絵のスランプについて知って欲しいこと

理由もないのに絵が描けなくなってしまうときがあります。どんなに頑張っても筆が進みません。私たちはそのような状態のことをスランプと呼びます。

この記事ではスランプを脱出するためにできることを説明します。

スランプ|とても厄介な問題

作家の夢野久作は、手紙の中でスランプの辛さについて切々と述べました。

私たちもスランプに陥ることがあります。これまで順調に絵が描けていたのに、なぜか全然描けなくなってしまうことがあります。練習しているのに上達するどころか、下手になっているような気がすることさえあります。

スランプになってしまうと、私たちは自信を奪われ、絵を描き続ける意欲を失ってしまうかもしれません。スランプはとても厄介な問題です。

ではスランプとは具体的にはどんな状態のことでしょうか。一緒に調べてみましょう。

スランプとは不調のこと

大辞林にはスランプについて『気力や体調が一時的に衰え気味で、仕事の能率や成績が落ちる状態』とあります。

一言でいうと『不調』です。

不調にはさまざまな種類があります。なんとなく調子が振るわない、いまいち上手くいかないという曖昧なものから、技量の上達が停滞している状態や技量が低下しているように感じる状態など多岐に渡ります。

スランプはそれらを含めた広い意味での『不調』ということができるでしょう。とはいえ、スランプを他と区別する考え方もあるので紹介したいと思います。

スランプの分類|低下するスランプと停滞するプラトー

岡本浩一著『スランプ克服の法則』には『鍛錬の量は十分に維持しているのに、技量が伸び悩むどころか低下していく。これがスランプである』と書いてあります。

このように技量の低下と停滞を区別する見方があります。その場合、技量が低下していく方を『スランプ』、停滞する方を『プラトー』と呼びます

プラトーは上達していく中で経験する停滞期のことです。停滞期が訪れるのは自然なことです。例えば同じ内容の練習をしていても上達する時期と停滞している時期があります。鍛錬を続けていれば、いずれ成長する時期に移り変わるので心配はいりません。

ところで、この記事ではスランプとプラトーを区別していません。スランプという言葉が一般的にも広い意味で使われているからです。プラトーもスランプの一種であると考えて論じていきます。

スランプの分類|アスリートが陥るスランプ

スランプという言葉はスポーツ界でよく用いられます。野球選手が球が投げられなくなってしまったなどという話を聞いたことがあるかもしれません。アスリートはそのようなスランプを経験することがあります。

アスリートが陥るスランプは脱出が困難なものがあり、それについてはまだ十分に解明されていないようです。身体と心の不一致が原因だという見方もあれば、メンタルが関係しているという見方もあります。

そのため一般的なスランプとアスリートが陥るスランプを同じものと見るかどうかに関して慎重になる必要があります。

他に羽生善治著の『迷いながら、強くなる』では『スランプ』と『どつぼ』という語を区別して用いています。その中で、スランプとどつぼの関係を風邪と肺炎の例で説明しています。風邪つまりスランプの時に基本的なケアをするのが大切であり、それを怠ると自分の力ではどうしようもできない肺炎つまりどつぼになってしまうというわけです。

スランプの分類|まとめ

ここまで出てきたスランプについてまとめると、次のようになります。

  • 不調
  • 鍛錬しているのに技量が低下すること
  • アスリートが陥るスランプ
  • 自分の力ではどうしようもなくなる前

スランプという言葉は多くの意味で使われているため、スランプを克服するには自分が陥っているスランプがどのようなものなのかを分析してみることが大切です。

とはいえ、その前に最も大切なことをお伝えしたいと思います。

積極的な見方を保とう

スランプは必ず克服することができます。どんな種類のスランプであってもです。「このスランプは絶対によくならない」とは考えないでください。スランプは克服できます。

暗い洞窟の中にいるとしましょう。洞窟は深く、どこまでも続いているように感じます。でも、洞窟は水の侵食によって作られたものです。ですから、上に上に登っていけば必ず出口にたどり着きます。

スランプも同じです。どこまでもスランプが続くように感じます。一筋の光すら見えないかもしれません。しかし、スランプを脱出することは可能です。出口がどこかにあるからです。必ず脱出できると信じましょう。

必ずしも望んだ結果を得られるわけではないかもしれません。洞窟に行き止まりがあるのと同じです。時には引き返すことも必要です。道は曲がりくねっており、登ることもあれば、降りることもあります。

また自分ではどうしようもないこともあるでしょう。助けを待つしか方法はないこともあります。どこかに出口はあります。出口を誰かがこじ開けてくれることもあります。解決策は確かにあるのです。

ですから、積極的な見方を保ちましょう。スランプは必ず克服できると信じるのです。これがスランプを克服する上での第一歩であり、そして一番大切なことです。

心身のケアをしよう|風邪かもしれない

機械が起動しなくなったらどうしますか。詳しい人なら、機械を分解して中をいろいろ探るかもしれません。しかし、問題のある箇所は見当たりません。そこであることに気づきます。電源コードがコンセントにつながっていなかったのです。

スランプだと感じた時は、まず電源を疑ってみましょう。つまり、絵がうまく描けないのは風邪で熱を出しているだけかもしれない、ということです。そんなことはわかりきっていると思うかもしれません。でも、まずはそこを疑うようにしましょう。

手をぎゅっと握ってみましょう。ぐっと力が入れば恐らく大丈夫です。もし、いつもより力が出ない気がしたら、体温計で熱を測りましょう。平熱かもしれません。でも、元気だとわかって損なことは一つもありません。まずは電源を疑いましょう。

心身のケアをしよう|外的要因を突き止める

自転車に乗っている時、ガタガタ、ギイギイと音がしたらどうしますか。乗っているうちに治るだろうと考えて構わず乗り続けますか。そんなことはしないでしょう。そのような音は故障のサインかもしれないからです。

スランプも同じです。スランプには不調が含まれます。それは心身の不調のサインかもしれません。風邪かどうかをまず疑うべきなのは、こういった理由があるからです。

それで、ただ絵が描けないだけなのか、生活全体でなんらかの不調を感じているのかを見極めましょう

ぼーっとしていたり、気分がすぐれなかったりするなら、それは心身の不調かもしれません。それにはどんな要因があるでしょうか。いくつか例をあげてみます。

  • 精神的な病気(うつなど)
  • 気象の変化・潮の満ち引き
  • 体のリズムによる変化
  • ストレス・働きすぎ
  • 睡眠不足・運動不足
  • 栄養失調・脱水症状

もしどれかに当てはまるとしても過度に落ち込まないでください。原因を無くすことはできないとしても改善することはできます。また、症状が長く続く場合は医者に診てもらうようにしましょう。

絵を描く人は繊細な方が少なくないので、心身をケアするのはとても大切なことです。

理性的に行動しよう

緊張して手と足が同じく動いてしまったことはありませんか。右手と右足が同時に出てしまい、歩き方がぎこちなくなってしまいます。いつもは無意識にできていることが、緊張のあまりできなくなってしまっているのです。

もし、そのような緊張している人がいたら、どのようなアドバイスをしてあげられるでしょうか。「そんなに緊張しなくてもいいんだよ」と言ってあげられるかもしれません。でも、それでも緊張している様子なら、どう助言できますか。

きっとこのように言うでしょう。「右足を出すときには左手を出すんだよ。左足を出すときは右手を出すんだ。落ち着いて意識的に行動すれば、いつもの感覚で歩けるようになるよ」。

絵のスランプの場合も同じです。絵に熟達していくと手が自然に動くようになります。しかし、緊張で手と足が同じく動いてしまうように、なにかの原因で手が自然に動かなくなってしまうかもしれません。そのような時は、意識して理性を働かせることが大切です

信頼できる人に相談しよう

スランプは自分で解決できるものもあれば、そうでないものもあります。精神的な病気など自分ではどうしようもない状況からくるスランプであれば特にそう言えます。

ですから、スランプからどうしても抜け出せないときは、信頼できる家族や友人に相談するのは賢明な判断です。その人はいわば、深い穴に落ちた私たちを引き上げる手伝いをしてくれるでしょう。

どの段階で描けなくなるのか特定しよう

手足が同じに動いてしまう人は、手と足を出すタイミングに問題がありました。そしてそのずれを意識的に修正することで正しく歩けるようになりました。

絵も場合も、どの段階で描けなくなるかが分かれば、対処することが容易になります。そこを避けたり、あるいは集中的に練習したりすることができます。

どんな場面が考えられますか。いくつか挙げてみます。

  • 紙を用意することもできない
  • 集中できない
  • 絵のアイデアが出ない
  • 描き始められない
  • 線がきちんと弾けない
  • 物や人の形が分からない
  • 色が決まらない
  • 完成できない
  • 完成した絵に満足できない

どの段階であっても、理性を働かせるなら状況を改善していくことができます。一つずつ具体的な例を見ていきましょう。

紙を用意することもできない|ハードルを下げよう

夏休みの予定をしっかりと立てたのに、予定通りにできなかった経験はありませんか。予定をこなせたのは最初の数日だけで、溜まりに溜まった宿題はいつも最終日にやる羽目になります。適切なスケジュールを立てるのはとても難しいものです。

同じように、絵を描くのもハードルを高く設定しすぎることがあり得ます。例えば『プロような絵を描こう』という目標のせいで、気負いすぎて絵が描けなくなってしまうかもしれません。紙を用意するのも嫌になってしまうでしょう。

ハードルを下げましょう。どのくらいハードルを下げるべきですか。目安となるのが『75%ルール』と呼ばれる方法です。これは75%できると思うことを行うということです。この75%は人によって大きくことなります。

目標を立てることは学校で学びますが、ハードルを立てる方法は恐らく学びません。それで、どのようにハードルを下げるのか例を見てみたいと思います。

どのようにハードルを下げるか

最初の目標が『プロのような絵を描く』だとしましょう。このハードルをどのように下げることができますか。「いきなりプロのようには描けない」と考えて次のようにハードルを下げるかもしれません。

プロのような絵を描く→上手な絵を描く

これでハードルは十分に下がりましたか。いいえ。まだ気負いがあるようです。もっと思い切ってハードルを下げてみましょう。こんな風にするかもしれません。

上手な絵を描く→そこそこの絵を描く

よい感じにハードルが下がりました。ですが、まだそれでもまだ下げる必要があるかもしれません。ハードルを下げるのに慣れていきましょう。このようにできるかもしれません。

そこそこの絵を描く→ふつうの絵を描く

もうこれ以上は下げられないと思うかもしれません。しかし、まだまだ序の口です。ハードルを下げるのはこれからが本番なのです。もっとハードルを下げてみましょう。

ふつうの絵を描く→どうでもいい絵を描く

素晴らしくハードルが下がりました。でも、あえて言いましょう。まだです。どうでもいい絵すら描くのはハードルが高いのです。絵を描くというのはそれだけで、ハードルが高いのです。ですから、こうしましょう。

どうでもいい絵を描く→立方体を描く

立方体なら5分もあれば描けそうですね。これならきっと心の負担も減るでしょう。ですが、これもまだハードルが高い絵です。立体を描くのはそれだけで絵を描く力を求められるからです。こうすることを提案します。

立方体を描く→円を描く

円を描くのは良いことです。なぜなら、円を描くだけで滑らかな筆の動かし方を練習できるからです。しかし、それは高度なことでもあります。円を描こうと思ってもなかなか始められないかもしれません。このようにするのはいかがでしょうか。

円を描く→線を描く

線は絵の大事な構成要素の一つです。これを描けるというのは素晴らしいことです。線が書ければ絵も描けます。すばらしいことです。そして、そんなことを自分に要求してしまって負担になりませんか。こうしましょう。

線を描く→一本だけ線を引く

エレガントな目標です。紙に一本だけ線を引くだけです。なんと素晴らしいアートなのでしょう。一本の線が芸術を紡ぎ出すのです。そう思うと、これはなかなかハードルが高いように感じませんか。こう変更しましょう。

一本だけ線を引く→画用紙と鉛筆を机の上に用意する

ここまでハードルを下げられたら、ハードルを下げるのにかなり熟達しています。自信を持って挑むことができるでしょう。しかし、上には上がいることも忘れてはなりません。こんな方法があります。

画用紙と鉛筆を机の上に用意する→画用紙を机の上に用意する

なんということでしょう。絵を描くための鉛筆すら登場しなくなってしまいました。絵を描くには筆が必要という固定観念を覆した、なんと素晴らしい答えなのでしょう。しかし、まだハードルを下げる余地があります。こんな風にできます。

画用紙を机の上に用意する→紙を用意する

紙を用意することは誰にでもできます。絵を描くための専用紙でなくてもよいのです。コピー用紙でもチラシの裏でもなんでも構いません。この目標は誰にでも達成できます。

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気づきましたか?

この段階で、すでに『紙を用意することもできない』というスランプを克服しています!

紙を用意するのもできないような、とても大きく見えるスランプだとしても、こうやってハードルを下げて下げて下げることによって、最初の一歩を踏み出すことができるのです。

ですから、ハードルを下げましょう。それが秘訣です。

集中できない|聴くもの・見るもの・時間帯を変えてみよう

ハードルを下げることに熟達した方なら、この段階もあっという間に克服することができます。なぜでしょうか。集中するというハードルを下げることができるからです。

たしかに1時間集中するのは難しいかもしれません。でも30分ならどうでしょうか。10分なら、いえ5分ならどうでしょうか。

きっとあなたは、もっと上手にハードルを下げることができるでしょう。挑戦のハードルを限りなく低くして、最終的に「5秒」集中すれば良いと判断するかもしれません。そこからスタートすれば良いのです。

では、具体的な集中法について調べてみましょう。

どのように集中するか

どのように集中するかについては、すでに多くの方法が溢れています。個人の経験則から広く知られたメソッドに至るまで数多くの集中法が存在しています。

ここでは、聴くもの・見るもの・時間の3つの観点から効率的に集中する方法を考えたいと思います。

最初は聴くものです。音楽を聴くのが集中につながるという人もいれば、何も聞かないほうが集中できるという人もいます。雨音や川のせせらぎ、ホワイトノイズなどが良いという人もいます。うるさいと集中できるという方は滅多にいないと思いますが、ある程度生活音があった方が落ち着くという方もいます。

聴くものについて、色々試してみましょう。

  • クラシック音楽・好きな音楽を聴く
  • 雨音・川のせせらぎを聴く
  • ホワイトノイズ・ブラウンノイズを聴く
  • 自宅・カフェ・図書館に行く
  • 耳栓などで音を遮断する

次は見るものです。視界に入るものとも言えるかもしれません。集中するのに役立つとされる色があります。集中しやすい照明は人それぞれです。整理整頓している方が集中できる人もいれば、ある程度散らかっている方が落ち着く人もいます。使う画材によっても集中の度合いが変わります。

見るものについて、色々試してみましょう。

  • 紙の色を変えてみる(青・緑・ベージュなど)
  • 照明を変えてみる(蛍光灯・白熱球・LED球など)
  • 机の上や部屋を自分好みにする
  • 画面の色や明るさを変えてみる

最後に時間についてです。集中力は人それぞれ違います。15分を境に集中力が低下するという見解があります。25分間集中して5分休憩するのを繰り返すポモドーロ・テクニックという方法があります。朝の時間帯が集中しやすいという人もいれば、夜の時間帯の方が集中できるという人もいます。

時間について、自分に合ったものを探してみましょう。

  • 集中できる時間を探ってみる
  • 15分、20分、あるいは25分ごとに休憩を入れる
  • 朝、昼、夜とさまざまな時間帯を試してみる

集中する方法についてはすでに多くの方法が溢れています。色々な方法を試してみて、自分に合ったものを使うようにしましょう。

絵のアイデアが出ない|アイデアに頼らないで描こう

優れた芸術家でさえ自分の創造力が枯渇してしまったと感じることがあります。アイデアが出ないのは絵描きにとってとても辛いことです。これから絵を描いていけるかどうか不安になるかもしれません。

でも安心してください。アイデアを出す方法はすでに数多くあります。具体的な方法については以前に書いたアイデアを生むための4つの方法という記事で紹介しているので、詳細についてはそちらをご覧ください。

その記事の要点をまとめると、次のようになります。

・メモを取ることを習慣にする
・すでにあるアイデア発想法を試す
・情報を上手にインプットする
・カメラなどの道具を活用する

アイデアに頼らずに描ける方法を用意しておくこともおすすめです。例えば、自分が持っているものを一つずつ描く、散歩して気になったものを思い出して描く、百科事典に載っているものを順番に描くなどです。

以上のような方法を上手に活用するなら、アイデアが枯渇しないように十分に貯めるができるでしょう。

描き始められない|よい習慣を身につけよう

描き始めはとても勇気がいります。真っ白な紙に筆を運ぶのを躊躇してしまいます。絵の具を使っている方なら、絵の具をチューブから絞り出し、筆に絵の具をつけてキャンバスに触れるのをためらうかもしれません。

スランプでなくても勇気がいるのですから、スランプに陥ってしまったらなおさら勇気が求められます。どうすれば描き始められないという葛藤を克服できるでしょうか。

基本的には先に挙げた『ハードルを下げる』方法が役に立ちます。上手な絵を描こうとはせず、とりあえず一本だけ線を引いてみようとか、絵の具をペタッと塗ってみようという風にハードルを上手に下げましょう。

そして、自分が描き始められる方法を習慣にするするのはよい方法です。習慣にすれば、スランプに陥る可能性を低めることができるからです。

最初に描くものを決めておきましょう。線を引く、箱を描く、青色の絵の具で塗るなど、簡単なものがよいです。迷わないように、何を・どこに・どのように・どのくらい描くのか具体的に決めて決めておきましょう。例えば次のようにします。

  • 絵を描くときは最初に四角形を描く
  • 四角形の大きさは縦横3センチ
  • 紙の左上から描き始める
  • 横に3つずつ、縦に4つ、合計12の四角形を描く
  • 四角形はそれぞれ5秒程度で描く
  • 時間は合計で1分で描く
  • 1枚の紙を使い切る

もちろん、もっと簡単でも構いません。もう少し複雑にしても大丈夫です。大切なのは、最初に何を描くかを習慣化することです。そして習慣通り描いてしまえば『描き始められない』という葛藤を乗り越えたことになり、他の絵を描くのがもっと容易になります。

もしかすると描き始められない原因は画材にあるかもしれません。白紙に描くのが緊張する場合は、色のついた紙を使うと改善できるかもしれません。また、横罫の入ったノートや方眼紙を使うのも選択肢に入れてみましょう。

線がきちんと弾けない|ネガティブ思考の悪循環を断とう

疲れている時やアルコールを摂取したときは、綺麗な線が描けません。そういう時に絵を描いても上手に描くことはできず、結局投げ出してしまうでしょう。疲れはじきに癒えますし、アルコールも次第に抜けていきます。

しかし、スランプに陥ってしまい、どうしても気に入った線が描けないときはどうしたらよいでしょうか。何度描いてもうまくいきません。これまで考えてきたようにハードルを下げることや習慣の力を活用することは強力な武器になります。

では、他によい方法はありますか。あります。ネガティブ思考の悪循環に陥らないようにすることが大切です。

感情は身体や考えと結びついています。例えば、不安を感じたとき、冷や汗をかくかもしれません。そして、もう逃げ出したいと考えるかもしれません。これは自然な反応ですが、ある程度コントロールすることができます。

手がこわばっているなら、マッサージをすることができます。逃げ出したいという考えがあっても「きっと大丈夫」と言い聞かせることができます。湧き出る感情はコントロールできなくても、身体や考えをコントロールすることで悪循環を断ち切ることができるのです。

その方法を線を描くことに応用してみましょう。きちんとした線が描けないという自分の思いが湧いてくるのは仕方のないことです。でも、もしそのまま「この線はダメだ」と考え続けては状況は悪くなる一方です。むしろ、こう考えましょう。「この線はよい線だ。今しか描けない特別な線だ。この線があるからこそ次の作品が生まれるんだ」。

ペンの持ち方や姿勢、体のこわばりなどを再確認するのもよい方法です。ストレッチなどをして体をリラックスさせましょう。シャワーを浴びたり湯船に浸かったりするのもよい方法です。休息をとりましょう。

物や人の形が分からない|理論を学ぼう

ある漢字が急に正しいか分からなくなったことはありませんか。覚えているし書けるのですが、見れば見るほどこれで正しいのかが不安になってきます。このような現象のことをゲシュタルト崩壊といいます。

そのように漢字が分からなくなったときはどうしますか。きっと漢和辞典を開いて調べることでしょう。どのような編やつくりで構成されているのか、改めて学びなおすことによって、たとえその漢字が正しいのか分からなくなっても、自信を持って正しい漢字を書くことができるようになります。

では、スランプに陥って物や人の形がこれで正しいのか分からなくなったらどうすればよいでしょうか。漢字の場合と同じように、絵の理論や物の形を改めて学び直すことで、自信を取り戻すことができます。

具体的には次のようなことができます。

  • 美術書を読む
  • 美術解剖学を学ぶ
  • ステレオメトリーを学ぶ
  • デザインや構図のルールを学ぶ

理論を知って使うことができれば、スランプに陥った時期にも正しい形を描くことができるので、スランプを脱出するまで絵を描くのをやめることなく継続することが容易になります。

色が決まらない|テーマを決めよう

人間は1000万以上の色を見分けることができると言われています。また人間は色を覚えるのが生来苦手です。ですから、そのような膨大な色の中から一つを選んで、適切に配色するのは至難の技といえます。

スランプになって色を決められなくなってしまったら、どうすればいいでしょうか。やはりこれも、物や人の形を決めるときと同じように、理論を学ぶのが効果的です。感覚で選んでいたところを理論で選べるようになれば、不安を軽減することができます。

色の理論を実践する上で大切なのが、テーマを決めることです。例えば『かわいい女の子らしさ』とか『クールなスポーツカーの色』とかテーマを設定するなら、理論を活用して色を決定することができるようになります。

テーマとは主題のことです。例えばこの記事のテーマは『絵のスランプから抜け出す方法』です。テーマをどのように決定することができますか。まず、目標を決めることが大切です。それから作品を見る人を想定します。自分がその絵で達成したいことを考えるなら、自ずとテーマが決まってきます。

テーマは毎回変える必要はありません。たとえば『制服を着たかわいい女の子』を毎回描いても良いですし、『仲の良い家族』をテーマに描き続けることもできます。

テーマが決まったら、色の理論を用いて使う色を決めてゆきます。この記事では色の理論について詳しくは触れませんが、効果的な配色のルールや色数について学ぶなら、色を選ぶ負担を大きく減らすことができます。

色を決める場面でも、これまで考えたハードルを下げることや、習慣の力を活用すること、ネガティブな悪循環を避けることは役に立ちます。例えば、ハードルを下げて『今日は1色だけ使うようにしよう』とか、『最初は必ず青色を使う』などといった習慣を設けることができるかもしれません。

完成できない|現実的な見方をしよう

やり遂げることの大切さは誰もが認めるでしょう。楽器を学んでも上達する前にやめてしまうかもしれません。外国語の習得はどうでしょうか。また、ダイエットを成し遂げるのはとても困難です。数多くのハウツー本やセミナーがあるにもかかわらず、多くの人は途中で挫折してしまいます。

一枚のイラストについても同様です。これを完成させるのはなんと大変な作業なのでしょう。1枚の絵を描きあげるのに10時間から20時間かけることもあるでしょう。しかも、スランプでなかなか完成までこぎつけられないなら、どれほど焦れったい思いをすることでしょう。

私たちは絵に対して、そして自分自身に対して現実的な見方をする必要があります。急ぐあまり自分にできることを考慮せずに大作に着手しないようにしましょう。そうしてしまうなら、大抵は挫折してしまい、また自信を失ってしまうかもしれないからです。

絵について現実的な見方をしましょう。それなりの絵を描くのは時間がかかります。イラストレーターの描く絵は数時間、10時間、20時間などかなりの時間をかけて描かれています。画家の描く絵は数ヶ月に及ぶことさえあります。それに加え、さまざまな経験や技法を用いて描きます。また多くの場合、描くものについて調査したり、画材を調達したりなど、手間とお金がかかっています。時間と技術とお金が必要なのです。

自分について現実的な見方をしましょう。学校や職場に通っているなら、1日のうちに絵に充てられる時間はそれほど多くないでしょう。絵の技術を習得するのは一朝一夕にはいきません。また絵のためにかけられるお金にも限度があります。それに加え、スランプに陥っているときには、心身に負担をかけないように注意する必要があります。

そのようなことを考慮すると、謙虚な気持ちで絵を描き始めることができます。慣れないうちは大作に挑まないようにするかもしれません。ハードルを下げ、75%ルールを適用して、自分の完成させられる題材を選ぶことができます。

途中でやめるべきときもあるでしょう。あまりに自分に負担になってしまうようなときや、自分にあまり益にならないと分かったときなどです。

また、妥協して完成したことにすることも時には必要です。絵を描く時間を決めるのも良い方法です。たとえば1時間などの時間制限を設けて、描けても描けなくても、その作品は完成したものとみなします。

現実的な見方をして、自分にできることを積み重ねていくなら、いずれ大作を作れるようになってゆくでしょう。スランプから脱出したときにも、そのときの経験がきっと役に立つはずです。

完成した絵に満足できない|失敗を受け入れよう

習字の授業を覚えていますか。書道はわずかな時間で作品が出来上がる珍しい芸術です。優れた書家はわずかな時間で非常に美しい字を紡ぎます。しかし、私たちの多くは自分の書いた字に納得できなかったのではないでしょうか。お手本からは程遠いからです。

完成したイラストについても、同じようなことに感じることがあります。自分の描いた絵にどうにも満足できないのです。描いているときは夢中でも、改めて見返すと至らない点ばかり目に留まります。そんなことが続くと、絵を描くのが嫌になってしまいます。

現代はこれまでにないほど色々な作品を手軽に見れるようになりました。昔なら博物館に行かなければ見れなかったものをネットで手軽に見ることができます。高いお金を出して画集を買わなくても、その人の投稿を見れば最新のイラストを見ることができます。自分の技量よりも目が肥えてしまうのは、今の時代はむしろ当然のことなのです。

自分の目が肥えて、技量が追いついていないとどうなりますか。そうです、習字のときと同じように自分の作品が『お手本』から程遠いのがはっきりわかってしまい、自分の作品に納得がいかなくなってしまうのです。こうなってしまうのは仕方のないことです。

情報を遮断しようと思っても、私たちとネットはあまりにも身近になっているので完全に遮断するのは不可能です。それに、上手なイラストを見ることは成長に役立つことであり、間違ってはいません。

それでは、完成した絵に満足できないとき、どうすればよいでしょうか。

これまで考えてきた方法は、この傾向と闘うのに役立ちます。絵に求めるハードルを下げましょう。自分自身について現実的な見方をします。私たちが目指すのは完璧な絵を描くことではありません。お手本通りに描くことでもありません。

私たちが目指すべきなのはベストを尽くすことです。今できるベストを尽くせばそれで良いのです。肩の力を抜きましょう。世界最高と呼ばれるピアニストでさえミスタッチをします。失敗をしない人間は存在しません。私たちがミスをするのは当たり前なのです

これまでで、絵が描けなくなる可能性のある段階について、それぞれ対策を考えてきました。それぞれの段階に応じて、できる対策があることがわかりました。もちろん、これらの対策をしてもすぐにスランプから抜けられるわけではないかもしれません。でも、対策ができることが分かると不安が減り、心の負担を減らすことができます。

この記事で考えた5つの点と対応策

スランプに対処するためにできることとして、5つの点を考えました。

  • 積極的な見方を保とう
  • 心身の健康をケアしよう
  • 理性的に行動しよう
  • 描けなくなる段階を特定しよう
  • 信頼できる人に相談しよう

どの段階で描けなくなるとしても、それぞれに対応策があることも考えました。

  • 紙を用意することもできない → ハードルを下げよう
  • 集中できない → 聴くもの・見るもの・時間帯を変えてみよう
  • 絵のアイデアが出ない → アイデアに頼らないで描こう
  • 描き始められない → よい習慣を身につけよう
  • 線がきちんと弾けない → ネガティブ思考の悪循環を断とう
  • 物や人の形が分からない → 理論を学ぼう
  • 色が決まらない → テーマを決めよう
  • 完成できない → 現実的な見方をしよう
  • 完成した絵に満足できない → 失敗を受け入れよう

スランプから得られる益|謙虚さと敬意

スランプは辛いものであり、できれば経験したくないことです。しかし、スランプがもたらすのは辛さだけではありません。スランプから得られる良いことがあります。それは、謙虚さと敬意です。

スランプを経験した人は、自分がスランプに陥るかもしれないことを自覚するようになります。それは自信過剰になるのを防いでくれます。そしてスランプに上手に対処するなら、バランスのとれた自信を得ることができます。

また他の人のスランプにも感情移入できるようになります。他の絵描きも自分と同じようにスランプを経験しているかもしれないと考えられるようになり、それにも負けずに創作を続けている姿に敬意を抱けるようになります。

スランプは決して楽しいものではありませんが、それを経験し上手に対処することによって、より成長した絵描きになることができるのです。

この記事では絵のスランプについて、じっくりと考えてきました。そしてスランプの対処法についても考えました。

スランプから抜け出すことは可能です。ですから、スランプに陥ってもあきらめないようにしましょう。落ち着いて対処し、時には信頼できる人の助けを借りて、粘り強く改善を続けましょう。そうするなら、スランプを克服するよう前身し続け、より成長した人となることができるからです。

記事のタイトル「絵のスランプについて知って欲しいこと」| 公開した日付()| 更新した日付(2018年9月8日)| 更新した回数(45回)