ゲーム感覚で取り組むとパニック障害も少しは楽になる

パニック障害になってしまうと、多くの行動に制限がかかる。どんな物事に取り組む時にも「怖い」という感情と闘わなければならない。家を出るときも、歩くときも、買い物するときも、車に乗るときもだ。これはとてもしんどい。すべてを投げ出したくなる。こんなのどうやって克服すればいいんだろう。

さて、私は専門家ではないので、気持ち半分ぐらいに読んでいただければと思う。

医学的に言えば、暴露療法と認知行動療法が今のところ有効な治療法らしい。ものすごくざっくりと説明すると、とにかく「怖い」と思うシーンにチャレンジして克服しようというものだ。なんというスパルタだろうか。残念なことにパニック障害を治す手立ては、今のところこれぐらいなのだそうだ。

もちろん、いきなり一番苦手なことをせよ、わけではない。75%ルールというものを心理士の方に教えてもらった。75%できると思えるものにチャレンジして、徐々に行動の幅を広げようというものだ。失敗を少なくしつつ、不安に挑戦していくことができる。不安は完全にはなくならないかもしれないが、小さくすることはできる。

ところで私もパニック障害になってしまい、ここ数年間リハビリを続けている。そして、なんとも重荷なこの忌々しい障害の治療を、今では多少は楽しめるようになってきた。この治療は何かに似ている。少しずつ課題をクリアして、行動できる範囲を広げ、次なる難題を倒していく。そうRPG(ロールプレイングゲーム)だ。

RPGではプレイヤーは主人公になりきり、冒険の旅をしてレベルを上げ、数々の障害を乗り越えていく。プレイヤーは初期レベルでは倒せそうにないボスに最初は惨敗しつつも、レベルを上げたり対策を練ったりして、なんとか次に進む方法を見出す。難所を突破できたときには大きな達成感がある。

パニック障害をRPGに例えるなら、あちこちにいわゆるザコ敵がいて、要所にボスがいて、最終目標地点にラスボスがいる。ザコ敵は日々の小さな不安。人とすれ違うときに感じる焦りとか、不意に訪れる不安感などだ。ザコといえど侮れない。ときには逃げることも戦略だ。

ボスは買い物をすることかもしれない。それは騒々しいBGMの店内を行き来し、レジに並び、ミッションを達成することだ。あるいは美容室に行くことかもしれない。数十分の間、椅子にじっと座っていられるだろうか。ボスに挑むには、それなりのレベルと装備と道具が必要だ。急いで挑んではいけない。

中ボスや大ボスは、電車やバスに乗ることかもしれない。これはひときわ大きい苦戦を強いられる。手に汗握るバトルが心のうちで起きている。もしかすると一人で挑むのは無謀かもしれない。仲間の助けが必要だ。それは家族かもしれないし、信頼できる友人かもしれない。そして、専門家の助けも必要だろう。

これは単なる例え話ではない。実際に体験できる、というより体験せざるを得ない。どうしても不安は生じるし、それを制していかなければならない。そしてそれらを克服していくのは大変でもあり、正直に言おう。それは楽しくもある。こんなに毎日不安と闘い、激闘を繰り広げ、帰宅のたびに安堵感を覚えられるのは、辛さだけではなく、達成感と喜びがある。もちろん平穏な生活を送ることが理想だ。でも、内なる闘いにさえ楽しさを感じられることに、私は気づいた。

ときには全滅して、振り出しに戻るような経験をするかもしれない。私もそうなった。せっかく一度は克服できたのに、ヘマをして、また一からやり直しになった。それも2回もだ。人生というゲームの難易度設定はおかしい。私はライトなゲームが好きなのに。ハードモードはお断りと言っているのに。

とはいえ、途中で投げ出すわけにもいかない。一度リセットしてゲームを最初から楽しむような感覚に近い。それも悪くない。最初から、また遊んでみよう。それも二周目、三周目だから勝手は分かっている。今度の主人公は伊達じゃない。一人で頑張るのはやめた。人に頼ることを学んだ。失敗してもいいことを知った。弱さを知った。たぶん、前よりは慎重に、上手に攻略できる。

いつかラスボスに挑むときが来るのだろう。それは学校へ行くことかもしれないし、会社に行くこと、飛行機に乗ること、車の免許を取ることかもしれない。そいつらは、まったく大したHPの持ち主で、なかなか倒れてはくれない。その装甲の硬さといったらなんなんだ。まあ、こっちはこっちで気長に挑むさ。挑み続けることに意味があるんだから。

隠しボスがいるのかもしれないが、今は考えないでおこう。今は、今できることをしよう。日々の小さな不安と闘い、経験値を積み、仲間の助けを受け入れ、専門家に相談し、日々の成果を記録し、倒せそうな不安に慎重かつ大胆に挑み、負けても諦めず、ときに涙し、小さな前進を喜び、自分を取り巻くストーリーを受け入れ、そして楽しむのだ。

記事のタイトル「ゲーム感覚で取り組むとパニック障害も少しは楽になる」| 公開した日付()| 更新した日付(2018年6月7日)| 更新した回数(12回)