりしながら描くのが楽しいという方がいます。誰かと一緒にトークを楽しみつつ、お絵かきしてみるのはいかがでしょうか。

大好きな音楽を聴くとスイッチが入るという方もいます。自分に合った音楽を探してみるのはいかがでしょうか。

それでも楽しくないときは一旦、絵を描くことを中断して、思い切りリフレッシュするのも大事です。自然の美しさや動物の可愛らしさなどを見て創作意欲が掻き立てられ、また描きたいと思うようになるかもしれません。

お絵かきが楽しくないと感じるのは普通のことなので、上手に気持ちをコントロールしてつまらなさを緩和していきましょう。

年下がうますぎてつらい

こんな状況に置かれたどう感じるでしょうか。

いつも自分とつるんで馬鹿なことをしていた友達が、実は頭が良くてテストの点数がすごく良かったことに気づいてしまったとき。

同い年の同僚がいつのまにか自分の上司になってしまい給料もよくて評判も良いことを知ってしまったとき。

悔しいと感じるのではないでしょうか。

自分に近しいと思っていた人が実はそうではなかったと感じると、悔しかったり寂しかったり、とにかくつらく感じるものです。

絵も同じです。同級生やネットの友達、また同い年や年下の絵描きが自分よりずっと絵が上手なことを知ると悔しい気持ちになることがあります。

こういう時どうすれば、気持ちを切り替えることができるでしょうか。

実際にはそれほど差がないことに気づくことは大切です。1歳と2歳では生きた年数は倍違いますが、101歳と102歳では比率に大差はありません。

それと同じように、今は自分よりずっと上手に感じているその人も、時経つうちにそんなに差は大きくなかったことを後になってから気づくものです。

ですから、焦らないようにしましょう。

そして何よりも、人と比べないようにするのは大切です。人と比べてその優劣に喜んだり落胆したりするのではなく、自分自身の成長を見て喜ぶようにしましょう。

年下の絵描きさんがうますぎてつらいときは、焦ることなく冷静になり、人と比べないようにしましょう。

無断転載がつらい

絵描きを特に痛めつけるもの、それは無断転載です。自分が一生懸命に描いたものが、勝手に使われてしまっては本当につらい気持ちになります。

自分が傷つくだけなら、まだ良いとしましょう。しかし無断転載は自分だけでなく自分の絵を好きでいてくれるファンの方の心もかき乱し、関係のない方たちも巻き込んで勘違いをさせてしまいます。

そうかと言って無断転載をやめさせようと断固たる行動を取るほどの勇気は持ち合わせていませんし、それで炎上でもしたら元も子もありません。

ここまで来てしまうと、もう絵を公開するのをやめたくなってしまいますよね。では無断転載は、どのように対処すればよいのでしょうか。

完璧な解決策はありませんが、無断転載は基本的に無視するのが得策です。

しかし、問題なのはそれだけではなく、傷つく気持ちのほうも大事です。

無断転載で傷ついた気持ちをどうすれば癒せるでしょうか。どうすれば傷つくのを軽減できるでしょうか。

無断転載は宣伝と思い込むほかないでしょう。そう彼らは宣伝をしているのです。

しかし、中には自作発言をする人もいます。

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無断転載はつらいです。例えばそれが有償のイラストだったらどうでしょう。もうダメです。

いっそイラストを創作の活性化のために転載や改変を許可するライセンスにしてしまった方が気が楽になるのかもしれませんね。

クリエイティブ・コモンズを検討するのも良いかもしれません。絵描きにはまだまだ浸透していませんが、『著作者名を記載し、改変せず、非商用ですれば転載しても良し(CC BY-NC-SA 4.0)』とするイラストレーターも現れています。

無断転載の話はこれくらいにしましょう・・・(涙)

辛辣なコメントがつらい

絵をアップするなら3つのタイプの人に遭遇することでしょう。絵を好きになってくれる人、絵に無関心な人、絵を嫌う人。

ファンが増えればアンチユーザーも増えます。そういうわけで、ある程度のアンチユーザーがいることはその絵描きが人気な証でもあります。

とはいえ、辛辣なコメントがくれば当然傷つきます。

どう対処すればよいでしょうか。

アンチユーザーは安置、いえ放置するのがよいでしょう。好きに言わせておけば良いのです。荒らしは嵐と考えて、過ぎ去るのを待ちましょう。

そのコメントがどんなものであれ、こちらの行動が誠実なものであれば事実は次第に明らかになります。行動によって実証されるのです。

傷ついた心はどうすればよいでしょうか。

3つの選択肢を用意してみました。

1つ目は、その悔しさをバネにすることです。いつか見返してやると思って、言い返すことなどせずに、創作を続けるのです。

2つ目は、許すことです。その人は学校や職場で嫌なことがあったばかりなのかもしれず、ふとアンチコメを書いてしまっただけかもしれません。洞察力は人を許すように促します。

3つ目は、高い視点を持つことです。1000年以上も生きる木々、40億年も生きてきた地球と比べて、たった80年ぽっちの人の言葉などなんとささやきなのでしょう。それは海に投じられる小石のように、海全体に対して何の影響も与えません。

ぜひ私も海のように広い心を持って・・・

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やっぱり辛辣なコメントはつらいよおおおお!

フォロワーが減るのがつらい

フォロワーが減るのがつらいというのもよく見聞きします。フォロワーが減ると色々とネガティブな想像をしてしまうものです。

絵が好きでフォローしてくれたんじゃなかったのかな。フォロバ目当てだったのかな。何かの発言が気に障ったのかな。自分の絵が嫌だったのかな。

元フォロワーさんはただそのサービスを退会しただけかもしれませんし、間違ってフォローを外しただけかもしれません。

ですから、本当の動機を知らないということを念頭に置いておくと良いかもしれません。

でも・・・

やっぱりフォロワーが減るのはつらいです。

というのも、人は得たものよりも失ったものの方が大きく感じるからです。

例えば、親に「1000円あげる」と言われてお金をもらったとしましょう。その後、親の気が変わって「1000円返して」と言われてお金を返したとしましょう。

もらったお金をそのまま返しただけなので、損失は全くないはずなのですが、なんだか損した気がしませんか。

このように人は得たものよりも失ったものの方が大きく感じる性質があるようです。もっと詳しく知りたい方は社会学のプロスペト理論について調べてみてください。

どんなにフォロワーが増えようとも、フォロワーが減るのを見るとつらく感じるものです。どう対処できるでしょうか。

フォロワー数を見ないようにするのが最善です。

また、そのサービスを使い始めたときはフォロワー数が0だったことを忘れないようにしましょう。増減はあってもフォロワーは確実に増えているのです。

お金が振り込まれない・・・

商業的に絵描きの活動をしている人は、別な問題に直面することがあります。金銭が絡んだ問題です。

報酬が異様に安いとか、商業作家なのに無償で描いてほしいと頼まれるとか色々ありますが、問題の最たる例は依頼を達成したのにお金が振り込まれないことでしょう。

つまり詐欺です。

この問題の難しいところは、依頼人に悪意がない場合もあるということです。例えば依頼人になんらかのトラブルが発生して、お金を払えなくなってしまったとか、手違いが発生してお金が別の人に渡ってしまった場合などです。

金銭が絡んだ問題はややこしく、今まで仲良く活動してきた人でさえ金銭のトラブルが発生すると、関係が損なわれてしまう可能性があります。

どう対処できるでしょうか。

経理部などがある信頼できる会社のみに依頼を限れば、いくぶん安心して活動することができます。とはいえ、新人の商業絵描きにとってクライアントを選ぶことは難しいことです。

依頼人に前払いにしてもらえるなら、そうするのが望ましい場合もあるでしょう。あるいは前金をいただくなど、双方の合意のもとでできるだけ取引が失敗しないように工夫できるかもしれません。

Skebというサービスは役に立つかもしれません。まだBETA版なので正式にリリースされているわけではありませんが、活用しているイラストレーターさんは少なくありません。

金銭のように働きが数値化されると、人は往往にして打算的になって損得の気持ちが働いてしまいます。その気持ちのバランスを取るのはとても難しいことです。

いつの時代も金銭のトラブルは絶えません。

ありきたりなアドバイスしかできませんが、金銭的なやりとりは十分に注意して行ないましょう。

巧妙で有害なアドバイスにご注意を

絵描きを最も苦しめるものが『巧妙で有害なアドバイス』です。これはどういうことでしょうか。

例えば、明らかな非難や嫌がらせならば、それを見分けて退けることができます。

しかし一見すると親切な『巧妙なアドバイス』は退けることが非常に困難です。

この手のアドバイスは、最初は『ここはこうした方がいい』などと親切にアドバイスをしてきます。しかし、どんどんエスカレートしていって、最終的には人格否定をするなどして誹謗中傷にまで発展することさえあります。

これは極めて悪質なものであり、絵描きの心に大きな傷を負わせます。

そして、この問題の厄介な点は、親切なアドバイスと有害なアドバイスの見分けがつかないことです。

どうすればよいのでしょうか。

多くの場合、絵描きに必要なのはアドバイスではなく『励まし』や『褒め言葉』であることを思いに留めておきましょう。

アドバイスは信頼できる人から、例えば美術の先生やイラスト講座の講師、顔見知りで信頼できる絵描きさんなどからで十分です。

本当に絵が描ける人は絵を描く大変さを知っているので、そう軽々とアドバイスを口にしないものです。ですから、絵描きでない方からのアドバイスは参考程度に聞いておくのが無難でしょう。

何よりネットでの交友に一線を引くことはとても大切です。ネットは非常に身近になりなりましたが、それでも気をつけるべきところは何も変わっていません。

巧妙で有害なアドバイスには特に注意しましょう。

アカウントが凍結してつらい

アカウントが凍結すると、とてもつらい思いをします。凍結とは、サービスによって異なるかもしれませんが、そのサービスを一時的に使えなくなることです。

場合によっては、アカウントが削除されることもあります。これは基本的には規約違反した人への措置なのですが、何も悪いことをしていないのに、こうなってしまう可能性もあります。

自分のアカウントが使えなくなると、新しくアカウントを作って1から始めるか、別のサービスに移行する必要があり、精神面でも創作活動の面でも痛手になります。どのように対処できるでしょうか。

3つほど対応策を考えてみました。

1つ目は、最初から複数のアカウントを取得しておくという方法です。一つのサービスにこだわる必要はありません。活動場所をいくつか持つことによって、リスクを分散させることができます。

2つ目は、自分のウェブサイトを持つことです。自分専用のウェブサイトなら自由に使えますし、機能を限定すれば精神的な負担を減らすこともできます。他のサービスが使用停止になっても、ウェブサイトがあるという安心感を得ることができます。

3つ目は、日記を書くことです。言い方を変えると、ネットを使わない活動もしておくということです。といっても、いきなりグッズを販売したり即売会に出たりする必要はありません。いつもの日記に絵を添えるなど簡単なことで構いません。

どんなウェブサービスもいつかは終了します。

活動拠点を増やしすぎて疲弊しないように注意しつつ、1つのサービスに依存しすぎないようにしましょう。

誹謗中傷がつらい

百歩譲って作品に対する非難は良いとしましょう。それぞれ発言の自由がありますし、作品に対する感じ方も人それぞれです。

しかし誹謗中傷はしてはいけないことです。それでも、絵を描き続けるならば、不運にも遭遇してしまう場合があります。

もし、そうなったら、どう対処したらよいでしょうか。

・ ・ ・ ・ ・ ・

誹謗中傷は勘弁してえええええええ(涙)

人格否定とか差別発言とか晒し上げなど、ただの絵描きが対応できる範疇を超えています。

私では無理です。

パンチのある言葉が必要です。

ワンパンマンの原作者である漫画家のONE先生が描いた『モブサイコ100』の6巻から、引用させていただきます。

” 嫌な時はなぁ! 逃げたっていいんだよ! ”

身体的な病気で描けなくなってしまったら

生きていると予想もしていなかったことが起こるものです。それは誰にでも起こり得ます。そのうちどうしても避けられないのが、病気になることです。

軽い風邪のような症状の軽いものだったら深刻にはならないのですが、時には絵が描けなくなるほどの病気になることがあります。身体的な病気、心の病気どちらもあり得ます。

例えば、腰痛というよくある症状でも、描けなくなることがあります。腰は体を支える大事な部位なので、腰が痛むと何をするのも大変になってしまうからです。

まして骨折や関節痛や神経痛や頚椎損傷、ALS障害や筋ジストロフィーなどの難病、様々な疾患が絵を描けなくします。どう対処できるでしょうか。

まだ動かせる部位や痛みの具合、そして医療上の注意によってことなります。お医者さんの指示には従いましょう。その上でできることを探していきます。

詩人であり画家でもある星野富弘さんは口に筆をくわえて文や絵を書いています。障害があっても、舌を使って上手に本を読む方もいれば、足でギターを弾く方もおられます。

手足の自由がなくても、顔の動きでコンピュータを操作できるSmartNavや、目の動きだけで操作ができるTobii Eye Trackerといったデバイスもあります。

健康な人と同じ方法で描く必要はありません。足指で描いてもいいし、口で描いてもいいのです。processingなどのプログラミング言語を使って、プログラムで絵を描くこともできます。

状況を受け入れて、自分にできることを探すのは本当に大変なことですが、どうか諦めないでください。

精神的な病気で描けなくなってしまったら

うつ病やパニック障害や、PTSDといった不安障害などの精神的な病気は珍しいものではありません。アスペルガー症候群や自閉症などの自閉症スペクトラム(発達障害)も広く認知されつつあります。

うつ病などは誰にでもなり得ます。どんなに屈強な人でもそうです。ですから、そのことで引け目を感じる必要はありません。また自閉症スペクトラムは一昔前、まことしやかに言われていたように『親の教育のせい』ではありません。自分を責めなくていいのです。

ゆっくり休養をするのはとても大切です。よく食べて、適度に運動し、よく寝るのです。精神は自分が想像している以上に消耗していることがあります。あまりに頑張りすぎると今度は『燃え尽き』になってしまうかもしれません。

適切な治療を受けましょう。自分の判断に頼るのではなく、お医者さんに相談しましょう。相性の合わないお医者さんは確かにいるかもしれませんが、お医者さんも医療スタッフもプロです。お医者さんを信頼して、薬を指示通りに服用し、しっかりと療養しましょう。

つらい気持ちは信頼できる家族や友人に話しましょう。話すだけでもだいぶ楽になります。電話をするのも良いかもしれません。一人で抱え込まず、誰かを頼りましょう。

もし「死にたい」と何度も強く思ってしまい、その衝動が抑えられないのであれば、それは緊急事態です。どうか、私が以前に書いた生きるための処方箋という記事をご覧になり、一刻も早く行動を起こしてください。

基本的に描くこと、それ自体は精神を安定させます。どんな愚痴でも吐き出せる秘密の日記帳のように、誰にも見せることのない絵を描いてみましょう。書きなぐりでも構いません。もちろん描けないときは、無理して描く必要はありません。

精神的な病気に関する記事は、本にもネット上にも多くありますが、一番大切なのは専門家に診てもらうことです。繰り返します。病院に行って適切な治療を受けましょう。それは恥ずかしいことではありません。それが最初の一歩です。

大きな事件があって描けなくなってしまったら

良い意味でも、悪い意味でも、十数年前には考えられなかったことが次々と起こる時代です。大規模な事件、事故、自然災害が起きています。それは繊細な絵描きの心に大きな影響を及ぼし、絵を描けなくしてしまうことがあります。

とある世界的な画家も、2001年9月11日のアメリカ同時多発事故事件のショックで一時的に絵が描けなくなってしまったそうです。また2011年3月11日に起きた東日本大震災はあまりにも大きな影響を与え、多くのアーティストは歌うこと、描くこと、創ることが困難になりました。

あまりに大きな出来事があると時間が止まったように感じることがあるかもしれません。自分の中の心の時計の針が、その日その時刻で止まってしまうのです。当事者であれば、数ヶ月経っても、あるいは数年経っても消えません。

悲しみを十分に分かち合ったあとは、心が新しいことに向くように行動しましょう。その出来事を話題にしない人と一緒にいることは助けになります。

つらい時こそ、誰かのために助けになろうとすると、満足感が得られ精神が安定します。誰かの助けになる行動をしてみるのはいかがでしょうか。誰かを慰める手紙を書いたり電話をしたりできるかもしれません。

SNSやニュースがストレスの原因になってしまうことがあります。大きな災害が起こるとその報道が毎日のように流れ、気が滅入ってしまうのです。正確な情報を知ることは大切ですが、過剰に情報を取り入れ続けるのはやめ、ストレスになる原因を遮断しましょう。

時間だけが解決してくれる問題もあります。しかし、回復を早めたり、つらさを緩和することは可能です。将来を悲観して絶望するのではなく、今の自分にできること・できていることに目を向け、積極的に活動しましょう。

ゲームして動画を見て遊んで寝よう

絵描きにとっては絵を描くことは食事をするようなものです。

絵を描いてストレスを発散し、絵を描いて心を落ち着け、絵を描いて生計を立て、絵を描いて楽しむのです。

でも、絵描きだってたまには絵を描くのに疲れます。

この記事で紹介したような様々な問題に直面して頭を抱えることがあるからです。

そして、この記事では対策についても考察してきました。

問題はたくさんありますが前もって備えをしておくなら、上手に対応することができます。

とはいえ、一番効果のあるのは、これかもしれません。

遊んで、食べて、たっぷり寝ることです。

今風に言えばこんな感じでしょうか。

ゲームして動画を見て遊んで寝ましょう!

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この記事を書いていたら、色んなことを思い出して泣きそうでした。

記事は以上です。

ではまた!