FANBOXで生じるジレンマ

FANBOX(pixivFANBOX)を使用しているうちに、いくつかのジレンマが生じていることに気づきました。その中には対処が難しく感じるものもあります。今日はそれらについて記事にしたいと思います。

ファンのために頑張りすぎる問題

FANBOXのサービスが開始された当初によく見られたのが『良いものを出さなければ』というプレッシャーに関する問題です。ファンにお金を出していただいているのですから、より良いものを出さなくてはならないと感じてしまわけです。それを重荷に感じるクリエイターは少なくありませんでした。

この点に関して、私は意外と大丈夫でした。というのも有料プランを用意するにあたり、運営側がヒントを記載してくれていたからです。いくつか抜粋して引用します。詳しくはFANBOXのクリエイターガイドをご覧ください。

”FANBOXは「クリエイターが自分の好きな創作活動を続けられるようにする」ためのサービスです”

”支援者がまだ集まっていない初期の段階から、FANBOX限定のコンテンツづくりに時間を費やしたり、 過剰に特典を盛り込んだプランをつくってしまうと、 FANBOXを続けることが困難になるだけでなく、本来やりたい創作に打ち込む時間すら奪ってしまう可能性があります”

”必ずしも支援者限定のリッチなコンテンツを提供しなければいけないわけではありません”

このように運営側が注意喚起してくれています。

支援してくださってる方やいつも見てくださっている方に感謝の気持ちを抱きつつも、頑張りすぎないようにしています。

金銭的な支援に慣れない問題

金銭的な支援に慣れずに戸惑ってしまうクリエイターがいます。これははたから見ると不思議かもしれません。クリエイターは支援のリターンを求められているわけではないからです。定期的な支援を受けられるなら、受けた方が良いのではないかと思うかもしれません。

しかし、全てのクリエイターが金銭的な支援を心地よく受け入れられるわけではありません。見返りが要求されているわけではないとはいえ無意識のうちにプレッシャーに感じてしまうのかもしれません。

また人は数値化されると打算的になってしまいがちです。作品をタダで譲ることに違和感を感じない人がいたとしても、おそらく作品を5円で売ることはしたくないでしょう。良くも悪くも、お金はあらゆる反応を引き出します。

作品以上に素敵なものは出せない問題

FANBOXを使用する私たちのほとんどはクリエイターです。クリエイターにとって提出できる最高のものは作品です。そして多くの場合、最高の作品は本やネットなどで公開しています。

ここで一つの問題に直面します。すでに公開している作品以上に素敵なものは出せないという問題です。

一番キラキラした部分はもう出してしまっています。ではFANBOXで何を出せばいいのでしょうか。再び公式のヒントを引用したいと思います。

”pixivやTwitterに公開するコンテンツの裏話や簡単なメイキング、 お礼の気持ちを表すものやファンとのコミュニケーションを主体とした特典も人気です”

ヒントにあるように、制作の裏側を見せたり、ファンとの交流を記事にしたりします。しかし、ここでまた2つのジレンマが発生してしまいます。

裏側を見せたらがっかりされるかも問題

裏話をする際に生じるジレンマが『制作の裏側を見せてがっかりされないだろうか』というものです。多くのファンは「心配することはない。裏側を見るともっと好きになる」と言ってくださると思います。

それでも懸念を覚えてしまうのは、次の2つの理由があるためです。

  • 裏側は作品とのギャップがある
  • 裏側を見せるノウハウがない

作品とその裏側には大きなギャップがあります。優しい世界を描く作者も、厳しい社会に生きています。もし裏側を全部出したら作品のイメージが台無しになってしまうかもしれませんし、見ている方も気が滅入ってしまうことでしょう。

中には裏話系のドキュメンタリーは好きという方もいると思います。しかし、それらのほとんどはプロフェッショナルにより美しく編集されたものです。当然ながら、舞台裏をきれいに見せるためのノウハウをすべてのクリエイターが持っているわけではありません。

これらの理由があるため、私は裏側を記事にするときに、びっくりさせないか、がっかりさせないかと慎重に考えるようにしています。

作品のファン=FANBOXのファンなのか問題

ファンとの交流で生じるジレンマは『作品のファンがFANBOXのファンとは限らない』というものです。

私のFANBOXはブログ形式の記事が多いため、ブログに親しんでいる方や文章が苦にならない方向けのコンテンツが多いです。そのため、主にイラストを見る方、主にFANBOXを見る方、両方見る方など、様々な方がいることでしょう。

そこで私はふと考えます。

『私が意図している読者と、実際に読んでいる読者は違うかもしれない』

ファンに向けた記事を書くときのジレンマはここで発生します。クリエイターはアイドルではないので、ファンとの交流に関するノウハウを持っていません。ファンを信じて書くしかありません。

作品以外の表現がそもそも苦手問題

FANBOXを使っていくには、いくつかのスキルが求められます。文章を書くスキルやサムネイルを作るスキルなどです。熟練のブロガーならいざ知らず、作品表現を最も得意とするクリエイターには少しハードルが高いかもしれません。

もしブログの経験があっても、FANBOXは一般的なブログサービスとは設計も考え方も異なるため、戸惑うかもしれません。ブログではサービス間や検索エンジンからの流入を視野に入れたり、広告などで収益化を考えたりするかもしれません。しかしFANBOXはファンとクリエイターのためのものであり、流入や広告による収益化は考えません。

プロのクリエイターに宣伝は必須とは言われますが、得意か不得意かで言われたら不得意な方が多いのではないのでしょうか。宣伝力のように、FANBOXでは作品をアップする以上のことが求められるので、二の足を踏んでしまう気持ちはよくわかります。

二の次になってしまう問題

現在クリエイターにとって最も重要な宣伝ツールの一つがSNSです。出版社などに直接売り込みに行くのも依然として有効とはいえ、Twitterなどで有名になって依頼を募る、という方法も強力です。そのため趣味としても宣伝ツールとしてもSNSは欠かせない存在となっています。

また作品自体をインターネットにアップしたり、即売会で売ったりすることも主要な活動です。中にはグッズを制作する方もおられることでしょう。そうなると、趣味であれプロであれ、やることは山積みになってしまいます。

そうなると、どうしてもFANBOXが二の次になってしまうというジレンマが生じてしまいます。FANBOXは金銭的な支援が可能なサービスです。それを活用してクリエイターとして活発に活動しているのですから間違っていないはずなのですが、FANBOXの更新が滞ってしまうのはなんとなく気が引けます。

続ける必要があるか問題

そこまでいくと『FANBOXを続ける意味があるのだろうか』と考えるようになってしまいます。これはどんなサービスを利用しているときにも一度は遭遇するジレンマです。SNSであれブログであれオンラインゲームであれ、そう言えます。

必要があるかないかで考えたら、多くのものは必要ではありません。ミニマリズムを唱導するわけではありませんが、人は衣食住があれば生きることができます。なんであれするべき仕事と気晴らしがあれば、それなりに充実した生活を楽しむことができます。

そこまで極端でなくても、例えばネット上での活動を減らしたいと思う場合はどうでしょうか。前述の通り、FANBOXは二の次になりやすく、どうしても活動停止の対象の候補として挙がりやすくなってしまいます。

FANBOXで生じるジレンマのまとめ

ここまで書いてきたFANBOXを使っているうちに感じたジレンマをまとめてみます。

  • ファンのために頑張りすぎる問題
  • 金銭的な支援に慣れない問題
  • 作品以上に素敵なものは出せない問題
  • 裏側を見せたらがっかりされるかも問題
  • 作品のファン=FANBOXのファンなのか問題
  • 作品以外の表現がそもそも苦手問題
  • 二の次になってしまう問題
  • FANBOXを続ける必要があるか問題

これらに共通するのはクリエイターの気持ちに起因する、もしくは関係する問題であるということです。解決策はあるのでしょうか。あります。そんなに深刻に考えなくても良いというのがその答えです。一つ一つ考えていきましょう。

そんなに深刻に考えなくても良い

ファンのために頑張りすぎる問題:ファンはあなたが頑張りすぎる以前からファンです。いつものあなたの、あるいは作品のファンです。いつものあなたでいいのです。

金銭的な支援に慣れない問題:もし慣れないなら金銭的な支援プランを受けなくても大丈夫です。ファンとの間に金銭的なものを置きたくないなら、それでいいのです。

作品以上に素敵なものは出せない問題:それは当たり前のことです。FANBOXには基本的にクリエイターとファンしかいないので、そういう至らない部分も出せる自由な場所と考えましょう。そして、それを実際に見るかどうかは、ファンが自分の責任で決めることです。あなたが気負う必要はありません。

裏側を見せたらがっかりされるかも問題:がっかりするかどうかはファンが感じることであり、クリエイターがコントロールできることではありません。当然ながら、裏側を見せたくないのであれば、見せなくて問題ありません。

作品のファン=FANBOXのファンなのか問題:どんなファンに対してもかけるべき言葉は『応援してくれてありがとう』くらいなものです。感謝の気持ちを忘れなければ、それでよいのです。

作品以外の表現がそもそも苦手問題:むしろそれがファンを分ける試金石になります。苦手なところも頑張るあなたを受け入れてくれるファンを大切にしましょう。

二の次になってしまう問題:いそがしい毎日の中にあってこれは仕方がないことです。それでも時間を作って更新しようとするあなたを、ファンはきっと応援してくれるはずです。

FANBOXを続ける必要があるか問題:やめたくなったらやめてもいい、そのくらいの考えのほうが続けやすいです。気楽にいきましょう。

もしFANBOXを始めるか迷っているなら

もしこの記事を読んでくださっている方の中で、FANBOXを始めるかどうか迷っている方がいるなら、とりあえずやってみることをおすすめします。

FANBOXはPixivのアカウントをもっているのなら簡単に始められます。お金もかかりません。プランを迷っているのなら、とりあえず500円のプランを1つ用意すれば良いでしょう。

心配するのはほどほどに

これまで色々と問題や解決策を書いたものの、やはり私も普通の人間に過ぎず、人並みに悩みます。どこかでFANBOXというものを履き違えていないか、もっと上手く使えるのではないか、などと考えます。

更新が滞ってしまうと申し訳ない気持ちになったり、記事が上手くかけずに悶々としたりします。記事の拙さが気になって恥ずかしくなってしまったり、評価が気になってしまう小心者の自分にがっかりしたりもします。

この記事も自分を励ますために書いたようなものです。文章にすると問題を整理しやすくなりますから。あまり考え過ぎないで気楽にいこうと、自分に言い聞かせているようなものです。そして、こうも言い聞かせます。

心配事は尽きませんが、心配するのはほどほどに。

記事のタイトル「FANBOXで生じるジレンマ」| 公開した日付()| 更新した日付(2019年11月21日)| 更新した回数(0回)