絵の耐久性について

絵には耐久性のようなものがあります。しかし、その話を見聞きすることはあまりありません。私はイラストを描く上で絵の耐久性は重要だと考えています。それで今日は、絵の耐久性について書きたいと思います。

絵の耐久性とは

工業製品には耐荷重(たいかじゅう)が記されているものがあります。耐荷重とは何でしょうか。木材などの部材がどれくらいの重さまで耐えられるかを示した値のことです。耐荷重は机や椅子などの説明でよく見かけます。

絵の耐久性は、耐荷重を絵に適用したようなものです。もちろん実物の絵そのものや額の硬さなどについて述べているのではありません。絵が直面するであろう状況にどれだけ耐えるかを示すものです。

絵が直面する状況

絵は絵描きによって生み出されます。完成した絵は、その後どんな状況に直面するでしょうか。家族や友人に見せるかもしれません。インターネットに公開する作品もあるでしょう。何年も飾られる絵もあります。

絵は基本的に『見る』ものです。食べるものではありません。食べ物だったら、一度食べられたらもうなくなってしまいます。しかし、絵は見てもなくなりません。そのため絵は『見る・見られる』という状況が継続的に続くことになります。

継続するということは、時間の点でも見る人の数といった点でも、絵には量的な何かが加えられていることになります。理知的に管理されることのない万物が無秩序に向かうように、絵は手元を離れた時点から様々な圧力にさらされます。

時の試練

家は何十年も先のことまで考えて作られます。初めは新婚の二人だけかもしれませんが、いずれ家族が増え賑やかになります。たくさんの部屋が必要でしょう。子供が大きくなるにつれて個室を欲しがるかもしれません。やがて子供が独り立ちしても、夫婦が年老いても、その家は住みやすいでしょうか。家はよく考えられて作られています。

時の試練は絵にも同様に訪れます。今日話題になったことでも明日には忘れられてしまう世の中です。溢れるほど描かれる流行の絵もシーズンが過ぎてしまえば、ぴたりと見なくなります。絵には描かれるべき時があり、ひっそりと忘れられるべき時があるのです。

画家が描く絵は、何年もの間、家やホールに飾られることがあります。巨匠にもなれば、美術館に何十年、何百年と保管されます。長い時を経ても、その絵は描かれた当時と同じように魅力的でしょうか。絵は平等に時の試練を受けます。

絵を見る人たち

絵は広まれば広まるほど、自分とは縁の遠い人に見られることになります。自分をよく知っていて絵を褒めてくれる人たちから、助言しようとする人たち、批判する人たち、無関心な人たち、ときには悪用を企てる人たちまで、広まっていきます。

共感できる部分がある絵は評価されやすいものです。自分と感性の近い人は共感してくれるでしょう。とはいえ、感じ方が完全に一致することはありません。人それぞれだからです。その小さなズレが拡散されるにつれて、徐々に大きな隔たりとなります。

自分自身も絵を見ます。自分は絵の欠点をよく知っています。至らなさをよく知っています。他の人は褒めてくれても、自分の絵はあれが足りないと分かっているのです。絵描きは自分の絵に厳しくなりがちです。

耐久性の高い絵

耐久性の高い絵は、時の試練や様々な人から見られても悠然としているような絵のことです。そのような絵は実際に存在するのでしょうか。どうしたら耐久性を高めることができますか。

耐久性の高さを代表するのがロゴマークです。ロゴは長年会社や製品のシンボルとして使われます。そのため考え抜かれ、精錬されたデザインになります。誰が見てもわかりやすく、時代が変わっても親しみやすいものです。

耐久性の高い絵は無駄がありません。死角もありません。それでいて高度な技量は隠されています。隙のように見えるのは高段者のかけるフェイントのようであり、自らの堅牢さによって破綻しないように適度な遊びが残されています。

耐久性を高めるには

工業製品のように作れば絵の耐久性は高まります。よく調査すること、きちんと設計すること、水準を守ること、テストをすることです。

描きたい題材の調査しましょう。想像で素早く描けることがかっこよく思われがちですが、熟練した絵描きは勤勉に調査します。調査は絵に説得力を持たせます。実物を見る、写真を撮る、検索するなど方法はいろいろあります。調査しましょう。

きちんと絵を設計しましょう。絵が想定している役割を果たせるよう設計するのです。それは文章を補い想像力を掻き立てるための絵でしょうか。人目を引き商品を宣伝するための絵でしょうか。役割に応じた設計をしましょう。

絵の品質の水準を決め、それを保ちましょう。例えば書籍用のカラーイラストであれば徹底的に書き込み、ウェブ用であればもう少しラフにする、などという目安を立てます。一定の水準を保っていると、読者は品質に信頼を寄せるようになります。

絵のテストをしましょう。最初の案に固執することなく、いくつかの案を用意し、良いものを選ぶようにします。納得のゆく成果が得られるまでテストを続けます。トライアンドエラーは着実に耐久性を向上させます。

求められる耐久性は状況によって異なる

もし世界が耐久性の至上主義になってしまったら、どうなるでしょうか。あらゆるものが硬い金属やコンクリートで作られるようになってしまうでしょう。割れやすいガラスや陶器は淘汰され、熱に弱いプラスチックは無くなってしまうでしょう。その結果、耐久性を増すためにだけに価格が高騰し、市場は隔たり、経済が破綻してしまうでしょう。

ガラスやプラスチックも大切な役割があるように、耐久性の高い絵だけでなく、低い絵も必要とされています。品質よりスピードが要求される場合も少なくありません。また前述の耐久性を高める方法は、相応の時間と労力を必要とします。

時間も労力も貴重です。耐久性は大切ですが、その配分には気を配りましょう。より多くの人に目がする絵、より長い時間飾られる絵などに絞るとよいかもしれません。

耐久性は品質の一部

この記事では、耐久性や耐荷重のようなものあるということを紹介しました。

耐久性は品質の一部です。ですから、絵の品質を向上させれば耐久性も向上します。

繰り返しになりますが絵は品質や耐久性が全てではありません。あまり難しく考えず、楽しく創作を続けていただければ嬉しいです。

よい創作を。

記事のタイトル「絵の耐久性について」| 公開した日付()| 更新した日付(2019年10月16日)| 更新した回数(0回)