やさしい腐女子論

彼女は普通の女の子でした。少女漫画のような恋愛を夢に見たり、アニメに出てくる変身ヒロインに憧れたりしていたのです。

しかし、クラスメイトの女子が貸してくれた一冊の本がすべてを変えました。気づいた時にはもう手遅れでした。腐女子になってしまったのです。

腐女子についての認識と実際

腐女子とは男性同士の恋愛作品いわゆるBLを好む女子として某ぺディアで説明されています。しかし腐女子と名乗る人すべてがBLを好んでいるわけではないようです。あくまで全体としての傾向と捉えたほうがよいでしょう。

例えばA子さんはネット上で自分を「腐っている」つまり腐女子だと自称していました。しかし、彼女が読んでいたのは女の子同士の恋愛を描いた作品です。A子さんは腐女子という言葉をよく理解していなかったのでしょうか。

ネットで生まれた言葉が、同じくネット上で別の意味を含むようになったとしても何らおかしくありません。そこで、腐女子と腐女子ではないものを明確にする必要が出てきます。

実のところ腐女子ではないのかもしれない

別の例を考えてみましょう。これは想像です。ある女の子が一度だけBL作品を見てドキドキしてしまいました。その女の子は腐女子と言えるでしょうか。ほとんどの人が「いいえ」と答えるでしょう。

次の例も考えてみてください。BLを読まない女性が、本屋に立ち寄って本を探しています。そこでふと、BLコーナーが目に入ります。彼女は特に嫌悪感を感じません。では、彼女は腐女子と言えるでしょうか。これも「いいえ」でしょう。

これらの例から分かるのは、一度だけBLを見てドキドキしたり、BLを嫌っていないというだけでは腐女子ということにはならないということです。では、腐女子であることをはっきりと表すものはなんでしょうか。考えてみましょう。

常習性と愛着が関係している可能性

再び例を挙げます。ある女性はBL作品をほとんど毎日読んでいます。では彼女は、腐女子でしょうか。これは「はい」でしょう。しかし、例外もあります。仕事などで自分の意思とは関係なく毎日BL作品を査読しなければいけない、などの場合です。

次の場合はどうでしょうか。BLを読むのをやめた女性がいるとします。その女性はBLを読んではいません。でもBLは大好きです。ときどきそのような妄想を楽しむことさえあります。では、彼女は腐女子でしょうか。これもやはり「はい」でしょう。

どんなことが明らかになったでしょうか。腐女子には常習性と愛着、そして自分の意思が関係しているということです。

中毒になっている場合はどうだろう

では、次のような状況を想定してみてください。ある女性はBL作品を読むのを辞めたいと思っています。その女性はBLを読まないように努力しています。でも、ふとした衝動などがきっかけでついついBLを読んでしまいます。では、彼女は腐女子でしょうか。

腐女子という言葉の使い方について、改めて考えてみましょう。腐女子という言葉は、自分に向けて使う言葉でしょうか、それとも他人に向けて使うことばでしょうか。

BL作品を読んでいる人たちに向けて「あの人は腐女子だ」というような使い方をするでしょうか。それとも自分はBL作品が好きだから「私は腐女子だ」というような使い方をするでしょうか。どちらがしっくりきますか。

一般的に腐女子という言葉は自称するものです。自分や自分を含むグループに対して使う言葉です。もし自称していない他人に使う場合があるとしたら、それは腐女子という言葉を蔑称として使おうとするような悪意のあるケースでしょう。

これらのことからどんな結論が出せるでしょうか。たとえBLの中毒になっていたとしても、本人が腐女子を自称していなかったり、また辞めようと努力を続ける人は腐女子ではありません。

狭い意味と広い意味の腐女子

BLを好まない人が腐女子を自称する場合があります。また、恋愛を含まない男性たちの日常を描いた作品を好む人が、自分を腐女子だと自称する場合もあります。

それらはBLを好んでいるわけではないので腐女子とは言えないのでしょうか。ここで考慮しなければいけないことがあります。それは、腐女子という言葉が定義の上になりたっているわけではなく、ネット上で使われ始め、次第に定着していったということです。

BLを好まない腐女子という表現も、これから定着していく可能性があります。ですから、すぐには否定できません。仮にその意味がすでに定着しているとしたら、腐女子という言葉は狭い意味と広い意味の二つに分けられることになります。

狭い意味での腐女子はBLを好む女性を指します。広い意味での腐女子は、BLを好まない人を含め、女性同士の恋愛や男性たちの日常を好む人を好む人を指す、ゆるい意味合いの言葉です。

生まれた時からの腐女子はいない

ところで、腐女子を自称する人はいつから腐女子になるのでしょうか。

生まれた時から腐女子である人はいません。赤ちゃんは恋を知らないからです。恋を知るのはもっと成長してからです。思春期を迎えれるとホルモンが分泌され、異性に対する意識が変化します。

異性を気になり始めるのは自然なことです。身体がそういう造りになっているからです。ですが、自然に腐女子にはなりません。どこかにきっかけがあるはずです。

では、腐女子になるきっかけは一体なんでしょうか。

周りの人やメディアからの影響

腐女子になる原因の一つが、周りの人の影響です。知人にBLを勧られることがあるかもしれません。また友達の何気ない会話からBLに興味を持つこともあるでしょう。

またテレビやインターネットの影響も無視できません。特にネットでは腐女子向けとされる作品が数多く公開されているため、それらの作品を見ることによって強い影響を受けます。

きっかけは周りにあるということです。

あまりの尊さに空気になりたい

腐女子は物語をどのように楽しんでいるのでしょうか。

まず男性の場合を考えてみましょう。男性は一般的に主人公に自分を投影させて楽しみます。主人公と自分は同化します。また物語の中になんらかの形で存在したいと思います。例えば「あの子の抱きしめる、うさぎのぬいぐるみになりたい」などと考えます。

腐女子の場合は違います。自分と主人公を重ねません。自分を投影することなく、物語を自分とは隔離されたものとみなします。自分は居ない方が良いと考え、自分という存在を限りなく薄めます。しかし、一番近くで見たいとも思っています。

彼女たちは空気になりたいとさえ思うのです。

BL作品の何に惹かれるのか|4つの仮説

では、腐女子はBL作品のどこに惹かれているのでしょうか。

考察を述べる前に、注意書きをいくつか列挙します。まず、これを書いている人は腐女子ではありません。また、同性愛行為や同性愛行為を描いた作品を受け入れていません。同性愛者個人や同性愛作品の作者個人を否定しているわけではありません。

それでは、いくつかの仮説を見ていきましょう。

仮説1|愛情の深さに溺れる

一つ目は『双方が示す愛情の深さに溺れ、心酔してしまう』という説です。男性同士なのは愛情の深さを表すための演出です。愛情の深さを描ければ、男性同士である必要はありません。

仮説2|禁じられた恋にときめく

二つ目は『禁じられた恋というシチュエーションにときめく』という説です。王子と村娘、生徒と教師など禁断の恋というシチュエーションさえ用意できれば、男性同士である必要はありません。

仮説3|背徳感が病みつきになる

三つ目は『背徳感が病みつきになる』という説です。例えば、人を撃つのは犯罪ですが、それを仮想的に再現するゲームに病みつきになる人がいます。同じく、多くの国や倫理観で認められていない同性愛を想像することで快感を覚えてしまいます。

仮説4|男の子たちのやり取りに和む

四つ目は『男子たちのやり取りが和む』という説です。この説では恋愛要素のない作品を対象にしています。男子たちの異性を意識しない語らいは純朴なもので、その和気あいあいとしたやり取りに心が惹かれてしまいます。

自然に反する恋愛

訓練された腐女子は、人間以外の恋愛にも快感を感じることができます。それは動物のオス・メスの営みのように自然のものではありません。また道具や機械や概念など、生き物でさえない場合もあります。

腐女子は自然に反する恋愛を好みます。

ひとまとめにできない腐女子

人はそれぞれ異なっています。

仮説に該当する腐女子もいれば、そうでない腐女子もいるでしょう。ですから、腐女子についてひとまとめにして理解しようとするのは、間違っていることなのかもしれません。

それでも無視できないのは、商業界に与えている影響があるからです。

商業的なニーズが見込まれる腐女子

2015年〜2016年にヒットした『おそ松さん』を筆頭に、イケメンのアイドルや武士やヒーローの活躍する作品が続々と登場しています。それらの作品は腐女子向けを公言していなくても、あきらかに腐女子をターゲットにしています。

腐女子は商業的なニーズがあると考えられています。そのため多くの腐女子向けの作品が作られ、人目に触れることになりました。そしてそれは腐女子の増加につながります。

隠す時代から共有する時代へ

これまで腐女子を公言するのはタブーとされてきました。ウェブサイトで腐女子同士がやりとりする場合でもパスワードをつけて限られた人しか入れないようになっていました。

しかし今は、腐女子である公言する人が少なくありません。その中には年若いと思われる人もいます。これは腐女子を叩く風潮が減り、一般的に世間に受け入れられるものとされてきたからだと考えられます。

とはいえ、腐女子を公言するのはあくまで自己防衛のためだという考え方があります。自称することによって未然に攻撃を防ぐのです。腐女子がタブー視されているというのは変わっていないのかもしれません。

それでも地雷が多い世界

腐女子が一般的に受け入れられるようになった今、彼女たちは安泰の地に住めているのでしょうか。分かり合える仲間が増え、共感の語らいに花を咲かせているのでしょうか。

腐女子の趣向は非常に多岐にわたるため、自分が絶対に受け入れられないものいわゆる地雷があちこちに散らばっています。そのため同じ腐女子同士であっても、お互いの地雷を踏まないよう慎重にならざるを得ません。

腐女子を辞めるには

もし腐女子を辞めたいとしたら、どうすればよいでしょうか。

腐女子になったのは周りの影響があったからです。周りの影響を変えることができれば、原因を絶つことができます。できる限り腐女子向けの作品から離れてください。

友達を注意深く選びましょう。その人はあなたと本当に仲良くなりたいのでしょうか、それともBLを布教したいだけでしょうか。

辞めるのにはとても努力が要りますが、あきらめないでください。

取り残される腐女子

娯楽は常に変化しているために、時代に取り残されてしまった腐女子もいます。好きな作品は打ち切られ、皆が忘れていくなかで、少数の人たちがその作品の推しであることを続けています。

娯楽の選択は私たちの自由

娯楽の選択は私たちに与えられた自由のひとつです。他の人がそれを裁くことはできません。もちろん、親には子供に制限を課す権限があります。

ぜひとも賢く選択したいものです。

記事のタイトル「やさしい腐女子論」| 公開した日付()| 更新した日付(2018年8月5日)| 更新した回数(2回)